アインシナリオ・一日目


??「太正十六年九月十六日」
bg事務所
小次郎常「ミキがフランスへ行って半年か……。運良く劇場に入れた報告の後、便りが全然来ないじゃないか」
小次郎常「便りがないのは元気な証拠、ってのはフランスでもいうのか」
小次郎常「……」
小次郎常「悩んでいてもしょうがない。猫探しにいくか」
??「明智さーん、国際郵便でーす」
小次郎常「……なんだそりゃ」
小次郎常「(いつもの郵便夫の気配だけだな……)」
小次郎常「今開ける」
bg手紙
小次郎笑「Miki Akechi France Paris……間違いないな」
??「拝啓 明智小次郎様」
小次郎笑「お兄ちゃん、じゃないのか。これがフランス風なのか」
小次郎常「ふむ……、まあ、苦労はしたようだな」
??「……グラン・マに認めてもらうことができ、十月三日にシャノワールのステージに立つことが許されました」
小次郎驚「は?来月?」
??「つきましては、不肖なる妹の初舞台を是非とも見ていただきたく、チケットと小切手を同封致しました」
小次郎驚「あいつ、欧州からの船便が何日かかるのかわかってないのか……」
小次郎驚「船じゃ間に合わないな。確かシベリア鉄道で最低半月だったか。
小次郎常「猫探しを今日終わらせて、明日一番で下関行きの列車に乗って、大陸行きの船がうまくあるか……」
小次郎常「仕方ない。……しばらく、留守にするが、いいよな?」
bg左胸を抑える手
bg黒
bg客車内
小次郎常「フランスベルギー国境か。はるばる来たものだが……」
小次郎常「十月一日。ロシア軍のせいで足止めを食らったときは万事休すと思ったが、間に合いそうだな」
小次郎常「ん?何か騒がしいな」
sound足音
cg花火
花火常「はあ……、はあ……」
小次郎常「珍しい。日本人の、若い女性がなんで一人でこんなところに」
花火笑「あ。あの……、大変失礼ながら、貴方は日本人の殿方でしょうか」
小次郎常「ああ。そういうあんたも日本人……、いや、その瞳はハーフかクォータか」
花火常「はい、祖母がこちらの人ですが、私は日本人です」
花火常「あの……、初対面の殿方にお願いするのは大変心苦しいのですが、よろしければしばらくこちらの席にご相席を願えないでしょうか」
lips 拒否
小次郎常「申し訳無いが、俺に関わるのは辞めた方がいい。何から逃げているか知らないが、多分、もっと酷いことになる……」
花火常「……ご冗談では、無いようですね。お心遣い、感謝致します」
花火常「貴方様の背負っていらっしゃるものが、せめていつか癒されますように……」
cgクリア
小次郎常「……不思議な女性だったな。だが、ならばこそ、俺に関わっては駄目だ……」
sound足音
小次郎常「ん?またか?」
cgシュペングラー
シュペングラー悲「ああ、むさ苦しい車両だ……」
小次郎常「(不愉快な顔だな……)」
シュペングラー悲「まったく、手の掛かるマドモアゼルだ……」
小次郎常「(さっきの女性を追いかけてきたのか……。しかしなんだ?この臭い……)」
cgクリア
小次郎常「行ったか……。何か、引っかかるな」
小次郎常「二人とも一等客車の方から来たようだったが……」
小次郎常「よからぬ者が乗っているとして……、さて、二等客車の切符で潜入できるか?」
小次郎常「……念のため、だ。確認しておくか」
bg客車デッキ
小次郎常「二人が来た以上、車掌さえ不在なら通れるはず……」
小次郎常「……」
小次郎常「誰だ。そこにいるのは」
????「!?」
小次郎常「妖精のように姿を消しているようだが、この狭い通路で気配を消せていないぞ」
????「くっ……!」
小次郎焦「女の気配!?」
bg一閃
sound刺突音
小次郎驚「!!」
bgデッキ
小次郎驚「今の……一撃は……、手裏剣?」
小次郎苦「こんな、西の果てで……忍者に遭遇するとは……」
sound倒れる音
小次郎苦「無念……」
bg暗転
????「Dead End1\アドバイスを聞きますか?」
select
雛子影「……」
雛子影「思ったより早いわよ、再会するのが」
雛子影「誰かに関われば死ぬと、貴方が思い込んでいるだけだったんじゃないの?」
雛子影「本当にそうなら、あの妹さんがどうして真っ先に死ななかったの?」
雛子影「言っても詮無いか。来てしまったものは仕方がないわね」
雛子影「もしやり直せるなら、貴方はいつからやり直したいと願ってる?」
End


lips タイムオーバー(信頼度アップせず)
「あの、私は北大路花火と申します。@怪しい者ではありません。@故あって困っているので相席させて頂けないでしょうか」


lips承諾
小次郎常「構わないぞ、狭い二等客車だが、アジア人が珍しいのか誰も近くに座ろうとしないからな」
花火笑「ありがとうございます……ぽっ」
花火常「あの……、どうして立たれているのですか?」
小次郎常「いや、窓際の席の方が隠れるにはいいだろうと思ったのだが、通路側の方がよかったか」
花火驚「いえ、ご明察の通りです。お心遣いに感謝申し上げます……ぽっ」
花火信頼度+1
花火常「あ……、名乗りもせずに失礼致しました。私は北大路花火と申します」
小次郎驚「北大路花火……!?確かその名前は……」<タイムオーバー合流
bg手紙
花火驚「え?シャノワールの特等席チケット!?お客様でしたか……でもどうして芸名ではなく私の本名を?」
小次郎常「いや……、確かに、日本人のタタミゼ・ジュンヌこと北大路花火さん、と書いてあるな」
小次郎常「こちらこそ申し遅れて妹の恩人に失礼をしたようだ」
小次郎常「俺は明智小次郎。妹の明智ミキが大変世話になっていると聞いている」
花火驚「ミキさんのお兄さま……!こちらこそ、ミキさんには日本のことをたくさん教えて戴いております」
小次郎常「ううむ、偶然とはすごいものだ」
bg着席
小次郎常「それにしても、スタアの一人旅はいささか不用心すぎないか?現に何かから逃げてきたようだが」
花火笑「ミキさんからお兄さんは探偵をしてらっしゃると伺っておりましたけど、本当に洞察力がおありなのですね」
小次郎常「ミキはどんな脚色をして話しているんだ」
花火笑「脚色かどうかはわかりませんが、素敵なお兄さんと伺ってます。想像していた通りの方で安心しました」
小次郎常「どんな想像をされていたものやら」
花火笑「それは秘密とさせて頂きますね」
花火悲「……ただ、お察しの通りです」
小次郎常「同行者がいるが、厄介な相手だったと」
花火悲「……その、難しい方です」
花火悲「貴族趣味な方ですから、二等客車までは追って来られないと思ったのです」
bg客車
cgシュペングラー
シュペングラー悲「ああ、むさ苦しい車両だ……」
小次郎常「ドイツ語……、しまった、伏せるんだ……!」
花火驚「え……!?」
小次郎常「多分あいつだな。貴族趣味というか、成金趣味だが」
シュペングラー笑「おお、やはりこんなむさ苦しいところにおいででしたか。下賤な客車に似合いませんな、フロイライン花火」
小次郎常「ちっ、上着を被ってもらうんだった……」
シュペングラー笑「トイレから戻ってみれば貴女の姿が無く、途方に暮れるところでしたよ。貴女を無事に巴里までお送りできなければ私の責任になってしまいます」
小次郎悩「(なんだ、この匂い……?香水にしては妙な……)」
花火悲「済みません、シュペングラーさん。気分が優れなかったものですから……」
シュペングラー常「おお、それはいけませんな。介抱して差し上げますから、こんなむさ苦しいところから一刻も早く出ましょう」
小次郎常「ちょっと待った」
シュペングラー怒「なんだね、貴様は。聞くに耐えんドイツ語で」
小次郎常「花火嬢の友人の兄だ。気分が優れないと言ってる婦人を無理矢理動かそうとは失礼だろう」
シュペングラー笑「見るからに下賤な野蛮人が、説得力の無い嘘を掲げて私に楯突こうとは、笑わせてくれる」
花火常「嘘ではありません。その方は私の友人のお兄さんです」
シュペングラー常「ほう……、いけませんな、フロイライン。ご友人はよく選ばれませんと」
花火怒「シュペングラーさん、私の友人とその兄上を悪く言わないで下さい……!」
シュペングラー驚「……!!」
小次郎笑「(おとなしい貴族の令嬢かと思ったら、筋の通った人だな)」
シュペングラー笑「ふむ、これは失礼しました。こんな兄のいるご友人が哀れに思えてしまいましたのでね」
小次郎笑「俺も忠告しておいてやろう。服と香水はもう少しセンスのいいものを選ばないと下品だぞ」
シュペングラー怒「貴様!……フン、やはり野蛮人だな。この匂いの良さがわからんとは」
小次郎常「せっかく妹の友人と話をしているんだ。臭いが邪魔だから特等車に帰ってくれ」
シュペングラー笑「フロイライン花火は私と大切な話があるのだよ。貴様のような野蛮人には無関係な、国家に関わる重要な話がな」
小次郎常「(口にする時点で底が知れる。しかし、でまかせじゃなさそうだ。どういうことだ?)」
シュペングラー常「フロイライン、この野蛮人にわかるように言って頂けませんかね。私はまだまだ貴女にお話すべきことがたくさんあるのですよ」
シュペングラー笑「そう、これはまだ言っておりませんでしたな。例えば、貴女のご友人である、銀髪の少女たちの秘密とか、ね」
花火驚「……!」
花火驚「どういう、ことですか。シュペングラーさん」
シュペングラー笑「それはこんな野蛮人がいるところではお話できませんね。ですから、特等車に戻って頂けますね」
花火悲「……分かりました、戻ります」
花火怒「ですが、その前にお願いがあります。明智さんを侮辱したことをこの場でちゃんと謝って下さい」
シュペングラー驚「!!」
小次郎驚「(これは、なんとも……清冽な。だが、この手の輩にはまずいな)」
