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紐育ライブ2012「誰かを忘れない世界で」レポート

  紐育ライブ2012「誰かを忘れない世界で」レポート 如月紫水 2012/09/17 11:00:37
  一幕その1 如月紫水 2012/09/17 11:01:23
  一幕その2 如月紫水 2012/09/17 11:01:55
  幕間 如月紫水 2012/09/17 11:02:28
  二幕その1 如月紫水 2012/09/17 11:03:33
  二幕その2 如月紫水 2012/09/17 11:04:16
Re: 紐育ライブ2012「誰かを忘れない世界で」レポート [返事を書く]
二幕その2


人形「ヤメロォォォォォォォォォォ!!!」

下手側から上がった叫び声に、全員が人形の存在に気づき、全てを察する

大河「君は…!」
サジータ「あの人形!?」
ダイアナ「あなたですね…私たちの記憶を消したのは!」
昴「僕としたことが…こんな人形ごときにしてやられるとは」
リカ「リカ怒ったぞー!悪いヤツは撃つ!!」
ジェミニ「リカ、待って!!」
リカ「へっ!?」

リカが銃を抜き、構えた瞬間にジェミニが止めたことに、驚きの顔を向ける星組達

サジータ「なんでそんな奴庇うんだよ!」
ジェミニ「庇ってるわけじゃない!でも、お願い。あの子を憎んだりしないで」
ダイアナ「ジェミニさん?」
ジェミニ「なんとなくわかったんだ。
     あの子の狙いが。ううん、違う。本当に望んでいることが…
     あの子言ってた…諦めろって。夢も希望もなくしてしまえって
     それってきっと…君が無くしたものだよね?」
人形「……ナクシテナンカナイ ハジメカラソンナモノナイ
   ユメ、キボウ……ゼンブ幻想ダヨ…」
ジェミニ「そんなことない!だって、ここにいる皆の心にはちゃんとあるもん!」
人形「シラナイ!」
ジェミニ「……キミも、思い出して。忘れてしまった夢や希望を…」
人形「ソンナモノハナイ!!」

ジェミニの言葉を必死に否定するかのように荒れる人形。
けれど、ジェミニが近づいたときに怯えるように後ずさる。でも、その先にはダイアナがいて、人形に触れた途端ダイアナは何かを悟ったのか穏やかな声で慌てて離れた人形に語りかけます。

ダイアナ「一つ……聞いても良いですか?
     どうして私たちにこんなことをしたんですか?」
人形「ココハ……ユメ…キボウ…イッパイ……嫌イ!!憎イ!!」
リカ「こいつ、何言ってるんだ?」
人形「ニンゲン…願ウ……忘レル…!捨テル!!」

まったく理解が出来ないリカに、サジータやジェミニ、新次郎も戸惑いを浮かべますが
昴がはっと気づき口を開く。

昴「なるほど、願掛け人形か!
  人が願いを叶えるために作られた、いい意味でも、悪い意味でも、人の想念が込められる。
  願いが叶わず…いや、叶っていたとしてもそれに気づかず、捨てられたのかもしれない」
人形「(その場に、膝を抱えて蹲る)捨テル……捨テル……」
サジータ「それが、こいつの正体ってわけか」

