[新しく発言をつくる] [EXIT] [サクラ大戦BBS]
【SS】サクラ大戦大活動写真−太正浪漫よ、永遠なれ−

  【SS】サクラ大戦大活動写真−太正浪漫よ、永遠なれ− Rudolf@連投失礼 2016/09/27 19:46:29
  その1. Rudolf 2016/09/27 19:47:09
  その2. Rudolf 2016/09/27 19:48:02
  その3. Rudolf 2016/09/27 19:49:10
  その4. Rudolf 2016/09/27 19:49:32
  その5. Rudolf 2016/09/27 19:50:33
Re: 【SS】サクラ大戦大活動写真−太正浪漫よ、永遠なれ− [返事を書く]
その5.

 銀座本部、作戦指令室は翔鯨丸の重々しさをそのまま複写したかのような雰囲気に包まれていた。大神、巴里花組を含めて14人の実戦部隊とかえで、三人娘が見た目以上に質量を感じる空気に対し不利な戦いを強いられていた。
「かすみ、これまでの調査結果を報告して。」
「はい。」
 かえでの指示に従い、かすみがコンソールを操作して調査結果を出力すると、ディスプレイに大和の全体図が浮かび上がった。
「月組、夢組の調査で大和の大地には大変な妖力が充満していることが分かりました。これがその流れです。」
 大和の透過図に更に幾本もの矢印が重なり合う。半分ほどは帝都各所から大和に伸びていたがもう半分の出所は違った。
「これは、ミカサ?」
「はい。ミカサの霊子核機関の稼働を確認しています。そこからの霊力、いえ妖力とで大和を浮上させるだけのエネルギーを得たものと考えられます。」
「せやな、恐らくミカサの機関を再起動させる為に降魔をうろつかせ、人の恐怖を増大させることで妖力を大和に送りこんどったんやろな。せやったらこのところ降魔の出現がやけに多かったんにも合点が行くっちゅうわけや。」
「加えて度重なる出撃でボク達に疲労を蓄積させて戦力を削ることもできた、敵ながらにして一挙両得の巧い作戦だ。」
 紅蘭やレニの洞察からは敵の第一ラウンド勝利を裏付けるものだけで、ここからの逆転策を導出することはできなかった。
「ミカサから妖力が出てるのはどうしてですの?」
「推測ですが、ミカサ内にも多数の降魔が確認されています。この降魔を媒介として霊力を妖力へと変換しているものかと。」
「そんなことできるんですか?」
「妖力と霊力の差は紙一重よ。ましてやミカサは一度長安に乗っ取られたこともあるから分からない話ではないわ。」
「身に詰まらされる話だな。」
 かえでの発言にグリシーヌはぽつりと嘆いた。巴里花組の5人は、元を辿れば以前巴里を襲った怪人達と同じパリシィの血を引く者であり、そのために霊力が強いのだから。
「妖力の坩堝に出撃するわけか。親方、光武二式の蒸気ユニットのバージョンアップはどうですか?」
 格納庫で光武二式の改修作業にあたっている中嶋親方がモニタに現れる。
「もうちょいでさあ。ですが間に合わせなもんで蒸気量も稼働時間も限られるのはどうしようもありやせん。」
「せめて降魔と一対一で互角以上には戦えるだけにはしたいんです、お願いします。」
「分かりやした、できる限りのことはさせていただきやす。」
 満額回答を出せない心苦しさを残しながら親方は作業に戻って行った。
「椿ちゃん、やっぱりこれは全て氏綱の仕業なのかい?」
「はい。大神さんたちが大帝都スタヂアムで戦った降魔が倒される間際、聖魔城に向かって強い妖力の移動が確認されています。恐らくそれが…」
「北条氏綱の本体、という事ね。その本体ですが今も聖魔城で妖力を吸収し続けています。」
 言葉に詰まる椿の後を受け、由里の現状報告が入る。
「次は何を起こすつもりなのデスカー。中尉サン、一刻の猶予もありマセン。」
「分かってる、分かってるよ織姫くん。だが真正面からぶつかっても被害が大きくなるだけだ。」
「隊長、では夜襲はいかがでしょう?」
 一計を思いついたマリアの提案が入る。
「夜襲、降魔相手に夜に戦うのかい?」
 基は何であれ、降魔は通常定義できる生命体ではない、寝込みを襲う奇襲性が本分の夜討ちに如何程の効果があるのか大神には見当が付かない。