シュペングラー怒「……分かってらっしゃいませんな、フロイライン。このような下賤の輩には、ふさわしい対処方法というものがあるのですよ!」
小次郎常「そんな腰の入らない攻撃……!」
小次郎驚「(殺気!こいつじゃない、別の……)」
lips受け sub2避けは後ろに花火がいるので不可だが受けずにシュペングラー死亡 sub3時間切れは霊力ありダメージ main2突き飛ばしは二周目以降・シュペングラー生存ベルナデッド発覚エルザルート
小次郎驚「くっ!なんだ、こいつの拳は……」
sound貫通音
シュペングラー驚「ガッ!!」
小次郎驚「何っ!?」
花火驚「シュペングラーさん!?」
bg喉と背後から貫通したバラの茎
小次郎驚「(なんだ……、喉から生えているあれは、植物?)」
シュペングラー驚「……」
sound落下音
bgうつぶせに倒れたシュペングラー
小次郎驚「……生気が、ない。即死している……」
花火驚「そんな……!」
乗客女「きゃあああああ!」
乗客男「うわあああああ!」
小次郎常「(先ほど感じた殺気も消えた。……こいつのじゃない、いなくなったような……)」
soundシャッター音
カミュ笑「はい、ちょっと君、動かないでくれるかな」
cgカミュ
小次郎常「(フランス語か……。このカメラ、新聞記者?)」
小次郎常「誰だ、おまえは」
カミュ常「それは本来こっちの質問だね。僕は正義と真実の人、モルガン・カミュ。フリーのジャーナリストだよ」
カミュ常「偶然乗り合わせた列車で殺人事件に遭遇するとは、これもジャーナリストの宿命というものかもしれないよ」
カミュ常「さて、君は見たところ東洋人のようだが、どこのどういう人間で……」
カミュ笑「そこの被害者をどうやって殺したのか教えてくれないかな」
小次郎常「……ほう」
花火怒「待ってください。状況を確認もせずに人を殺人犯と呼ぶことが報道のあるべき姿ですか」
小次郎常「そうだな。フランスは報道の自由で世界が学ぶべき国だそうだが、その実体は濡れ衣を製造しているだけか」
カミュ常「おっと、これは失礼。だけど、この男は明らかに死んでいる」
カミュ常「そして、倒れる直前まで君と組み合っていた」
カミュ常「この衆人環視の事実だけでも、君を容疑者と考えるには十分だろう?」
小次郎常「フランスのジャーナリストの底が知れるぞ。この男は何かによって喉を後ろから貫かれていた」
カミュ常「ほう?後ろから、ね」
bgシュペングラー俯せ死体拡大
カミュ驚「首の後ろに……これは、黒薔薇!?」
小次郎常「ほぼ延髄の位置だな。前から見ると首の中央から植物の茎のようなものが突き出ていた」
小次郎常「信じられんが……凶器はこの薔薇としか考えられないな」
カミュ常「君は正気かい?薔薇で人が殺せるとでも」
小次郎常「今は死体に触るつもりはないが、検証すれば茎がこいつの喉に突き刺さったのは確認できるだろう」
カミュ笑「ふむ、信じがたいが事実だということだね」
bg客車内
cgカミュ
小次郎常「花弁は後ろだから貫通方向は明白だ。こいつの前にいた俺や彼女に、後ろから貫くのは不可能だろう」
小次郎常「後ろで見ていたそこの旦那、この男が倒れる前、薔薇がどう現れたか見ていないか?」
乗客男1「し、知らん!儂は何も見ておらん!」
カミュ笑「それは困ったね。被害者の後ろにいた君も容疑者になりえてしまうんだが……」
乗客女「それはありえません!その方のすぐ後ろの宙に突然薔薇が現れて、そのまま刺さってしまいましたわ」
乗客男2「そうだ、手品みたいに突然現れたぞ……!」
カミュ常「突然、ねえ……。まだ君の名前と素性を聞いていなかったが、まさか手品師ということは無いだろうね」
小次郎常「嫌な性格をしているな」
カミュ常「それが仕事だからね。名乗れないのならもしかして君はスパイかい?」
小次郎常「ちっ……まあいいだろう。俺の名は明智小次郎。日本人の探偵だ」
カミュ常「名前はともかく、わざわざ疑われそうな職業を名乗るとは、それは信用していいのかな」
小次郎常「パスポートもあるし、なんなら大使館に問い合わせるんだな」
小次郎常「ところで、いい加減に誰か車掌に連絡してくれ。一応容疑者らしい俺が動くわけにはいかんからな」
花火悩「明智さん……」
小次郎常「わかった、僕が連絡してこよう。みなさん、くれぐれもこの男が逃げないように見張っておいて下さい」
cg花火
花火悩「明智さん、大丈夫ですか?」
小次郎常「ああ。奴に殴られたところが少し痛むが大したことはない」
小次郎常「それにしても、まったくあんたは大した人だ」
小次郎笑「ジャーナリストに対して、ああもはっきりとした物言いは、生半可なスタアに出来ることじゃない」
花火笑「ただ言うことを聞いているだけでは何も解決しないということを、ある方に教えて頂きましたから」
小次郎常「(ある方?シュペングラーでないことは確かだが……まあいい、余計な詮索はすまい)」
小次郎常「(花火嬢がシュペングラーに手を合わせている……。奴とは仕事上の関係のようだが……)」
カミュ笑「待たせたね、明智君。車掌を連れてきたよ。逃げなかったとは殊勝だね」
cgカミュ
小次郎常「別にお前なんか待っちゃいないぞ、新聞記者」
車掌「君かね、殺人事件の容疑者の東洋人というのは」
小次郎常「いきなりだな。俺よりまず被害者を確認してやってくれ」
車掌「む……確かに、死んでおる。特等車の乗客が何故ここで……困ったな。小官としては対処しかねるが……」
車掌「野放しもできないので、容疑者には警察が来るパリまで車掌室でおとなしくしてもらおう」
小次郎常「(それは……まずいな。犯人が車内にいるのに、被害者の知り合いの花火嬢が一人になってしまう)」
花火常「お待ち下さい。それでは明智さんが一人になって真犯人に何をされるかわかりません」
小次郎笑「……逆に心配されてしまったか」
花火驚「あ……、済みません。大それたことを申し上げてしまいました。……ぽっ」
車掌「しかし、この男を野放しには……」
花火常「特等席の個室で私がご一緒します」
小次郎驚「なっ……!」
車掌「……わかりました。仕方ありませんな」
小次郎常「(いや、変な意味ではないのか。特等席の客は身元がしっかりしているから保証人扱いか)」
カミュ常「仕方がない。パリに着いてから取材を続けるとしようか」
bg花火お茶提供
花火常「お茶をどうぞ、明智さん」
小次郎笑「む、このヨーロッパのど真ん中で緑茶とはありがたい」
花火悲「このようなことに巻き込んでしまい済みませんでした……」
小次郎常「妹の恩人を助けられたのだから構わない。むしろ今は俺が助けられているしな」
花火常「明智さん……、犯人の姿、見えましたか?」
小次郎悩「いや、何も見えなかった。すさまじい殺気は感じたんだが……」
花火常「私もです。一体誰がどうしてあんなことをしたのか……」
小次郎常「新聞記者が言った手品師という説が冗談にならないな……」
bg黒
soundブレーキ音
bg駅構内
cgエビヤン
小次郎常「早速警察のおでましか」
エビヤン常「えーっと、君が被害者と組み合っていた、明智小次郎という日本人かね」
小次郎常「そこの新聞記者から聞いたのか。ああ、俺が明智小次郎だ。おい、変な説明をしていないだろうな」
カミュ笑「大丈夫だよ、どうやら君は犯人ではなさそうだからね。変なことは言っていないから安心してくれ」
小次郎常「どういう心境の変化だ」
カミュ笑「考えてみたら、動機がありそうなのはそちらのお嬢さんだったよ」
小次郎怒「……また厄介な爆弾を投げてくれたな」
エビヤン驚「お嬢さん……?って、花火くん!どうしてこんなところに?」
花火常「ご無沙汰しております、エビヤン警部」
小次郎常「驚いたな。どういう人脈だ。花火嬢はこの刑事と知り合いなのか」
花火常「亡くなったのは、ドイツの実業家であるハインツ・シュペングラーさん。ドイツからの旅行で私に付き添って来た方です」
カミュ常「付き添いといっても、お嬢さんは彼から逃げようとしているみたいだったけどね」
小次郎常「故人を悪く言うのは好きじゃないが、近くにいると女性は不快に思うだろう人物だったからな」
花火常「明智さんが私をかばって下さった直後に、シュペングラーさんは亡くなられたのです」
エビヤン笑「ほほう、なるほど。さすがに日本の男だな」
小次郎常「(ん……?新聞記者と違ってえらく好印象だな)」
エビヤン常「さて、この目で見ても信じられんが、被害者は確かに薔薇の茎が背後から延髄を貫通していた」
エビヤン常「そして君は、被害者に正面から殴られていたそうだな」
小次郎常「もう証言を集めたのか。その通りだ」
エビヤン「そして、花火さんは彼の後ろにいて、場所は狭い二等客車……。犯行が無理なのは明白だな」
カミュ常「本当ですか?糸を張って罠を仕掛けた可能性なんて考えられませんか?」
エビヤン常「少なくともそんなものは見えなかったという証言を聞いている。本官も探したが痕跡は見あたらなかった」
小次郎常「(こいつ、むちゃくちゃ優秀じゃないのか。好意的で助かったぜ)」
エビヤン常「一番近くにいたのは君だが、薔薇はどう刺さったのだ?」
小次郎常「済まないが、殺気を感じてそちらに気を取られてしまい、気がついたら奴の喉から茎が生えていた」
エビヤン悩「真犯人の殺気か。一撃必殺……一級の暗殺者と推測されるが、しかし、そいつは困ったな」
小次郎常「同感だ。さすがにこれで俺が第一参考人から外れるのは無理があるな」
エビヤン常「うむ、話が早い。身元引受人でもいれば楽なのだが、君は日本人旅行者だからな……」
小次郎常「(一晩独房くらいならいいが、ミキのステージが見られなくなるのは困るな……)」
花火常「あ……、それでしたら……」