ようやく、全員合点がいった人形の正体。
全てを拒絶するように蹲った人形の傍に、新次郎が静かに近づく。

大河「さっき、ぼくが居た世界…あれは君の心の中だよね。
   暗くて、冷たい世界
   ぼくは一人ぼっちで不安で、寂しくて、怖くて…
   でも、遠くからみんなの声が聞こえてきたんだ。
   (膝をつき、人形と距離を縮めて優しく語りかける)
   君の心の中にも、みんなの声が、みんなの想いが届いたから
   ぼくはここに戻れたんだ。
   今ならわかる。あれは君だけの世界じゃない。
   自分の中にもあるんだ。
   君が教えてくれたんだよ。大事な事を」
人形「……ボクガ…?」
ジェミニ「(人形を覗きこむように身を屈めて)ボクたちは、キミを捨てたりしない。
     だから、夢や希望を持つことを諦めないで」
人形「(立ちあがり、上手に逃げる)……ボクニハデキナイ…!!」
ダイアナ「できます!私がお手伝いします!大河さんが私にそうしてくれたように」
サジータ「あたしも手伝ってやるよ!あんたが、安心して夢や希望を心の中に置いておけるまでさ」
リカ「しょーがないな〜!リカも手伝ってやるぞぉ!」
昴「そうだな…借りはきっちり返さないとな。
  …僕も手伝おう」
ジェミニ「みんな…!」

人形「……手ニイレタモノハ イツカナクナル」
ジェミニ「…失うのが、怖いの?」
エニアン「怖イ……光ヲ見タ後ノ暗闇ハ深イ!怖イ…!!!」
ジェミニ「大丈夫!大丈夫だから…!!」

怯えて、声を荒げる人形を、ぎゅうっと抱きしめるジェミニ。
その後ろには、同じ気持ちで佇む星組の姿。
暗闇から、光を信じて希望を取り戻したその姿に、人形は苦しげに顔をゆがめ
ジェミニの腕から離れ、背を向けてこの場を去ろうとする。しかし

ジェミニ「怖がらないで!夢を持つことを…そして、ハッピーになることを。
     ボクたちが、ついてるから」

それでもなお呼び止めたジェミニの声に、足を止める。
振りかえると、自分を守るように立つ星組たちが。

人形「ウゥ…ウワァァァァァァァァァン!!!」

ついに、泣き叫ぶ人形。その声に合わせてバチバチと照明が明滅し、バチン!と一際大きな音と共に暗転。
再び照明が灯ると、人形がいたはずの場所には、掌と同じくらいの小さなあの人形の姿が。
そっと拾い上げ、目をぎゅうっと瞑り胸に抱きしめるジェミニ。

一連の事件に一応のピリオドが打たれたその場に、プラム、杏里、ラチェット、そしてサニーが姿を現します。

プラム「みんな〜〜!!
    よかったぁ!さすが、星組ね!きゃふ〜〜ん!」
杏里「にゃう〜ん!安心しました〜!!」
サニー「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたよ〜〜いやぁ、でもよかったよかった。はっはっは」

調子よく笑いながら星組の前を横切り、ソファに腕を広げて座るサニーの言葉に全員が「え?」という顔を向けます。

ダイアナ「あの…一時はどうなることか、って……」
昴「さてはサニー、僕たちがどういう状況なのか把握していたな」
ジェミニ「うん。でもね、サニーさんは助けるの手伝わないって」(じぃっと恨めし気に見る)
サジータ「なんだとこのインチキスーツ!!あたしたちのピンチに高みの見物とはいい度胸だね!」

つかつかと掴みかからんばかりのサジータにさすがに悠長に座ってられなくなったサニーは慌てて立ちあがり、両手を上げて宥める。

サニー「まぁまぁまぁ、待ちたまえ。ボクは考えがあってのことだ。
    (新次郎を見て)大河くん」
大河「あ、はい!」
サニー「本当に守らなければならないもの、わかったかい?」

冒頭と同じ問いを繰り返すサニー。
けれど、今度は新次郎もしっかりと自分の胸元に手を添えながら答える。

大河「ココロ……心です!」
サニー「ザッツライト!いいかい?いくらスターの操縦が上手くなったところで
    本当の意味での人々と守るという事にはならないんだよ」
リカ「ほんとーの意味?」
ラチェット「あなたたちは訓練の結果があがってきているばっかりに
      心に『余裕』ができ、それだけで紐育を守れると『油断』をしはじめていた。
      でも、物理的な力だけでは……心を、守らないと意味が無いの」
ジェミニ「心を、守る?」

