対降魔部隊SS外伝「全ては海へ」 夢織時代 2016/09/27 00:01:28 ├本編一 夢織時代 2016/09/27 00:02:44 ├本編二 夢織時代 2016/09/27 00:03:18 └序章 夢織時代 2016/09/27 00:03:47
Re: 対降魔部隊SS外伝「全ては海へ」 [返事を書く] |
序章 既に、海ではなく。 ここは、大和ではなく。 空から見下ろせば、赤茶色の四角い石を連ねた見覚えのない街だった。 隣には、我と姿を同じくする者たち。 爪を持ち、牙を持ち、翼を持つ者たち。 叫びながら、爪を振るう。 叫びながら、酸を吐く。 叫びながら、嵐を巻く。 なにゆえに、助けてくれなかった。 なにゆえに、我らを水底へ沈めた。 なにゆえに、 なにゆえに、 怒りも苦しみも悲しみも言の葉にならず、陸に有りながら海に棲まう魚のような口から、人ならざる叫びとなるのみ。 その恨みを受けて、身体に沿った奇っ怪な衣を纏った人々が逃げ惑う。 牛の無い牛車を砕くと、かつて大和で見た水の気が噴き上がり、炎が舞う。 刀を持って立ち向かう者たちもいる。 手に収まる筒のごときものから矢を打ち出す者もいる。 だが、そんなもの、我らの恨みの前に何の役に立つ。 我らと同じように、我らの仲間になれと、切り裂く、食らう。 その中に、 「破邪剣征、桜花放神……!」 桜色の風が駆け抜け、我らの同胞の一群があえなく倒される。 現れたのは、抜身の刀を手にした四人の士。 彼らの振るう技の前に、我らは次々と斬り伏せられていく。 男が三人、うち老人が一人。 今しがた剣を振り抜いた一人の気配は覚えがある。 真宮寺家の当主が、あのような破邪の力を持っていなかったか。 そしてもう一人は、まだ歳の若い少女。 「……!」 あ、や、と叫ぼうとした声は言葉にならず、驚愕で我は羽ばたきを忘れた。 年の頃も近いだけではなく、あまりにも、あまりにも似ていた。 呆然とした我は、少女以外の士がいることを忘れていた。 「彩光紅炎、朱凰滅焼!」 背後から振るわれた恐るべき一撃を喰らい、身体が胸から下を焼き尽くされた。 無我夢中で逃げる。 何故逃げる。 死してよいと思ったのではなかったか。 いや、綾がいるなら、綾がいるのなら、我は生き延びねばならぬ。 なんとしても、なんとしてでも。 逃げた先に、両親と少年と少女の四人組がいた。 喰らおう。 食らって我が身とし、我は生き延びよう。 首と右腕だけの我でも、人を倒すに苦労はしない。 少女をかばって両親が倒れる。 その両親の遺志を受け継ぐように、少年は少女を背にして守ろうとする。 その身体、我が生き延びるために、貰う。 「化物め!妹は、ミキだけは絶対に殺させないぞ!!」 少年に食らいついた瞬間、少年の意思が閃いて我を貫いた。 時に、太正六年。 少年の名は明智小次郎。 これより十年後、再びあの刀と出会うときが来る。 同人版「ミステリアス巴里」へ続く |
夢織時代 <zvoejguhin> 2016/09/27 00:03:47 [ノートメニュー] |
├あの頃を思い出しつつ まいどぉ 2016/09/27 02:35:25 │└くるくると回る 夢織時代 2016/09/28 00:58:05 └逢坂の関からアッチが Rudolf 2016/10/17 21:46:45 └私も実は 夢織時代 2016/10/21 00:48:42