エリカ笑「あー!いたいたー!」
小次郎驚「!なんだ!?疾風!?」
lips受け止め 避け>花火も軽やかにかわしてエリカ顔面から滑走 時間切れ>直撃を受け吹っ飛び累積ダメージ
小次郎驚「(いかん!避けると花火嬢に当たる……!)」
エリカ驚「わあああああ!誰か止めてくださーーーーーい!」
sound衝撃音
小次郎驚「(これは……霊力……!?)」
小次郎驚「貴様、真犯人の仲間かっ!?」
花火驚「明智さん!待って下さい!」
小次郎常「花火嬢……?」
花火常「……済みません、明智さん。その方は、私の友人です」
cgエリカ
エリカ常「あいたたたた……エリカまたやっちゃいました」
小次郎常「エリカ……?大丈夫か、君」
エリカ笑「大丈夫です。神は仰いました。頭を打ち付けたら次は顔面から当たりなさいと」
小次郎悩「(そんな話聞いたこともないが……)」
エリカ常「あれ……あなたは……」
小次郎常「どうした?」
エリカ笑「わお、あなた日本人ですね。チョンマゲの免許は持っていないんですか?」
lips昔は結っていた そんなものはない>エリカ落胆「大神さんの嘘つき……」
小次郎常「昔は髷を結っていたが、近年になってからは結っていないな」
エリカ悲「ええええ、そうなんですか。残念です。見たかったです」
小次郎常「(免許だと?誰かこの子をからかったんだろうが、出鱈目を撒き散らすなよ)」
エビヤン驚「エ、エリカさんか……。相変わらずだね」
小次郎常「刑事の知り合い……?いつもということは不良少女なのか?十字軍みたいな格好だが)」
エリカ常「はーい、エビヤン警部も相変わらずですね」
エビヤン常「う、うむ。ところで君が駅に来るとは珍しいね」
エリカ笑「あ、そうでした。私、花火さんが悪い人に連れて行かれないようにするため迎えに来たんでした」
エビヤン常「い、いや、本官としても別に花火くんを連れていこうというわけじゃ……」
エリカ常「それじゃあ花火さんを連れていっちゃいますね。グラン・マが待っているんです」
花火常「あ……、待って下さい。明智さんはどうなるのですか、エビヤン警部」
エビヤン常「一旦警察で身元預かりとなるな。花火くんと違って彼には身元保証がないから」
花火常「確たる保証があればいいのですね。わかりました」
花火常「日本大使館にこうお伝え下さい」
花火常「明智ミキさんのお兄さんの身元保証を北大路花火がお願いする、と」
エビヤン常「アケチミキ、さんのお兄さん、だね。わかった」
小次郎驚「花火嬢……、それはいったいどういうことですか」
花火常「明智さん、ご迷惑をおかけしますが、早急に解放されると思います」
花火常「助けていただいたご恩は必ずお返し致します。近いうちに、必ず……」
小次郎常「いや、こちらこそ世話になった。恩など、妹が受けすぎているだろうから気にしないでくれ」
エリカ常「はーなーびーさーーん!まだですかー!置いて行っちゃいますよー!」
小次郎驚「あの子は……、花火嬢を迎えに来たんじゃなかったのか……」
エビヤン常「うむ、まあ、その、悪い子ではないんだがな……」
エビヤン常「さて、済まないが身元保証人が来るまで警察に来てもらおうか」
小次郎常「(手錠無しとは、ずいぶんぬるい待遇だな……)」
bg警察内
cgエビヤン
エビヤン常「ということは、君は被害者とは初対面なんだな」
小次郎常「この切符を見てくれ。わざわざドイツ人を暗殺しに日本からシベリア鉄道で来るか」
エビヤン笑「うわさに聞くニンジャというやつじゃないだろうな」
小次郎常「せめて侍と言ってくれ」
エビヤン常「所持品に刀が無かったからな。危険物は……、短刀くらいか」
小次郎常「疑いは晴れたか?」
エビヤン常「最初から疑っておらんよ。ただ、被害者がドイツ人の実業家とあっては、上を納得させる書類が要るんだ」
小次郎常「国際問題になるのか」
エビヤン常「不本意ながらな。ハインツ・シュペングラーはドイツ政府とも繋がりのある若手実業家とのことだ」
小次郎常「やれやれ……」
sound電話
エビヤン常「はい、こちらエビヤン。ん……?ああ、大使の証明書?わかった、それならいけるだろう」
エビヤン常「迎えが来たよ、明智君。釈放だ」
小次郎驚「もうか、早いな」
エビヤン常「連絡して一時間とは迅速だな。君の妹のミキさんというのは、シャノワールのダンサーなのか?」
小次郎常「今度デビューの新人だ。そんな大物じゃないはずなんだが」
エビヤン常「今後ひいきにさせてもらおうか。まあ、サフィールさんには及ばんだろうがね」
bg警察玄関
cgより子
秘書常「日本大使館の狭霧より子です。そちらが明智小次郎氏ですか」
cgエビヤン
エビヤン常「ああ。以後彼の監督責任はお任せするよ」
小次郎常「世話になったな。日本の警察はフランスを手本にしたというが、待遇ではまだ及ばんようだ」
エビヤン常「それはフランス市民として光栄だな」
エビヤン常「それから、犯人が目撃者である君を襲う可能性もある。くれぐれも気を付けてくれよ」
小次郎笑「そうだな、捕まえたらあんたの手柄にしてやるよ」
エビヤン笑「おいおい、本官の仕事を取らんでくれ。しばらく騒ぎは起こさないでくれよ」
秘書常「それでは、大使館で手続きがあるのでご同行願います」
bgパリ市街
cgより子
小次郎常「(よりこ、と言っていたな、この美人。日本から来て大使館で働いてるとはどんな才媛だ)」
より子常「私の顔に、何か?」
小次郎常「あ、いや……」
lips待遇について尋ねる 事情について聞く>身の上話その1信頼度+ ナンパする>信頼度−
小次郎常「北大路花火嬢からの伝言で来てくれたのか」
より子常「そうです。お待たせしましたか?」
小次郎常「逆だ。迅速すぎて驚いている。ミキはデビュー前で知られていないはず。ミキの兄で通じるのか」
より子怒「……誠に不本意ながら、我が上司はシャノワールの強烈、熱烈、深刻かつ偏執的な愛好者でして」
より子怒「デビュー前の新人も把握しています。それが日本人ならばなおのこと、我々も知らざるを得ません」
小次郎驚「大使の人物像が不安になってきたぜ……」
より子常「そのぐらいの認識で結構です」
小次郎驚「……いいのか?」
bg大使館内
cgより子
より子常「あいにくと大使は本日は外出しておりまして、今日は最低限の事務しかできません」
小次郎常「大使無しで一時間で釈放させるあんたの手腕に感服するぜ」
より子常「恐れ入ります。さて、事後ですが旅券を確認致します」
小次郎常「ああ、確認もしないでいいのかと思っていたところだ」
より子常「形式的なことです。北大路花火様が確認されていたので間違いはないでしょう」
より子常「……確かに。太正十四年にも欧州に来られてますね」
小次郎常「それが確認になるのか?」
より子常「金田金四郎作<紅蜥蜴>のモデルとなった明智小次郎ですよね」
小次郎驚「! なぜそれを……」
より子笑「ああ、やっぱり。フランスにいると日本の情報が恋しくてかえって詳しくなるのです」
より子笑「勤務時間中でなければ、この初版本にサインをお願いしているところです」
lips実物に幻滅するなよ サインくらい構わないぞ>より子信頼度+ 
小次郎常「その物語は所詮虚構だ。実物はこの通りかけ離れているぞ」
より子笑「さて、そうでしょうか。それは私自身がこの目で確認致します」
小次郎常「……これから?まだ何かあるのか」
より子常「一応、殺人事件の重要参考人であるということを忘れないで下さい」
より子常「パリにいる間は大使館が貴方の動向を確認していることが警察との約束事となっております」
小次郎驚「まさか、今度はここに拘束されるのか……」
より子常「そこまでは致しません。宿泊はこちらが提供する場所以外でしないことが条件です」
より子常「朝貴方がその場所にいなければ、逃亡したものとみなし、指名手配されます」
小次郎常「宿は提供してもらえるというわけか。それ以外は自由行動でいいんだな」
より子笑「詳細は明日大使が来た上で決定しますが、暫定的にはそういうことです。よろしいですか」
小次郎常「結構だ」
より子常「では宿泊場所へ案内いたします」
bgアパート前
小次郎常「日本大使館が大家をやっているとは驚いたぜ」
より子常「日本から無一文でパリまで来る芸術家志望の若者が結構いますので、保護のために要るのです」
小次郎常「なるほど」
より子常「そうそう、この写真の赤城三郎という若者を見つけたら連絡いただけますか」
bg赤城三郎の顔写真
小次郎常「芸術家志望の青年が、行方知れずにでもなったか?」
bgアパート前
cgより子
より子常「それだけならいいのですが、どうも犯罪に巻き込まれた可能性がありまして」
小次郎常「アパート代の分の依頼ということでいいんだな」
より子笑「ふふっ、貴方はやはり探偵明智小次郎ですのね。ええ、そういうことでお願いいたします」
bgアパートの鍵
より子常「マスターキーは大使館が持っていますので」
小次郎常「心得た」
より子常「この場所は妹さんの勤めるシャノワールに伝えておきますね。明朝また連絡致します。ではよきパリ観光を」
cgクリア
小次郎常「さて、昼食を食べ損ねていたな。ミキの下宿先を探しがてら散策するか」
bgノートルダム前
小次郎常「あれが有名なノートルダム寺院か。ついでに見ていくか」
小次郎常「……妙な妖気の残り香がするのはどういうことだ?」
sound激突音
小次郎常「うおっ、と」
cg大佐
大佐常「邪魔だ。道の真ん中で立ちつくすな」
小次郎驚「(軍人……!?寺院に気を取られていたとはいえ俺が気づかないとは)」
大佐常「なんだ貴様、東洋人か。フランスの芸術を解らぬのにこのあたりをうろちょろするな。邪魔だ」
小次郎常「(邪魔、ねえ。こんな観光地に制服姿の高位軍人が何の任務だ?)