サニーの言葉に続いたラチェットの諭すような言い方に、それぞれがその意味を考える。

ダイアナ「私…皆さんと一緒に過ごす日々が当たり前のように過ぎて行くうちに
     何か、大切な事を忘れかけていたのかもしれません。
     大河さんという希望…そして、仲間と共に思い描く夢にめぐり合えたからこそ
     自分の足で立ちあがることができて、今の私がここにいることを」
昴「夢や希望は大きければ大きいほど
  それを叶えるためにはいくつもの試練と困難を乗り越えていかなければならない。
  時に、夢は壊れることもある。
  そこには妬みや恨み、他人や都市に対する怒りといった感情が生まれる」
サジータ「なるほどね。
     本当の意味で都市を脅かすのは、スターで倒せるような敵じゃなく
     そいつらが生みだしちまう負の感情…人間の弱い心ってわけだ」
リカ「うー……悪いヤツ、やっつけるだけじゃダメなのか?
   でも、リカは悪いヤツは許さない!
   とりあえず撃っとく〜!!(リカの発言にみんな笑顔を浮かべる)
   (ラチェットを覗きこむように)ダメか〜?」
ラチェット「いいえ、リカらしいわ」
大河「人の弱さ……技術だけじゃなく、大事なのは心を鍛える事なんですね」

星組の導きだした答えに、満足したように頷いたサニーさんは、丸椅子の上に立ち、さらに質問を投げかけます。

サニー「さて、また成長した君たちにここでクエスチョン!
    リトルリップシアターは、何のためにあるものか」

この質問に、ラチェットやプラム、杏里はまたサニーサイドは…というような表情で視線を交わしますが
星組の面々は真面目に考えてそれぞれの顔を見合せます。

ラチェット「ただ、派手なショウを見せるための場所?
      自分たちの歌や踊りを見せて、素晴らしい!と喝采を浴びるためだけの場所なのかしら?」

ラチェットの言葉に、ハッキリと違うと認識し、改めてサニーの問いに答えます。

大河「…いいえ。みんなと、お客様と!夢を分かち合い、希望を見つける場所……
   疲れた心を癒して、明日への力に変える場所です!」

その答えに、頷く星組。
サニー、ラチェットも満足げです。

プラム「♪一人じゃない 絶望するは」
杏里「♪ここは劇場 みんなをつつむ」
サニー「♪今夜はあなたが主役だ 夢見る子どもの瞳で 自由に翼広げよう〜!」

楽しげに歌いだした二人に、最後はサニーさんがセンターで高らかに歌い上げて笑いあう一同

ジェミニ「そっか!ボクが師匠から受け継いだ仕事は、みんなをハッピーにすること。
     それが、心を守るってことなんだ!」
大河「今までのリトルリップシアターも、そういう場所だったのに」
サニー「思い出したかい?」
全員「はい!」
サニー「今、紐育は平和だ。
    でも、またいつか紐育中の人々が絶望に打ちひしがれるようなときが来るかもしれない。
    でもそのときに、君たちは戦い、満足し、油断してはいけない。
    ステージに立って、夢と希望に溢れるショウでみんなをハッピーにしてあげる!
    それが、君たちの重要な使命なんだよ!」
全員「はい!!」

平和なときほど、気を引き締めて。
改めてそれを心に刻んだ星組達。
ちなみに、今回はストーリーの関係上、ほとんど噛まなかったのですが初日に
「重要な使命なんだよ!」をかんで「じょうめい!」と言ってしまい、慌てて言いなおす部分がありました。さすが!(笑)

そして、その改めて想いを確かめ合った結果、みんなの気持ちは盛り上がり

ジェミニ「うわぁぁ…!どうしよう、ボク今、ものすごく舞台に立ちたい!!
サジータ「あたしもだよ!」
リカ「リカはいつだって、歌って踊りたいぞ〜!くるくるくる〜〜!」
ダイアナ「(皆の前に出て、サニーの方を向き)ああああ、あの!
     無理なお願いかもしれませんけど……特別公演を、打たせていただけないでしょうか?」
昴「昴は言った……最高の舞台を届けたい、と」