「今度の降魔出没は昼間に限られています。もしかしたら降魔を総べている氏綱のライフサイクルが影響を与えているのかもしれません。」
「確かに夜間出撃はなかった、可能性はないわけではない、か。」
 大神の胃に不快感が走った。不確定要素が多い中で決断の迫られることのなんと多い事か、先の戦いでも米田はこのような気苦労を背負っていたのだろうか。先人の労苦を思えば胃痛の1つや2つ何ということはない。今は自分が総司令だ、全ての決定責任は彼にある。
「マリアの言うとおりにしよう、夜襲を仕掛ける。それが最善策だと俺も思う。」
「でも隊長、夜襲を仕掛けるにしてもよ、あの狭っ苦しい聖魔城でこの人数がまとめて動くのには無理があり過ぎるぜ。」
 暴れるにも味方間の距離がある。隣の光武を巻き添えにしてられないカンナが注意を喚起してきた。
「それは俺も分かってる。今ここには14機の光武がある。最小限のグループで潜入するので2機ずつ7隊に分けよう。」
「最小限の集団での複数同時多方展開か、理には叶っているな。よかろう、隊長の作戦案に私も賛同するぞ。」
 方針の定まったことに賛辞を示すかのようにグリシーヌが意気を上げた。隊員たちの目に真剣さと希望が映し出される。しかしアイリスの次の一言が、隊員全員の目の色を全面的に塗り替えることとなる。
「はいはーい、じゃあアイリスはお兄ちゃんといっしょに行くー。」
「お、おっと待った。やっぱ一番腕っぷしの立つアタイが隊長を守らねえとな、隊長!アタイと組んでくれよ。」
「はっ、さっきのデカブツに手も足も出なかったヤツが粋がってんじゃねえよ。」
「んだとぉ。」
「その点アタシの力は見ての通りだし、こんな甘ちゃんの隊長の傍にいてやれるのはアタシくらいのもんだよ。」
 ロベリアがそう言って大神の頬に手を這わせたことで、俄然花組達の熱が上がった。当の賞品がいくら水をかけようと一度燃え上がった炎を消火せしむるにはまるで力不足であった。
「大神さん、あたしと、」
「さっくらさん!貴女はお黙りなさい。中尉に相応しいのはこのわたくしだけですわ。」
「えー、大神さんは私と一緒にプリンを食べるってあの時ベッドの中で約束してくれたんですよ。」
「ホンマかいな、エリカはん!?」
「だからエリカが出しゃばると話がややこしくなるから黙ってて。イチローはボクが連れていくから。」
「あ、あの、コクリコさんもしれっと自己主張が…」
 女三人寄れば姦しいとは言うが、今この作戦指令室では13人もの乙女が参戦している、もはや姦しい程度の単語で片付けられる状態ではない。こんな時大神はまるで頼りにならない、総司令となってもその優柔不断ぶりには些少の進歩も見られていない。隊員達の姦しすぎる様と大神の頼れなさすぎる様との狭間に置かれ、眉間の皺と額の怒筋を引き攣らせていたかえでがいよいよ堪忍袋の緒を引きちぎり、平手をテーブルに思いっきり叩き落とし、主張しあう娘たちの注意を自分に向けさせた。
「いい加減にしなさい、戦いの前に何処に向きになってるの!貴女達はこれから命を懸けて敵の本拠地に乗り込む身なのよ。」
 かえでの叱責に13人はしょげ返った。およそ市民を守る部隊に関わる者として有り得ない喧噪を皆一様に恥じていた。
「他の組み合わせは大神司令に一任しますが、大神司令と組む隊員は私が決めます、いいわね?大神くんも?」
 異論はなかった、自らを恥じた気持ちと怒らせたかえでへの恐怖が、全員の二の句を完全に封じたのだ。
「ではみんな、覚悟はいいわね。大神くんとのペアは…あみだクジで決めます。」
 花組達は急激に自らの足腰の弱さを見せつけてひっくり返った。かえでの意外過ぎる適当な発表に、さっきまで己を恥じていた自分を恥じ入り直していた。
 かえでとしても別に適当とかいい加減という言葉に恋をしての事ではない。大神と組むのなら彼女達の誰もが最も霊力が上がるのはこれまでの経験で明らかな為、隊員の選択は誰になろうと問題がないという認識あればこそのクジ発言である。
 渋々ながらも賛同した隊員たちは各々に紙に記名し、あみだをなぞるかえでの指が自分のもとにやってくるよう切に願い続けた。そして願いが通じたたった一人はさくらに決した。
「大神さん、ほ、本当にあたしでいいんでしょうか。」