lips相手にしない (4シナリオクリア後)喧嘩を買う>大佐と駆けつけた軍人を倒し本拠乗り込みメイリン救助ルートへ 誤魔化す>「モンマルトルってのはどっちだ」馬鹿にされつつも指示される
小次郎常「(行ったか……)」
小次郎常「(よく見れば、さりげなく歩哨らしいのが何人も寺院の周辺にいるな)」
小次郎常「(要人の来訪に備えるにしては、どれも隠れているのが妙だな)」
小次郎常「(覚えて置いた方がいいかもしれんな)」
bgミキのアパート前
小次郎常「モンマルトルというのはこの地区だったのか。こっちの宿泊所の近くじゃないか」
小次郎常「ミキのアパートは……、この部屋か」
cgエルザ
エルザ驚「あれ?もしかして、あなたミキのお兄さん?」
小次郎常「ああ、そうだ。その銀色の髪……、あんた、ミキの手紙に書いてあったルームメイトのエルザか?」
エルザ笑「そう、エルザ・フローベール。生まれも育ちもパリな18歳。恋人募集中よ」
エルザ常「あーあ、だから待っていたら来るって忠告したのに、あの子ってば」
小次郎常「……すれ違ってしまったようだな」
エルザ笑「そういうこと。あの子、花火さんから場所を教えてもらったら我慢できなくなっちゃって」
エルザ笑「ま、愛しのお兄ちゃんが地球の裏側からわざわざ来てくれたんだから仕方ないか」
小次郎常「どうやら、色々妹が迷惑を掛けているようだな。一体どんな話をしているんだ」
エルザ笑「聞いた通りのことよ。もっとも迷惑って、掛けているのは私の方かもね」
エルザ笑「あの子がいてくれたおかげで、私はシャノワールのステージに手が届くところまで来れた」
エルザ笑「天涯孤独な私が、誰かに支えてもらえるなんて思いもしなかったよ」
小次郎常「あんたならミキがいなくてもなんとでもなったように見えるがな」
エルザ笑「誉めてくれてありがとう。でも教養があるわけじゃない天涯孤独の身には色々あってね」
エルザ常「工事現場の手伝いならともかく、下水道の清掃員なんてやってたら、近づいてくる男もろくでもなくてね」
小次郎常「なるほど、あんたが誇り高い人間だということはよくわかった」
エルザ笑「……へえ、ミキが自慢するだけのことはあるわね、お兄さん。参ったなあ、惚れちゃいそうだよ」
小次郎常「妹のルームメイトに手を出して、妹に嫌われろというのか」
エルザ笑「あらら、残念。ますます気に入っちゃったんだけどね。惜しいなあ」
小次郎常「俺はそんなまっとうな人間じゃないぞ」
エルザ笑「では恋の天使エルザさんから、優しいお兄さんにアドバイス。かわいい妹との再会に花束なんてどう?」
エルザ笑「このパリは恋の街、男は思いきり気取っていいの。ミキも半年パリで暮らしたんだから、立派なパリジェンヌよ」
小次郎常「妹になにをさせるつもりだ……」
エルザ笑「あはははは、それじゃ、また会いましょ、すてきなお兄さん」
bg市場
小次郎常「言われて花を探すあたり、俺も単純だな……」
小次郎常「しかし、花屋は無いな。食料品が中心の市場だったか」
sound鈍い激突音
小次郎常「おっと、失礼」
cgアイン
アイン常「いえ、こちらこそ考え事をしていて失礼を」
アイン常「……あら、見かけない顔ね。ベトナムから来たばかり?」
小次郎常「いや、日本人の観光客だ。そうか、ここはベトナムからの移民が多いのか」
アイン常「多いというほどではないけど、フランスに来る東洋人の多くはベトナム人だからね」
小次郎常「そういえばベトナムはフランスの植民地だったな」
アイン悲「ええ……」
アイン常「ところで、観光客がこんな生活感溢れるところに何かご用?」
小次郎常「妹に会いに行くので、花屋を探しているんだ」
アイン常「花屋?ちょっと待ってね、知り合いの子に聞いてみるわ。マジシャンなら花に詳しいはず」
アイン常「えーと、あ、いた。コクリコ、花屋って市場にあったかしら?こちらの日本人観光客が探しているの」
cgコクリコ
コクリコ常「へえ……日本人なんだ。……まあ似てないか」
小次郎常「ん?有名人に似ている奴はいないと思っていたが」
コクリコ常「あ、ごめん、こっちの話。えーと、花屋だね。あるにはあるけど、コレットの店の方がいいかな。案内するよ」
小次郎常「おいおい、そこまでやってもらう義理はないぞ」
コクリコ常「やっぱり。奥ゆかしいんだね。でも、日本人だっていうことだけで十分だよ」
アイン常「じゃあコクリコ、あとのことはお任せするわ」
コクリコ笑「うん、わかったよ」
小次郎常「済まないな。東洋人同士助けるのが風習なのか」
コクリコ常「うん、ヨーロッパでは東洋人は苦労するからね」
小次郎常「苦労、か……。ミキもどんな暮らしをしていたのやら」
コクリコ常「あれ?ミキって……。そういえば、お兄さんの名前は?」
小次郎常「名乗り遅れたな。明智小次郎という」
コクリコ笑「ああ、やっぱり!日本から来るって言っていたミキのお兄さんか」
小次郎常「あいつ……、えらい有名人になってるんだな」
コクリコ笑「うーんとね、残念だけどまだそこまでじゃないよ」
コクリコ笑「ボクの名前はコクリコ。シャノワールのマジカルエンジェルコクリコっていうんだ」
小次郎驚「何!? 自分より小さいって手紙に書いて会ったが、こんな小さい子が!?」
コクリコ怒「小さいはひどいな。これでも一人でちゃんと暮らしているんだよ」
小次郎常「ミキの先輩ということはそういうことか。失礼をした」
コクリコ常「……そのお辞儀、日本人らしいねえ。いいよ、許してあげる」
コクリコ常「それより、帝都のことを聞かせてよ。ミカサ事件の後どうなった?」
小次郎常「えらく詳しいな……」
コクリコ笑「へへーん、実はね、今年の春に帝都に行ったんだよ」
小次郎常「そうか、帝劇でやっていたフランスからの招待公演、あれに参加していたのか」
コクリコ笑「そういうこと」
小次郎常「(帝劇とシャノワールが提携している……。まあ、心配することではないか)」
小次郎常「帝都の変化といってもな、コンクリート製のビルジングが建ったりしてどんどん情緒が無くなっているな」
コクリコ常「帝都には災害から立ち直る力があるってことでしょ。それはすごいことなんだよ」
小次郎常「それは……、確かにそうだな」
bg花屋
cgコクリコ
コクリコ常「ここだよ、花についての目は確かだと思うよ。多分モンマルトルで一番」
小次郎常「世話になったな」
コクリコ常「普段はシルク・ド・ユーロってサーカスにいるから、今度見に来てね」
小次郎常「サーカス?シャノワールじゃないのか。ああ、また今度な」
cgクリア
小次郎常「……そういえば、例の武器は黒バラだったな」
小次郎常「まさか普通に売られているものとは思えないが……」
cgベルナデッド
ベルナデッド常「……」
小次郎常「(なんだ、この少女は……。十四歳くらいか? だが、この年齢の少女の持っている雰囲気じゃないぞ)」
ベルナデッド常「花を買いに来たの?」
小次郎常「ああ」
小次郎常「(持っているのは……白バラの、花束か。店員じゃなくて、店の客だな)」
ベルナデッド常「あなたに一つ、忠告して置くわ」
小次郎常「なに?」
ベルナデッド常「目は時として口よりも雄弁よ。おしゃべりには気を付けなさい」
小次郎常「ほう……。目は口ほどに物を言う、か。フランスでも同じようなことわざがあるんだな」
ベルナデッド常「そう。わかっているのなら、気を付けなさい」
cgクリア
小次郎常「(行ってしまった……。なんだったんだ?)」
cgコレット
コレット笑「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですね。どんなお花をお求めですか」
lips少女について聞く・ベルナデッドフラグ+1 花について聞く・質問をショートカットし、花の選択を最上にするルート
小次郎常「今の少女は占い師か?なにやら忠告されたんだが」
コレット笑「詩人さんですよ。普段は公園で詩集を売ってるけど、気に入った人にしか売らないので有名なの」
小次郎常「詩人、ねえ……。そんな雰囲気じゃなかったが」
コレット常「冷やかしに来たんですか?」
小次郎常「いや、済まない。久々に再会する妹がステージデビューするので、祝いの花束を送りたいんだ」
コレット常「ふうん、妹さんのご印象はどんな方ですか」
lips元気だな(花束好感度高) 清楚だな(花束好感度普通) 派手だな(花束好感度低)
小次郎常「元気だな。無謀なところもあるが、一生懸命だ」
コレット常「わかりました、それならこれがいいかな……」
bg花束
コレット常「こんなところでどうですか」
小次郎常「ああ、助かる。花はどうも不慣れだ」
コレット常「お買いあげありがとうございます。今後ともご贔屓に」
小次郎常「さて、遅くなってしまったな。アパートに戻るか」
bgアパート前
小次郎常「やはり待っていたか。ふむ、元気そうだな」
ミキ笑「お兄ちゃん!」
cgミキ
小次郎笑「おいおい、飛びつくな、お前は。パリに来て少しは大人っぽくなったかと思ったらこれだ」