全員の想いと視線を一身に受けたサニーサイドは、満足げに頷き

プラム「サニーサイド!」
サニー「よし、やろう!」

即、快諾!わっと湧く一同に、杏里が「サニーサイド様、素敵!」とさりげなくよいしょしているのが印象的でした。

ラチェット「それで、何をやるの?」

ラチェットの確認に、またどうしようか?と顔を見合わせる星組。
これにはいち早く新次郎が閃きました。

大河「あ!あれはどうですか!次の公演で歌う予定だった、あの新曲!
   (それは名案!と湧く一同)
   思い切って、先出ししちゃいましょうよ!」

新次郎の提案に、すぐに全員が賛同し、サニーさんも許可を出すように頷いたので「やったぁ!」と喜び合う星組たち。
そうと決まったら、さっそく準備!!と下手に駆けだす。
その最後尾を行くジェミニにプラムが声をかけて、手を差し出します。
その意図に気づいたジェミニは「よろしくお願いしま〜す」と優しく人形をプラムの手に渡し、いってきま〜す!と元気よく皆の後を追いました。
手に取ったことで、改めて人形を見つめ、軽くつつくプラム。

プラム「ね〜え、結局この子…何だったのかしらね?」
杏里「(近づき、人形を覗きこみながら)あ、ここに何か書いてある。
   A・N・Y・O・N・E?…エニワン…エニアン、かな?
   名前でしょうか?」
ラチェット「(人形をプラムから受け取り)Anyone……誰もが。
      なるほどね」
サニー「そう、その誰もが胸に抱いた思いがその人形に閉じ込め、肥大化した。
    この子にも、いろいろな事があったんだろうね」

サニーの声色が今回、一番の落ち着きをみせています。
星組たちと関わることで、人形に歪んだ形で残ってしまった想いが解放され、こうして元の形に戻る事ができた人形をプラムが再び手にして改めて眺めます。

プラム「ふふ、よく見たらこの子、なかなかかわいい顔してるじゃない。エニアンちゃん♪」
杏里「うん、それに…この子のおかげで、大河さん、また一回り成長した気がする。
   さっき、すごく良い顔してた」
プラム「(杏里の肩を小突き)惚れ直しちゃった?
    (慌てる杏里が否定する前に、エニアンに視線を戻し)
    でも、本当にそうかもね。スターファイブのみんなも」
ラチェット「(頷き)私も、改めて考えることができたわ。
      試練を共に乗り越えていける仲間がいる幸せ。
      そして、戦闘でもステージでも技を磨くことは当たり前で大事な事だけど
      それよりも心に何を持って日々を生きていくか……
      私も、もっと心を強くもって!」

数歩前に進み、中央で決意を新たにするラチェット。
けれど、その後ろ姿にサニーさんが司令の顔を潜ませいつもの調子で声をかけます。

サニー「…いや、君はもう十分強いと思うよ。
    それより!君にはもっとスキを持ってほしいんだ!
    (気配に気づき、いつもの音楽を止めようとするラチェットの手を素早くつかみ、跪く)
    そしてボクにそのスキを与えてくれ!それがボクの活力となるんだ!!」

おお、珍しくサニーさんが押し続けられるのか!?と思ったのもつかの間、スタスタと上手から現れた双葉さんが鮮やかに音楽を止めて強制終了(笑)