「あら、お嫌ならいつでもわたくしが代わって差し上げてよ。」
 負けたせいで苦虫を軽く噛んでいるような表情のすみれが皮肉を投げかける。
「平等に決めたんだから文句は駄目よ。では大神くん、残る隊員の組分けをお願いね。」
「は、はい。」
 一連の流れでは、大神とかえでの役職名は真逆ではないのかとの錯覚を受ける。かえでの持つ男女の機微の経験は不明だが、この場合少なくとも大神よりは高い、この差異が只今の力関係に対し正確に比例しているのであろう。
「決行は今夜午前0時、2時間前には指令室に集合。そこで組み分けを決定する。それまでは半舷休息せよ、解散。」
「了解。」
 大神の解散命令が飛び、隊員達はめいめいに作戦指令室を後にして行った。
「今度の相手は氏綱か…天海や長安、信長とも比較にならないかもしれない。気を付けねば。」
 天海は急速に西洋化する帝都を嫌い、幕藩体制の復活を目論んだ。長安は天海を恨み天海の作った帝都を破壊せんとした。信長は紐育に現れたがその妖力たるや六天魔王の名は伊達ではなかったという。いずれも魔の力を利用した側だが氏綱は魔の力、即ち降魔を作った側になる。故に天海達と一概に重ねあう事が出来ない、何をしでかすか分からないのだ。大神は兜の緒を締め直す気合いを持った。それにしても自分の判断がここまで決して正しい方向に触れていない実感がある。たまたま周囲の助けで事自体はうまく運んだだけの事で、ここまで来て自身の総司令としての力量に疑問符が付き纏っていた。

 聖魔城では、不気味な物体を前にして氏綱の霊が浮いていた。
「我が…我が、この力を用いて天下を…邪魔立てする者は何人たりと…」
氏綱が物体に向かって位置を進めると、物体はまるで食虫植物が獲物を食むかのように二つに割れて氏綱をその中に取り込んだ。直後、氏綱の笑いが木霊する。
「ふっ、ふはははは。わっはははははは、ふわははははははははははははは!」

 氏綱の大笑いなど届かない距離にある帝劇だが、強弱はあれど隊員は皆一様に何らかの嫌な空気を感じ取っている様であった。大神も異様な感覚を感じ、テラスから銀座の夜景を眺めつつ体内では確固たる決意と言い知れぬ不安ががっぷり四つに組んで鬩ぎ合っていた。
「この街がまた脅威に脅かされている…俺達が帝都を、ここに住む人達を守らねば誰が守るというんだ。くそっ、氏綱。」
 大きな危機を前に帝都を逃げ出した人もいれば、居残る人もいる。居残った人の生活の息吹で銀座の夜景はいつもと変わらぬ煌々さを保っていた。
 行き場をなくした憤りが大神の拳を壁に叩き付けさせる。総司令となりいよいよ舞い込んだ大きな脅威を前にして、昂揚感以上に感じる責任感が大神を迷わせる。
「大神さん…」
 不安げな顔を覗かせつつ、物陰からさくらが姿を現した。
「さくらくん、確か半舷休息で休憩時間だったはずじゃ?」
「あたしも、大神さんと一緒です。不安で不安で仕方なくて。」
 心情を見抜かれていたのに大神は無意識に心拍数の変更を行った。
「まいったな、気付いていたのかい?」
「はい、あたしだけじゃなく花組のみんなも、きっと。」
「そ、そうなのかい?」
「当たり前です、みんな何年一緒にいると思ってるんですか。大神さんが、いつも優しい大神さんがずっと厳しい顔をしてるのは見てて辛いんです。」
 そういってさくらは悲しげな表情を見せる。厳しい顔を見るのが辛い事を知らせるのに悲しい顔を見せつけるのはアンフェアに取られかねないが、彼女への愛情と信頼の両者が一定量以上有する大神にはそこは問題にもならなかった。
「ははっ、こりゃ参ったな。」
「笑い事じゃありません!」
 途端にさくらの顔に真剣さのエッセンスが滴り落ちた。
「あたしがどれだけ大神さんのことを心配してると思ってるんですか!いや、あたしだけじゃありません。花組のみんなだってそうですよ。」
「ごめん、そういうつもりじゃ。」
「じゃあ、どういうつもりなんですか?どうしてあたし達には何も言ってくれないんですか?」
「総司令として、俺は前にも増して責任ある立場だし隊員のみんなを気遣わなくちゃならないのに、気ばかり焦ってね。」
「総司令、ですか。総司令だから…でも総司令って何なんでしょう。」
「え?」