ミキ笑「だって、お兄ちゃんがわざわざフランスまで来てくれたんだもん。嬉しくて……」
ミキ笑「それに、よかった、無事で……。警察に連れて行かれたって花火さんから聞いてたから」
小次郎笑「フランスの警察は信用してやっていいぞ。そっちよりシベリア鉄道で軍に囲まれた方が危なかったな」
ミキ驚「えっ!?お兄ちゃん、船でマルセイユへ来たんじゃないの?」
小次郎常「お前な。日本から船便で送った手紙がどれだけかかるか計算に入れていなかっただろう」
ミキ驚「あっ……! ごめんなさい、お兄ちゃん。そこまで考えていなかった」
小次郎笑「まあ、間に合ったんだからいいさ。少し早いが、ステージデビューおめでとう、ミキ」
ミキ笑「この花束、私のために……!ありがとう……お兄ちゃん」
小次郎常「……少し、痩せたか? 面白いルームメイトがいるようだが、食事はちゃんと摂っているのか」
ミキ笑「やっぱり? 痩せもするよ。ステージに上がるために猛練習を積んでいるんだもの」
小次郎常「なるほどな、軽くなったが、随分腕や首回りの筋肉は絞まっている」
ミキ驚「お、お兄ちゃん! 乙女の身体を探偵の目で分析しないでよ……」
小次郎常「すまん、職業病だ」
ミキ驚「もう……。あれ?面白いって……、そういえばお兄ちゃん、エルザに会ったの?」
小次郎常「お前のアパートに行ったら扉の前で待っていてくれたぞ。おかげでお前の行き先がわかった」
ミキ常「あー、エルザの言う通りに行き違っちゃったの……」
ミキ常「私より先にエルザに会ったなんて、ちょっと妬けちゃうな……」
小次郎常「おいおい、面白いがいいルームメイトじゃないか。大事にしろよ」
ミキ常「うん、とても大事な友達だよ。……病気とは無縁みたいな元気さだしね」
小次郎常「……、ミキ」
ミキ悲「うん……、片時も忘れたことはないよ。さと子のこと。親友だもの。今でも」
小次郎常「あいつが書いた物語が、お前を帝劇に通わせるきっかけだったな……」
ミキ常「うん、そうして通いはじめた帝劇で、シャノワールの公演を見て、今の私がある……」
ミキ常「見ていて欲しいって思ってる。……きっと見ていてくれる」
小次郎常「そうだな、あいつに恥ずかしくないように、しっかりとな」
ミキ常「うん……」
小次郎常「ところで、エルザも一緒にステージに立つのか」
ミキ笑「そうだよ。一緒の部屋を割り当てられてから、練習のクラスもずっと一緒だったから嬉しかった」
ミキ笑「ステージに立つことを告げられたときも、二人一緒にグラン・マ……えっと、シャノワールのオーナーに呼ばれたの」
小次郎常「お前らしいな。ステージを勝ち取るための好敵手じゃなく、仲間なんだな」
ミキ笑「うん、エルザもそうだと思う」
ミキ笑「そうそう、そのときに、エルザがお兄ちゃんのことをさりげなく話題にしてくれたの」
ミキ笑「そうしたら、グラン・マが、是非呼びなさいって言ってくれて、特例として特等席のチケットと渡航費を出してくれたの」
小次郎驚「なるほど。見習いのお前が出すにはとんでもない金額だと思ったが、そういうことだったか」
ミキ笑「うん、すごいでしょ。グラン・マはね、一度お兄ちゃんと話してみたいって言ってたわ」
小次郎常「それは……、こちらから礼をするために参上しないといけないところだな」
ミキ笑「よかった。ステージ前はグラン・マが忙しいから無理だろうけど、ステージ後に会えないか聞いてみるね」
小次郎常「それにしても、前座デビュー前の新人に対する扱いじゃないな。お前、どれだけ無茶な努力をしたんだ」
ミキ笑「全身全霊全力で。そうでなければ、大金を掛けて送り出してくれたお兄ちゃんに会わせる顔がないもの」
小次郎常「そんな心配はしなくていい。何があってもお前は守ってやる。約束だからな……」
ミキ常「うん。でもね、死んだ気で努力したよ。だって、お兄ちゃんがいなければ、私はあのときに死んでいたんだもの……」
小次郎悲「あのとき、か……」
小次郎悲「そのときの約束だ。お前は必ず俺が守ってやる。お前が何かしたいと思ったら、必ず俺が助けてやる」
ミキ常「うん……」
小次郎常「ずいぶん遅くなってしまったな。アパートまで送ろうか」
ミキ常「あ……、もうこんな時間か。でも、お兄ちゃんはここに泊まるのに、なんだか悪いな……」
小次郎常「気にするな。夕方に女の一人歩きの方が感心しない」
ミキ常「モンマルトルは安全だよ、お兄ちゃん」
小次郎常「確かに少し見て回っただけでそれはわかる。だが、行方不明になっている日本人がいると聞いた」
ミキ驚「ええっ!?そんなの聞いていないよ……」
小次郎常「詳しくは言えんが、信用のおける情報だ。安全に気を付けて過ぎるということはない」
ミキ常「うん、わかった。それじゃ、お兄ちゃんに甘えます」
小次郎常「ああ、それでいい」
ミキ笑「お兄ちゃん。腕、組んでもいいかな……」
lipsいいぞ 恥ずかしいからするな>ミキ好感度−
小次郎常「ああいいぞ、こうして二人で歩くのも久しぶりだな」
ミキ笑「うん、お兄ちゃんと一緒にパリの街を歩けるなんて、夢みたい」
小次郎常「そうか、ここは花の都、パリだったな……」
bgアパート前
エルザ笑「お、ラブラブカップルのご帰還だねっ」
ミキ照「エ、エルザ……。そう見える?」
小次郎常「まさか、こうなるのをわかって待っていたのか」
エルザ笑「カップル以外には見えないねえ。うんうん、恋の天使のおまじないは効いたようでよかったよかった」
ミキ常「?」
小次郎常「まあ、おかげで迷わずにミキと会えたことには礼を言っておく」
エルザ笑「はいはい、どういたしまして」
小次郎常「じゃあ俺はひとまず戻る。ステージまであと二日、夜更かしするなよ二人とも」
ミキ驚「え?お兄ちゃん、もう戻っちゃうの?」
エルザ常「あらら、ずいぶんつれないじゃない。両手に花で照れちゃったのかしら」
小次郎常「そう言うな。変な間合いで警察の厄介になったから昼食を食べ損ねて腹が減っているんだ」
エルザ笑「お、そうと聞いたらお姉さんは黙っていられないね。このままお兄さんの歓迎パーティなんてどう?」
ミキ笑「エルザ名案!そうしよう!」
ミキ常「あ、でも……、今からパーティってさすがに予約も無しには難しいよ」
エルザ笑「何言ってるのミキ。うちでやるに決まってるでしょ。手料理にあれだけ自信あるくせに」
ミキ驚「ええっ!お兄ちゃんに部屋に入ってもらうの!?だ、駄目よ、そんなこと」
エルザ笑「大丈夫大丈夫。こうなるだろうと思って下着とかはちゃんと片づけて置いたから」
ミキ常「あ、そうなんだ。ありがとうエルザ」
ミキ驚「そうじゃなくって!ここは……」
シー笑「ヒューヒュー!ミキさんエルザさん、男性を巡って喧嘩ですかぁ?」
小次郎常「ん?誰だ?」
cgメルシー
メル常「……貴方こそ、どなたですか。この先は女子寮で、敷地内への男性の侵入は禁じられていますよ」
エルザ常「メルさん、堅いこと言わないで。この人はミキのお兄さんよ」
ミキ常「兄の小次郎です。グラン・マの計らいで日本から呼ぶことが出来て、今日到着したんです」
シー笑「あー!あのいつも自慢してるお兄さんですか!へぇ〜」
メル笑「そうでしたか。お噂はかねがね聞いております」
ミキ常「お兄ちゃん、髪の短い方がメル・レゾンさん、長い方がシー・カプリスさん。二人ともグラン・マの秘書よ」
小次郎常「そうか。……どうやら妹が俺のことで大変お騒がせしているようで、お詫び申し上げる」
シー笑「ヒューヒュー!やっぱり日本人ですねえ。ミキさんが自慢したくなるのはわかるなぁ」
メル笑「いえこちらこそ、ミキさんには色々と助けられてもいるんですよ」
小次郎常「それは嬉しいが……、ミキ、お前は一体俺をどんな風に紹介していたんだ」
ミキ常「え、普通に話題にしていただけだけど……」
エルザ常「そうだったかしらねえ?」
シー常「そうですよねえ?」
小次郎常「……」
メル常「ところで、何を騒いでいたんですか」
エルザ常「そうそう、兄と妹の再会を祝して一つパーティをしようと思ったのよ」
シー笑「あー!それ、いいですねえ、やりましょうよ!」
メル驚「なにを言っているの二人とも……!女子寮だって言ったでしょう。絶対駄目よ」
ミキ驚「そ、そうです。メルさんの言うとおりですよ。グラン・マに大目玉を食らいますよ!」
シー笑「えー!? そんな堅いこと言わなくてもいいじゃないメルぅ〜。大神さんが入ったことだってあったのに」
エルザ笑「へへぇ〜、それはお姉さんも初耳だねえ。前例があるならいいじゃないですか」
メル照「そ、それは……例外中の例外で……」
ミキ驚「え、ええ……!?よりによって一番まじめなメルさんが……」
メル照「ミ、ミキさん!その、具体的に何があったとか言うんじゃなくて……と、とにかく駄目です!」
小次郎常「(騒ぎになってしまったな……、どうしたものか)」
lips入らないという 入るという>パーティー後にグラン・マに発覚し大使館通報されてバッドエンドコース?