ラチェット「ありがとう!」

すごく可愛く、そして心底からの言葉でした(笑)
そして、ラッシー先生も続けて姿を現すと話題は完全に二人の話に。

プラム「ミセス・タイガー、ラッシー先生!おかえりなさい!」
杏里「ハリウッドはどうでしたか?」
双葉「いや〜〜、楽しかったぞ〜
   土産は無いが、土産話ならたっぷりあるぞ〜!
   それより、面白いチラシを見つけたんだ。ほら、これ!
   (ポシェットからチラシを取り出し、プラムや杏里に渡す)
   天才催眠術師ってやつ!どうだろう、この人…
   リトルリップシアターのステージに呼んでみてはどうだ?
   あ、いやただ呼ぶだけじゃつまらないから
   内緒で新くんやジェミニたちに催眠をかけちゃうとか〜〜
   君たちそういうの好きだったろう?サプラーーイズ!」
サニー「いやいや、なんというか、その手の話はいま終わったというか……」

盛り上がる双葉さんでしたが、サニーさんのつぶやきを聞き逃さずぐるりと振り返って足早にサニーさんに近づきます

双葉「なんだ?私がいないうちに、何か楽しいイベントでもあったのか?」
サニー「いいえ、そういうわけでは…」
プラム「(チラシをよくよく見て)あら?ちょっと見せて?これ、紐育での開催期間、昨日で終わってるわよ。
    次の開催場所は……巴里ですって」
双葉「えっ?え?(素早く近づき、チラシをじっと見る)はぁ…つまらん〜
   私も一度催眠術とやらにかかってみたかったのにぃ〜〜」

その開催場所……深読みしたいんですが、していいのでしょうか!?
が、冗談めかして悔しがっている双葉さんにサニーさんがつい本音を…

サニー「いやぁ〜ミセス・タイガー?あなたのようなある意味ぶっちゃけてる方が
    ……ああ、いやいや!!このご立派な肉体…
    いやいやいや!!ご立派な精神をお持ちの方が、催眠術にかかるわけございません!」

サニーさん、フォローにも何にもなっていません!むしろ墓穴を掘り続けています(笑)

双葉「(ふっと笑い)まぁな、私は『武士道』を極めているからな。
   しかし、今…二、三言聞き捨てならない事を言われたような…
   ぶっちゃけた?立派な肉体?
   どういうことだサニーサイド!どういうことだ!?」

ほら、眉をぴくぴくさせながら聞いていた双葉さんに追いかけられてしまいました(笑)
そしてプラムと杏里の周りをグルグル回り、下手へと向う二人とも逃げ方が、完全にお笑いの萩欽ちゃん走りだったのですが(笑)
あわただしく走って行った二人のやりとりをただ黙って聞いていた四人ですが、ラチェットが大きな声で残ったメンバーの気持ちを切り替えさせます。

ラチェット「さぁ、私たちも特別公演の準備にかかりましょうか!」
プラム「きゃふ〜ん!まかせといて!」
ラッシー「特別公演?なんですか、それは?」
杏里「今夜、急きょ公演をすることになったんですよ」
プラム「そうよ、みんな稽古場で新曲の振付確認してるわよ!」
ラッシー「新曲って、あれまだ振付が完成してないんですよ。大変!急いで仕上げなくっちゃ〜〜!」

慌てて、ラッシー先生も欽ちゃん走りで下手へ(笑)

ラチェット「さぁ、二人とも!時間が無いけど、よろしくね!」(一足先に上手へ)
プラム「きゃふ〜ん!忙しくなるわよぉ〜!
    あ、フルーツ足りなくなるかもしれないわね!」
杏里「にゃうん!買いに行かなきゃ!」
プラム「そうね!(出て行こうとした足をふっと止めて丸椅子に向う)
    じゃあ、エニアンちゃんには、お留守番頼んじゃおうかな〜
    (楽屋の椅子に座らせて笑顔で手を振るプラム)いってきま〜す」
杏里「後でね、エニアンちゃん」