「カンナさんもいつも言ってるじゃないですか、帝国華撃団は家族なんだーって。もっとあたし達に頼ってくれていいんですよ。」
「俺は…この間から判断を誤ってばかりで、その度に君たちを危険な目に遭わせてきた。今回も、夜襲を考えないわけじゃなかったけど、心のどこかでマリアの意見に乗ったほうが自分の判断より正しいんじゃないかって迷いながら決めた感覚なんだ。こんな体たらくじゃあ総司令失格だな。」
「いいんじゃないですか、それならそれで。」
「えっ?」
「大神さんは大神さん。隊長でも、総司令でも、あたし達の知ってる大神さんに変わりないですよ。間違いは誰にでもあります、あたしだって配属された時はもう酷い有り様でしたし。」
「ははっ、そうだったね。」
「もうっ、そこで笑わないでください。」
「ご、ごめん。つい。」
「もう、大神さんったら…でも、だからそんなに過ぎたことを引っ張らないでください。米田さんが聞いたら怒りますよ、お前ぇに総司令は10年早かったなって。」
「ははっ、全くだ。」
 時折さくらの説得には舌を巻くところがある、確実な論拠があるわけでもないのに彼女の素直さ、誠実さが対象の心を打つためなのだろう。幾度か実体験者の栄誉に与っている大神にはそう考察できた。
「大丈夫ですよ、大神さん。巴里花組の皆さんもいますから、大神さんも入れて14人が揃えば怖いものなんかありませんよ。」
「ははっ、そうだね。でも雷様は怖いんじゃないかな。」
「もうっ、からかわないで下さい。」
 ふいにさくらが険しい顔に戻る、大神はこうなると退却戦の一手のみである。
「ご、ごめんよさくらくん。そんなつもりじゃあ。」
「もう、知りません…なんて、驚きました?よかった、いつもの大神さんらしくなりましたね。」
「あっ。」
 この段階で大神はさくらにまんまと一杯食わされた事を理解した。そうなると、途端に笑いがこみ上げ、また大神の笑みを見たさくらにもまた笑みがこぼれてくる。
「ひどいなあ、さくらさんったら。あたし達は数に入れてくれないんだあ。」
 柱の陰に、二人の成り行きを見守る三つの頭があった。
「しいっ、椿。今茶化すのはそこじゃないでしょ。」
「二人とも黙りなさい、これからいい所でしょ。」
「はぁ〜い。」
 かすみに窘められた年下二人が生返事する。
「もう、大神さんったら本当に奥手なんだから。」
「あのう、かすみさん。それは今に始まったことでもないと思うんですよ。」
「子供は黙ってて。せっかくここまで条件が揃ってるんですもの。キッスの一つや二つしてくれないと見守ってあげてる甲斐がないってもんよ。」
「由里さんひどぉい、あたし子供じゃないですよ。」
「だから二人とも黙って。」
「は、はい。」
 さっきの窘めよりも明らかに怒気のエッセンスが濃くなったかすみの言に、今度は本気の返事を返す二人であった。
「ありがとう、さくらくん。胸のつかえがとれたようだ。」
「そうですか、ふふっ。お役に立てて嬉しいです。」
「もうすぐ交代の時間だ、少しでも休んでおいてくれ。」
「はい、大神さんも気を張らずに。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさい、大神さん。」
 さくらは自室の方に歩みを進めていった。つくづくよい隊員、よい仲間に恵まれたものだと大神は自分の境遇を幸いに思う。
 幸いに思わなかったのは三人娘達であった。
「な、なにこれ。これで終わりなの。」
 二階どころか三階に上っていた彼女たちの気分は、想像以上に堅物な大神に梯子を外され、完全に害された。この憤りは当然のように大神に降り懸かった。
「もう、大神さん。そうじゃないでしょ。どうしてそこまでバカなんですか。」
「いいっ、椿ちゃん?バ、バカってどうして。
「本っ当ですよ。この唐変木、朴念仁、意気地なしの甲斐性なし。」
「ゆ、由里くんまでいったい何を。」
「大神さん…見損ないました。」
 大神をさんざ嘲って三人娘は立ち去っていった。嘲るだけでもまだ消化不良だったのだろう、去り行く彼女たちの顔は揃ってお多福風邪にかかったかのように膨れていた。
「俺は、いったい何をしたんだ?」
 むしろ何もしなかったことに対する怒りであることを気づくには大神はまだその域まで達していなかった。