小次郎常「さすがに婦女子の寝所に男が入るわけにはいかんだろう。夕食はどこかで摂るさ」
ミキ常「うん……ごめんね、お兄ちゃん。ちゃんと準備しておければよかったんだけど」
小次郎常「いつ到着するかわからなかったから仕方ないさ。お前のステージが無事終わってからパーティといこう」
メル笑「さすがはミキさんご自慢のお兄さんですね。紳士で安心しました」
シー常「やっぱりサムライかぁ……。あーあ、しょうがないね」
エルザ常「仕方がない。今回は諦めましょうか」
ミキ常「エルザ。今回は、って何?」
エルザ笑「あはははは、妬かない妬かない」
小次郎常「それじゃあまたな。基本的には例のアパートから動けないから、伝言があれば残しておいてくれ」
小次郎常「さて、町中にいくつか食事が出来そうなところがあったが……」
selectカフェへ行く 市場の露店へ行く>市場三人衆と遭遇・アインの身の上話の噂 レストランに行く>食事できるが情報無し
bgカフェ
小次郎常「ここがアパートから一番近そうだな。しばらく世話になりそうだな」
エヴァ常「いらっしゃい。何にします」
小次郎常「何でもいいからしっかりした食事を頼む」
エヴァ常「わかったわ」
小次郎常「東洋人が来ても驚かないんだな」
エヴァ常「ベトナムから来た方もよくいらっしゃるのよ」
エヴァ常「あなたは日本人ね。日本から来た方がしばらくお得意さまだったこともあるわ」
小次郎常「……そういえば捜索を頼まれていたな。それはこの人物か?」
bg赤城三郎の写真
エヴァ常「あら。お得意さまだったのはこの子じゃないわ。ただ、見覚えのあるお客さんよ」
bgカフェ
cgエヴァ
小次郎常「いつ頃来たかわかるか」
エヴァ常「半年くらい時々来てくれたけど……そうね、ここ一ヶ月は姿を見ていないわ」
小次郎常「実は行方不明になっているんだ。直前にどんな様子だったか教えてもらえないか」
エヴァ常「いつもお金に困ってそうな割に、気取ってコーヒーを飲みに来てくれたけど……」
エヴァ常「そうね、最後に来てくれたとき、様子がちょっとおかしかったわ」
小次郎常「どんな風に?」
エヴァ常「と言われてもねえ。カフェで人間を見てきた経験で変だと思ったのよ」
エヴァ常「やつれてる割には目つきが鋭くなって、気取った雰囲気が消えていたわ」
エヴァ常「……そうそう、香水みたいな匂いがしたわ。そんなお金無いはずなのにね」
小次郎常「食うに困って香水……? それも妙な話だな」
エヴァ常「でしょう?最初は感じの良かった子なのに。同じ日本人なら何とか探してあげてよ」
小次郎常「そのつもりだ。何かわかったらまた教えて欲しい」
エヴァ常「ええ、わかったわ。……お食事だったわね。すぐに作るわ」
cgクリア
小次郎常「単なる行き倒れや餓死じゃなさそうだな……。やれやれ、猫探しの方が気楽だ」
エヴァ常「おまたせ。フランスパンは食べられるかしら」
小次郎常「む、やってみよう」
小次郎常「堅い……、棍棒と間違えていないか。この堅さは」
エヴァ常「食い逃げや強盗を撃退することもできるのよ」
小次郎常「本当かよ……」
bgカフェの外
小次郎常「この近辺で生活していたのは確かだな。夜の街を探してみるか。朝までに帰ればいいだろう」
cg夜の街
小次郎常「裏街ってのはパリでもそう変わらないな。娼婦がいないのはやはりこのあたりは治安がいいのか」
小次郎常「ん?今、何かよぎったような……」
小次郎常「そこにいるのは誰だ?」
cgロベリア
ロベリア笑「ふぅん、アタシに気づくとは。ただ者じゃないね、アンタ」
小次郎常「今、アンタ、どこから出てきた?」
ロベリア常「さあて、どこからだろうね。天から降ってきたのかもしれないね」
小次郎常「(えらい美人だが、えらい殺気だな……)」
ロベリア常「どうしたもんかねえ、アタシとしちゃ、ここで姿を見られたことを覚えていて欲しくないんだが」
lips死人に口無しかい 忘れるから見逃してくれ>好感度低下
小次郎常「死人に口無しと来るか?」
ロベリア笑「ハッ!殺されてなんかやるもんかって顔でそう言うかい、いいねえアンタ」
小次郎常「あいにく、一度は地獄を見てきたものでな」
ロベリア常「一度かい。アタシは百回くらい見てきたんだが、もう一回くらい見て来ちゃどうだい!」
小次郎常「おっと!」
ロベリア笑「今のをかわすかい。ますます気に入ったよアンタ」
小次郎常「やれやれ、どうして俺はこういう殺し合い相手に好かれるんだ」
ロベリア笑「こんな美人を相手にしてるのに、他の女に懸想とはいい度胸だねぇ」
小次郎常「そいつは失礼したな。とはいえ俺も身元が怪しいんでな。あまり騒ぎにしたくないんだ」
ロベリア笑「なら、アタシを気絶させてどこかに連れ込んでみるかい」
小次郎常「そんなことをしたら妹に会わせる顔がないんでな。お断りだ」
ロベリア笑「せっかくアタシが誘惑してやってんのに、……ん?妹?」
ロベリア常「アンタの顔、どこかで見たような……」
小次郎常「あいにくこちらはアンタの顔に覚えが無いぞ」
ロベリア常「もしこれだけの使い手に出会ったんなら憶えているさ。写真だな……東洋人……」
ロベリア笑「ああ!わかったわかった。アンタ明智小次郎だろ」
小次郎驚「なっ!?」
ロベリア笑「あっはははは!正解かい。こいつは奇遇だね。フン、ミキの言う兄自慢は大げさでもなかったか」
小次郎怒「アンタ、ミキを知ってるのか……」
ロベリア常「おお怖い怖い。自己紹介が遅れたね。アタシはシャノワールで踊り子をやってるサフィールってんだ」
小次郎驚「は!?用心棒の間違いだろう」
ロベリア笑「そうともいうかねぇ。ま、こうなっちゃ仕方がない。アタシもミキに恨まれるのは目覚めが悪い」
小次郎常「口を封じなくていいのか」
ロベリア常「ミキの兄なら探偵だろう。まあ、そうおしゃべりじゃなさそうだ」
小次郎常「信頼してもらったということでいいのか」
ロベリア常「ま、以後パリにいる限り背中には気をつけな。あばよ」
cgクリア
小次郎常「……なんだったんだ。あれで踊り子はないだろう」
小次郎常「少し、どこかで落ち着くか」
bgバー
小次郎常「荒れたところは無さそうなバーだな。ここにするか」
レナード常「初めての顔だな。何にする?」
小次郎常「強めのを何か。アンタのおすすめでいい」
レナード常「フン、後悔するなよ」
アイン常「あら、あなたさっきの」
cgアイン
小次郎常「ああ、市場にいたあんたか。さっきは世話になった」
アイン常「礼ならコクリコにね。妹さんには会えたのかしら」
小次郎常「おかげさまでな。ここ座っていいか」
アイン常「どうぞ。ちょうど話し相手が欲しかったところなのよ」
レナード常「こいつは驚いた。氷の女がどういう風の吹き回しだ?そいつは同郷人じゃないだろう」
アイン笑「アジアなんて欧州から見れば同郷みたいなものよ」
レナード常「フン、そんなものか」
レナード常「旦那、忠告しておいてやるが、そいつは俺が知っている中でも一番固い女だ。気をつけな」
小次郎常「固いか、そうは見えないがな」
アイン笑「あら。それじゃあ、私が何に見えるかしら」
lips学者に見える 医者に見える>アインが所行を思い出して暗くなる 踊り子に見える>冗談だろうと言われる
小次郎常「学者だな。それも工学系だろう?」
アイン常「正解。じゃあこちらも推測するわ。探偵?」
小次郎常「見抜かれるようじゃ困るんだがな」
アイン常「少なくともここでよく見る芸術家志望の夢想家には見えないわね」
小次郎常「確かにこの格好ではな」
アイン常「じゃあもう一つ推測。あなた、日本人ね」
小次郎常「やれやれ、アンタが探偵になるか」
アイン常「ここで見る中国人はほとんどが商人よ。雰囲気が違うわ」
小次郎常「降参だ。俺は確かに日本の探偵、明智小次郎だ」
アイン常「私は、アインと呼んでくれていいわ。ベトナム出身の科学者。専攻は蒸気応用物理学」
アイン常「帝都東京から来たのなら、話を聞かせて欲しいわ」
小次郎常「帝都の蒸気利用についてか?」
アイン常「もちろんよ。西洋に負けない東洋最大の蒸気都市東京。全てのアジア人にとってあこがれなのよ」
小次郎常「アンタの方が詳しいかもしれんぞ」
小次郎常「空中戦艦ミカサのエンジンで帝都の蒸気をまかなっていたのが崩壊して、今は元の七大ボイラー体制だ」
アイン常「そういえばそうだったわね。それでも誇るべき効率化よ。ボイラーは大きい方が損失が少ないもの」
アイン常「それにそもそも小さな家庭用ボイラーでは蒸気の本領が発揮できないもの」
小次郎常「なるほど。至る所で無駄に吐き出していると思ったが伝動時の損失よりそちらの方が大きいわけか」
アイン常「蒸気伝達管は解放弁を設けておかないと高圧になりすぎて危険だから仕方がないわ」
小次郎常「ああ、確かに昔は時々爆発があったな」
アイン常「そう、今は改善されているのね。……ミカサボイラーが無くなって景気はどうなったかしら」
小次郎常「ミカサボイラーのおかげで高圧蒸気が異様に安価で使えて、工場も好景気に浸っていたからな」
小次郎常「確かに、使えなくなるという発表の直後は景気が悪化するって大騒ぎになった」
アイン常「やっぱりそうでしょうね。そんなに安かったの?」
小次郎常「最盛期は何ヶ月か蒸気代というものを払った覚えがないくらいだ」
小次郎常「おかげで工場は大儲けで、資本家は生活に余裕が出たんだろうな。浮気の調査依頼が増えたよ」
アイン笑「それはわかりやすい指標ね」