杏里も笑顔で手を振り、足早に上手へと去る二人。

プラム「あ、杏里ー楽屋の電気消してね〜!」
杏里「は〜〜い!」

声だけでやりとりし、杏里の返事と共に舞台の照明が落ちて、人形―――エニアンにだけスポットが当たる

エニアン「アリガトウ……ボクハ ミンナノ傍ニ居ルヨ
     心ノ中二、ズット……」

今までと違う落ちついた声が響きオルゴールの音が流れる中、幕が下りる。

個人的解釈ですが、私はこれでエニアンは浄化、あるいは成仏したという印象を受けました。
たぶん、もうシアターからは姿を消したのではないかと。仮に人形の形だけは残っていても、その魂はまっさらなものになったのではないかと思いました。

さて、客席が明るくなるのですが、休憩と言うわけではなく下手客席通路から武田を先頭にボスと西村がやってきます。

武田「こっちですよ〜!こっち!ここが、リトルリップシアターです」

三人で最前列の前に進み、ボスと西村は客席を見渡してつい、一言

西村「すっげ〜〜…でも紐育だというのに、お客さんは日本人ばっかりだな」
武田「日系アメリカ人ですよ!」

さすがアメリカ、そういう逃げ方ですね(笑)

ボス「おい武田、本当にいいのか?」
武田「もちろんです!スターファイブさんが緊急特別公演をやるってんで
   こりゃあもうボスたちにぜひ見てもらいてぇと思いましてね。
   オーナーに、許可もらったんっすよ!」
西村「武田〜!」
武田「アニキ〜!」(ひし、とハグをする二人)
ボス「歌って踊れるオーナー、サニーサイドさんか。後でお礼言っとかないとな」
西村「で、武田。俺達の席はどこだ?」
武田「バカタレ!なに言っちゃってくれてるんですか。
   文無しなんすから、照明さんの所から見せてもらうんですよ。
   (驚く西村を無視して)ほらほら、行きますよ〜迷子にならないようについてきてくださいよ〜!」

一人でさっさと先に進み、ボスと西村を残して通路を通り、上手の客席通路へ出ていってしまう武田。

西村「っておい!武田!!ったく…つめが甘いっていうかなんて言うか」
ボス「まぁ、いいってことよ。舞台の裏方さんの仕事も見られるってぇのは、貴重な体験だぞ。
   それによ、あいつなりの気の使い方なんじゃあねぇのか」
西村「ボス……」

さすがボス、懐が深いです。
ところでボス……手にしている扇子が花組ご贔屓扇子から、スターファイブご贔屓扇子に変わっていますよ!
やっぱりジェミニに撃ち抜かれたところで、本格的な贔屓に…(笑)
と、暖かい目をしていた二人の事など露知らず。武田が上手通路からひょっこり戻ってきて急かします。

武田「二人とも、何やってるんすか!はじまっちまいますよ!」
ボス「はいはい」
武田「興奮して、照明さんの邪魔しないでくださいよ!」
西村「ったく、そりゃお前だろ!」

今度こそ、足早に武田について上手の客席通路から出て行く西村とボス。
最後、ボスが「照明さん日本人らしいぞ」と呟きながら去っていきました(笑)
1日夜公演ではこれに「良い仕事するらしいぞ〜」と付け加えていました。

さて、客席の照明が落ち幕が閉まったまま新次郎のアナウンスが入ります。

大河「皆さん、リトルリップシアターへようこそ!
   今夜は急な公演にも関わらず、たくさんの方々にお越し頂き、まことにありがとうございます
   どうか、この舞台が皆さんの夢、希望、そして明日を生きる力となることを願っています。
   それでは、スターファイブによる緊急特別公演の開演です!
   イッツ・ショウタイム!!」
如月紫水 <rxqkycrwxn> 2012/09/17 11:04:16 [ノートメニュー]
  二幕その3 如月紫水 2012/09/17 11:04:55
  千穐楽ダイジェスト 如月紫水 2012/09/17 11:05:32
   └終わりに 如月紫水 2012/09/17 11:08:00
    └読み終わりました(+10/14_00:15) 夢織時代 2012/09/19 00:26:49
     └ゆっくりお読みください(10/16追記) 如月紫水 2012/09/25 22:32:45

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