 午後10時、花組全員が指令室に集合した。不安の色を滲ませる者、恐怖に耐え忍んでいる者、決意を整えた顔の者、十人十色の面々を前に大神がギリギリまで熟考した組み分けを発表する。
「ではペアを発表する。すみれくんとカンナ、グリシーヌと織姫くん。エリカくんにコクリコ、花火くんはレニと。紅蘭がアイリスと、マリアはロベリアとだ。反問は許さない。」
 発表と同時に種々のどよめき、挨拶が発生して大凡受け入れられていると大神は解釈した。特に一組は、いつものように一触即発の雰囲気ではあったが、先んじて反問を許可されなかったので嫌々矛を収めているといったところである。
 更に大神の檄が続く。
「みんな、俺達はいよいよこれから氏綱の待ち受ける聖魔城に攻撃を掛ける。」
 聖魔城、と聞いて表情を濁らせた隊員は少なくとも5人いた、彼女達は一度そこで命を落としているのだから無理もない。
「俺は必ず氏綱を倒す、そして誰一人死なせないと約束する。だからみんなも俺と、絶対に死なないと約束してくれ。みんな揃って生きて帰ろう、次の公演は、また帝都、巴里のみんなの合同レビュウにする、そこで自分の守った人たちの笑顔を目に焼き付けるんだ。俺を信じてついて来てくれ。」
 一瞬の静寂を乗り越えた後、カンナが開口一番、
「隊長を信じろだってぇ?アタイたちゃずっと隊長を信じてきたぜ、今更何言ってんだよ。」
「その通りだ、わたくし達が隊長を信じる心はもはや何にも揺るがぬぞ。」
 カンナに続き、グリシーヌの発言に13人が首肯する。大神何をか言わんや、華撃団の心は常に1つである。
「そうか、そうだったな。やっぱり司令には10年早いのかな。」
「何ですかそれは、隊長?」
「何でもないよ、ちょっと米田さんに言われそうな言葉を思っただけさ。」
 隊員達の顔に笑顔が戻った、いかな不安も大神といれば打ち払えたのだ。
「ほな、さくっと行ってさくっと帰りまひょか。ほんでとっととレビュウの稽古や。」
「ああ、レビュウを絶対に成功させるぞ!」
「おーっ!!」
 気合一番、全員が光武に搭乗した。この後は風組が総力を挙げて大和の四方八方に光武を二機ずつ輸送し、七方向より聖魔城を目指す手筈となっている。

 深夜0時前、草木も眠る丑三つ時にはまだ早いが草木の一本もない大和の大地にこの表現は似つかわしくなかった。既に各機は所定位置より大和に一歩を踏み入れ、作戦開始時刻を待つのみである。夜陰の中、大神機からは暗視装置からさくら機を識別できていた。
「静かですね。」
 無線封鎖も行っているので通信も隣接機とのみ会話できる超近距離モードで動いている、それがさくらの声を届けてきた。
「ああ、命の欠片も感じられないな、さすが大和だ。」
 昼間遠目で見た時も生命活動の微塵も感じられなかったが、いざ地の上に立ってみてもやはり何もない。昼夜を問わず虚無が、いや魔だけが支配する空間。それが大和であった。
「帝都を…こんな姿にはしたくないです。」
「俺もだ。さくらくんも好きな銀座の夜景を消したくはないな。」
 全機の時計が、寸分違わずに日付の変更を搭乗者に告知した。
「いこう、さくらくん。」
「はいっ。」
 光武は一歩、また一歩としっかりした歩を進める。大神とさくらのペアは聖魔城に最も近いルートを行く、当然敵に発見される確率、迎撃を受ける確率は最も高いと思われる。最も危険なルートは自らが歩む、大神らしい選択である。
「みんな、無事で会おう。」
Rudolf <lyyurczxxp> 2016/09/27 19:50:33 [ノートメニュー]
  その6. Rudolf 2016/09/27 19:50:49
  その7. Rudolf 2016/09/27 19:51:11
  その8.(最終章) Rudolf@お付き合い下さりありがとうございます 2016/09/27 19:51:43
   └ようやく感想 夢織時代 2016/09/28 00:16:50
    └東京、仙台、神戸等々と Rudolf@今度は餃子オフゆるぼ中 2016/10/17 21:45:31

[サクラ大戦BBS] [EXIT]
新規発言を反映させるにはブラウザの更新ボタンを押してください。