アイン常「でも、直後は、ということは、実際にはそれほど悪化しなかったの?」
小次郎常「それまでに帝都は立て続けに大規模災害に見回れていたから、市民に耐性が出来ていたんだろうな」
小次郎常「不思議と、復興してやろうという意欲はみんな高かったんだ」
アイン常「……」
小次郎常「復興意欲のおかげで景気が支えられたこともあるし、七大ボイラーが補修程度で再利用できたのもある」
小次郎常「蒸気代の支払は再開してたが、なんとかなってるな。感覚としては去年よりいいくらいかもしれん」
アイン常「わかりやすい指標は無いかしら」
小次郎常「そうだな。猫探しの依頼件数はそれほど落ちなかった。市民生活に猫を飼う余裕が残ってるんだろう」
アイン笑「ありがとう。家出した猫の食べ物が豊富ってことでもあるわね」
小次郎常「なるほど。ネズミや残飯のアテがあるから家出できるのか」
アイン常「そういうことよ。さすがは帝都東京ね、素晴らしいわ」
アイン常「帝都東京が災害に見舞われたのはここ十年で一度や二度ではないでしょう」
アイン常「そこから幾度となくよみがえる都市の力……蒸気の力を最大限利用できればそこまでになるのね」
小次郎常「まあ、それはそうなんだがな……」
アイン常「誇るべきことではなくて?」
小次郎常「必ずしもいいことだけじゃないってことさ。既に東京は俺の記憶にある範疇でも原型を留めていない」
小次郎常「コンクリイトの建物を見たときには、あまりにも違う時代に来てしまったと思ったもんだ」
アイン常「日本はベトナムと同様、木造建築が基礎だったわね」
小次郎常「それで災害、特に火災に弱いのは仕方がないんだ。森と同じくそこから蘇る街の方がいい」
アイン常「なんとかなるものなら改善すべきよ。災害は人の命も心も奪うわ」
小次郎常「蒸気学者のアンタに言うのは気が引けるが……、その人命も問題なのさ」
アイン常「どういうことかしら」
小次郎常「帝都病、ってのがあってな」
アイン常「……初めて聞くわ」
小次郎常「正式名称は先天性蒸気症候群だったか。日本では帝都でしか見られないから帝都病の俗称がついたそうな」
アイン常「蒸気に過敏反応する症状?蒸気自体は水分子よ。高圧蒸気だと高いエネルギーを持ってはいるけど」
小次郎常「さすがに察しがいいな。本来は人体に無害なはずの蒸気が身体を蝕む病だ」
アイン悩「そんな……。蒸気を生成する過程で使用する石炭由来の亜硫酸ガスではなくて?」
小次郎常「石炭の煙か。あの子は七大ボイラーのどれからも遠くなる場所に移り住んだがそれでも駄目だった」
アイン常「供給された蒸気を使用する環境にいる限り、だったということ?その口調だと実例を知っているようね」
小次郎常「妹の親友だった。蒸気の無い世界さえ夢見ていたよ、その子は」
アイン悩「……そう。……原因がわからないわ。液相と違って大気圧下の気相では分子構造も通常のはず……」
小次郎常「あり得ないとか意って否定しないんだな」
アイン常「科学者にとって現象は絶対よ。直に見てきたという観測者の証言を否定できるのは実証した者だけよ」
小次郎常「なるほど、見上げた姿勢だ」
アイン悩「病名が付いているということは、患者はその子一人じゃないわね。出現頻度はどれくらい?」
小次郎常「その子が死んだ頃は十万人に一人だったが、年を追うごとに増えている。今は数千人に一人くらいか」
アイン悩「……帝都の蒸気の使用量増加に伴って増えている、といいたいのね」
小次郎常「帝大の史学科の研究者がその説を提唱している論文を読んだよ」
アイン悩「日本語の文献ね……。こちらで見つかるかしら……。研究所を通じて要求した方がいいかしら……」
小次郎常「もし病気の正体がわかるなら是非とも解明してくれ。墓前に報告したい」
アイン常「ええ。蒸気に対する症状なら、帝都ほどではないにしてもこのパリでも患者が見つかるかもしれないしね」
アイン常「ありがとう。ためになるお話だったわ」
レナード常「どうした。えらく帰るのが早いじゃないか」
アイン常「小次郎のおかげで研究のことを思い出してしまったのよ。ねえ、また明日会えるかしら」
小次郎常「ああ、俺もアンタに教えてもらいたいことがまだ色々ある」
アイン常「ありがとう。それじゃあ、今日の彼のお代は講義料として私のおごりでお願いね、マスター」
レナード常「フン、明日は雪でも降るんじゃないか」
アイン常「特別よ。それじゃあね、小次郎」
小次郎常「ああ、また明日な、アイン」
cgクリア
レナード笑「珍しいにもほどがあるな。あいつがあんなに上機嫌なのは久々に見る」
酔客1「まったくだ。アンタ、何を言って口説いていたんだ」
酔客2「そうだぜ、どんだけ口説かれても研究第一で男を近づけなかった奴が」
小次郎常「故郷の話さ。アインは大学の研究者なのか」
レナード常「理化学研究所の研究員らしいな。こんなバーに来るのはストレスもあるんだろうが」
酔客2「旦那、酔っていないときのアイツに声を掛けてもどうにもならんぞ」
小次郎常「昼間会ったときは、そんな感じでもなかったがな」
レナード常「ほう、やはりアジア人はアジア人がいいのかね」
小次郎常「ああそうだ、済まないがマスターに聞きたいことがある」
レナード常「なんだ。答えられることと答えられないことがあるぞ」
小次郎常「どこかでこの日本人を見なかったか?」
cg赤城三郎の写真
レナード常「……、見覚えがないな。東洋人で目立つから店に来ていれば覚えているはずだが」
小次郎常「そうか……」
酔客1「マスター、東洋人の顔なんて見分けがつくのか」
レナード常「これでも客商売でな」
小次郎常「妙な東洋人の男がうろついているという話は聞かないか」
酔客2「知ってるぜ」
小次郎常「本当か?」
酔客2「ああ、今俺の目の前に妙な東洋人の男がいる」
小次郎常「おい……」
酔客2「冗談だよ。実際のところ、俺はベトナム人と中国人の区別も付かないが、妙な東洋人の噂なら聞いた」
小次郎常「どんな噂だ」
酔客2「その前に、払うものがあるだろ?」
lips酒を奢る 脅す>レナードから叩き出され手がかりがなくなりバッドエンドコース?
小次郎常「万国共通の通貨でいいんだな。マスター、こいつの好物を出してくれ」
レナード笑「フン、まあいいだろう」
酔客2「話がわかるじゃねえか。おうおう、これがあって口がなめらかになるってもんだ」
酔客2「東洋人の話だったな。一月くらい前に、貧乏学生が物乞いさながらに広場で絵を売っていたらしい」
酔客1「おいおい、そんな話珍しくもないぞ。そんな話でいいなら俺にも奢れ」
小次郎常「おいおい……」
酔客2「心配するな。話はこれからだ。先日から、そんなグループの中に薬をやりだした奴らがいてな」
酔客1「それも珍しくねえなあ。芸術なんてラリって出てくるもんだろう」
酔客2「そうだな。ところが、そのグループのまとめ役に東洋人のまだ年若いのがいたとしたらどうだ?」
小次郎驚「何?」
酔客2「こういっちゃ何だが、このパリは芸術なら腕一本で東洋人でものし上がれる」
酔客2「だが裏社会はそうはいかねえ。何のコネもカネもねえ奴がのし上がるには、相当にず抜けた腕っ節がいる」
小次郎常「妙だな。柔道家ならともかく、画家志望だった奴にそんな力があるはずがない」
酔客2「だろ?だから妙だって言ってるんだ」
酔客1「おいマスター、こいつの与他話ってことはないのかい?」
レナード常「そいつの情報なら俺も耳にしている。日本人かどうかは確認していないが東洋人なのは間違いない」
小次郎常「……そうか。写真を見たときにアンタが考え込んだのはそれでか」
レナード常「見てこいつと確認したわけじゃない。信頼のおけない情報を口にすると俺の信用に関わるんでな」
小次郎常「それにしても、一見の俺に随分親切にしてくれるな。有り難いが勘ぐるぞ」
レナード常「これでも人を見る目はある。お前は敵にしない方がいい。そう、俺の勘が告げている」
小次郎常「……」
レナード常「警戒するな。その薬のグループに困っている奴がいるんで、余所者でも解決してくれれば助かると思え」
小次郎常「なるほど。勘定を頼む。また来る」
酔客2「おう、また奢れよ」
bg裏路地
小次郎常「ずいぶん情報が飛び交ってるが……あの行儀の良さそうな秘書の子はどこまで掴んでいたんだか」

小次郎常「今夜のうちにもう少し探すか。どうも猫探しと違って剣呑な気配がするが」
bg夜のエッフェル塔外観
小次郎常「否が応でも目立つな。薬を売るのに観光客を捕まえるかもと思ったが、さすがに無いか」
cgエルザ後ろ姿遠景
cgクリア
小次郎常「ん?今のは……、エルザ?」
小次郎常「ミキと同室のあいつが、なんでこんな時間にここに……」
bgエッフェル塔展望台
cgエルザ
エルザ悲「……」
小次郎常「どうした?こんなところで」
エルザ驚「……!!」
小次郎常「邪魔をしたか?」
エルザ常「あ……、ああ……、お兄さんか。びっくりした。夕食はちゃんと食べたの?」
小次郎常「そんなものとっくに食べ終わった。もう、女一人で出歩く時間帯じゃないぞ。ミキと一緒か?」
エルザ常「ミキはもう寝てるわよ。私と違って行儀がいいわね。お兄さんの教育がよかったのかな」
小次郎常「はぐらかすな。何をしに来たんだ。パリに暮らしているならエッフェル塔も珍しくないだろうに」
エルザ常「日課なのよ。一日に一度はこうしてパリを見渡すの」
小次郎常「今日は俺のせいで来るのが遅くなったということか」
エルザ笑「あはははは、気にしない気にしない。夜のパリも素敵なんだから。何度見ても、心を奪われる……」
小次郎常「随分と、パリに思い入れがあるんだな」
エルザ笑「そりゃあね……。私にとってはただ一つの拠り所だから」
小次郎常「エルザ……、そういえば天涯孤独と言っていたな。あんたも孤児だったのか」
エルザ笑「さすがミキご自慢の探偵お兄さん。よく人の話を覚えてるね」
エルザ笑「ええ、そういうこと。父も母も顔を知らないし、兄弟姉妹がいるのかもわからない」
エルザ常「物心付いたときには、孤児院で暮らしていたわ。それ以前の記憶は無いの」
小次郎常「だが、さっき、生まれもパリだと言っていたな」
エルザ常「うん……。記憶がなくても、わかるの。こうしてパリを見渡していると、私の血が語りかけてくるの」
エルザ笑「ここが故郷だって。私が命に代えてでも、守らなければならない故郷なんだって」
小次郎常「故郷……か」
エルザ常「こんな突拍子もないことを、馬鹿にしないで聞いてくれるのね。ミキと同じように」
小次郎常「……わかるさ。馬鹿になんかできるものか」
小次郎常「俺もミキも生まれ育った町はもう無いが、その跡を見れば、今でも血がざわめく……」
小次郎常「どれほど時が経っても、自分の中にあるんだ。故郷ってのは……」
エルザ笑「……ありがとう。そういってくれると、すごく、安心するわ」
エルザ笑「よく似てるわ、あなた達」
小次郎常「誉められたと思っていいのか」
エルザ笑「もちろんよ。さて、そろそろ帰りますか」
小次郎常「これからあのアパートまでか。ちょうどいい、送っていこう」
エルザ笑「あら、こんながさつな女を淑女扱いしてくれるの?嬉しいわね」
エルザ笑「途中でどこかに連れ込んでくれるともっと嬉しいんだけど」
小次郎常「ミキに怒られるだけじゃ済まなくなるから勘弁してくれ」
エルザ笑「ふーん。じゃあ、ミキさえよければ脈ありってことでいいのかな」
小次郎常「魅力的なことは認めよう」
エルザ笑「ありがとう。ちょっとその気になっちゃおうかな。よいしょ、と」
小次郎驚「おい、なんだこれは」
エルザ笑「夜のパリを男女が連れだって歩くのよ。腕くらい組んでもいいんじゃない?その方が安全よ」
小次郎常「郷に入っては郷に従え、か……」
エルザ常「そうそう、ミキもそう言って色々やったわよ」
小次郎常「……その色々をもう少し詳しく聞かせてもらおうか」
エルザ笑「あらら〜、まずいこと自白しちゃったかな?」
bgブローニュの森
小次郎常「本当にこっちで道が合っているのか?」
エルザ笑「合っているわよ。いい感じに暗がりになってきたと思わない?」
小次郎常「……会って初日に、ずいぶん気に入られたものだな」
エルザ笑「お兄さんは初対面のつもりだろうけどね。こっちはそんな気分じゃないのよ」
小次郎常「どういうことだ?」
エルザ笑「ミキと同室になって、大好きなお兄ちゃんの素敵な話をどれだけ聞いたと思う」
エルザ笑「さすがに恋する乙女の贔屓目だと思っていたら、それ以上の実物だもの」
エルザ笑「それにね、私はミキに救われたと思ってる。パリ以外に拠り所が無かった私を、あの子が最初に認めてくれたわ」
エルザ笑「そのミキを育てたお兄さんに、憧れてしまっちゃ悪いかしら?私の思っていた以上の人に」
小次郎常「……」
エルザ笑「真面目ね。返事は今すぐでなくてもいいわ。お兄さんがパリにいる間にくれればいい」
小次郎常「わかった……」
シゾー「あー!黙って聞いてれば腹立たしいピョン!」
cgシゾー
小次郎驚「エルザ!危ない!」
エルザ驚「何!?こいつ!?……ウサギ?」
シゾー「このシゾー様の縄張りで何をいちゃいちゃしてるピョン!うっとうしいピョン!」
小次郎驚「こんな夜中に着ぐるみを着て……、変態か」
シゾー「変態とは失礼な奴ピョン!この怪人シゾー様を捕まえて変態とは何だピョン」
エルザ常「どこから見ても変態以外に見えないけど……」
シゾー「ええい!切り刻んでやるピョン!」
bgハサミを手にしたシゾー
小次郎常「ハサミ!?まずい、こいつは危険だ。エルザ、下がれ!」
シゾー「ええい、見せつけやがって!」
シゾー「このシゾー様は、黒髪の男が女といちゃいちゃしてるのを見るのが大嫌いなんだピョン!」
小次郎常「……どんな性癖だ」
シゾー「お前も仕立ててやるピョン!」
lips<高速>かわす 失敗>ダメージ蓄積
bgブローニュの森
cgシゾー
小次郎常「ちっ!存外に速い」
シゾー「お前、何者だピョン……。このシゾー様の攻撃をかわすとはただの観光客じゃないピョンね」
小次郎常「あいにくと、ただの探偵だ」
シゾー「嘘付くなピョン!ただの人間が怪人と戦えるはずがないピョン」
小次郎常「伊達に、降魔戦争でミキを守り抜いたわけじゃない!」
lips殴りかかる 銃を撃つ>「怪人にそんなものは効かないピョン」反撃ダメージ
シゾー「うぼっ!」
小次郎常「魔物か怪人か知らないが、気合いを入れて殴れば大概の相手には通じるもんだ」
シゾー「ううう、このままじゃみんなに馬鹿にされてしまうピョン。ここはせめて女を人質にとって……」
シゾー「へ?」
エルザ驚「な、何よ……」
シゾー「おまえ……、まさか……」
小次郎常「よそ見している暇はやらんぞ!」
シゾー「ちょ、ちょっと待つピョン!」
lips待つ 待たない>「人間を相手にしてる場合じゃなくなったピョン!」カウンターで反撃ダメージ
小次郎常「勝手に襲いかかってきた分際で偉そうな奴だ」
シゾー「ふぅ、まったく乱暴な奴だピョン」
シゾー「……」
エルザ常「何かしら。ウサギに知り合いはいないんだけど……」
シゾー「……間違いないピョン。ひとまず、今日はこれにて退散ピョンー!」
小次郎常「あ、待て!」
シゾー「待てと言われて待つ馬鹿はいないピョン!」
cgクリア
小次郎常「待てと言われて助けてやった恩を忘れやがって」
エルザ驚「お兄さん……、本当に、ミキの言う通りめちゃくちゃ強いのね」
小次郎常「いばれることじゃない。ろくでもない力だ。それよりエルザ、怪我はないか」
エルザ常「うん、大丈夫。お兄さんこそ私をかばって、大丈夫だったの?」
小次郎常「大丈夫だ。ただ、奴も本気じゃなかったな。心臓や首ではなく手足を狙ってきていた」
エルザ常「あんなのがまだこのパリにいるなんて……。去年はたくさん魔物が出て、もう終わったと思ったのに」
小次郎常「このパリでも霊的怪異があったのか。とすると生き残りの魔物か?」
エルザ常「わからないわ。でも、去年見た植物みたいな魔物とは全然違った」
小次郎常「奴はみんな、と言っていた。仲間を呼び寄せられる前にここを退散するぞ」
エルザ常「うん……」
bgミキのアパート前
小次郎常「さすがにここから先へは入れないんでな」
エルザ常「入ってきてもばれないと思うけどね、ありがとう、お兄さん」
小次郎常「さて、すっかり遅くなってしまったな。帰らないとあの秘書の美人にどやされるか」
bg自分のアパート前
cgカミュ
カミュ常「ああ、やっぱり帰ってきたかい」
小次郎常「新聞屋か。配達を頼んだ覚えはないぞ」
カミュ常「ひどいね。これでも自分の非を謝罪しに来たのに」
小次郎常「ほう」
カミュ常「警察が早々に釈放したということは、僕の見立てが間違っていたということだからね。大変失礼をした」
小次郎常「それを言いにわざわざこんな深夜まで待っていたというのか。……どうやってここを知った」
カミュ常「情報源は色々あるが、記者の生命線なんだ。明かせないのは勘弁してくれ」
小次郎常「そうか。まあいいが……、謝罪ついでだ。ひとつ教えろ」
カミュ常「何かな?答えられることなら協力するよ」
小次郎常「この男を知っているか?」
bg赤城三郎の写真
カミュ常「!……彼が今日の事件の犯人なのかい?」
小次郎常「いや、別件だ。探偵として捜索を依頼されている」
bg時分のアパート前
cgカミュ
カミュ常「……どこかで見た覚えがあるね。即答できなくて申し訳ないが、わかり次第ここの電話に連絡するよ」
小次郎常「何?この部屋に電話があるのか」
カミュ常「部屋の借り主なんだからそれくらい把握しておいてくれたまえ」
小次郎常「借り主も知らない蒸気電話を把握している貴様が恐ろしいぞ」
カミュ常「許して欲しい。僕は今日の殺人事件の犯人を必死に探しているんだ。その過程で知ったんだよ」
カミュ常「何しろ犯人と同じ列車に居合わせたんだ。まして新聞記者とあっては、僕が狙われる可能性も高い」
小次郎常「それを言うなら俺の方が狙われる可能性が高いんだが」
カミュ常「まさしくその通りだよ。だから君の前には必ずもう一度犯人が現れると思っている」
小次郎常「不本意だがその通りだろうな」
カミュ常「是非とも捕まえて欲しいよ。僕の安全のためにもね。だから僕は君への協力は惜しまない」
小次郎常「……それは頼もしいな」
カミュ常「また何かあったら連絡するよ。僕を見かけたらすぐに声を掛けてくれたまえ」
cgクリア
小次郎常「あいつに居場所を知られたか。隠すつもりも無かったが、まずいことになったかもしれないな」
bg自室
小次郎常「この部屋、それなりに鍵はしっかりしているが、破ろうと思えばなんとでもなるな」
小次郎常「気にしすぎても仕方がないか。寝よう」
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