アインシナリオ・五日目第三ルート




select 理学研究所に向かう
小次郎常「理化学研究所……、アインは確かそう言っていた」
メル常「我がフランスにおける最大の科学技術研究機関です。そこに手がかりがあるのですか?」
小次郎常「先に行方不明になった研究者は、理化学研究所のバレス教授の下で研究をしていたと聞く」
メル常「バレス教授の名は聞いたことがあります。高名な蒸気科学者だとか」
小次郎常「……当たりだな」
シー常「えー?あんなところに敵の本拠があるっていうんですか」
小次郎常「それはないだろう。俺の推測が正しければ、かなり広い空間が必要になるはず」
小次郎常「だが、少なくとも敵の関係者はその研究所に出入りしていたはずだ」
メル常「バレス教授の研究に、敵が関与しているというのですか」
小次郎常「その可能性が高い。バレス教授本人に聞ければいいが、手がかりは間違いなくある」
メル常「仰りたいことはわかりました。ですが、理化学研究所は元より軍事機密を有しています」
小次郎常「異邦人が行ってもおいそれとは入れんか……」
メル常「こちらから手を回すことも検討しますが、裏の正攻法でも数日かかるでしょう」
小次郎常「……それは、待てんな。どうするか……」
lipsロベリアに頼んでみる グリシーヌに頼んでみる コクリコに頼んでみる タイムオーバー→自力で忍び込んでみる
lips自力で忍び込んでみる
小次郎常「場所だけ教えてくれ。なんとか潜入してみる」
シー驚「えー!?無理ですよ!無理!あそこは兵器工廠並の警備がされているんですよ!」
小次郎常「待っていられないんだ。一刻も早く助け出さなければならん人間が三人もいる」
メル常「焦られるのはごもっともですが……」
小次郎常「……頼む」
シー常「お兄さん……、ミキさんが言っていた通りの人ですねー」
メル常「シー……」
シー笑「メル、明智さんは止まらないよ……。止められないよ……」
メル常「……、そうね。わかりました」
メル常「これだけは約束して下さい。危険だと判断されたら必ず引き返して下さい」
メル常「お恥ずかしいですが、私たちの立場上、貴方にお願いするしかありません……」
小次郎常「わかった。俺もそこが最終目的地ではないからな」
bg暗転
bg夜の理化学研究所門
小次郎常「(……)」
bg近づく足音
bg遠ざかる足音
小次郎常「……尋常じゃない警備だな。だが、慣れていない」
小次郎常「ここまでの警備になったのは、ごく最近……か」
小次郎常「この一件が具体化されてから、侵入者を気にするようになった、か」
小次郎常「人数が多いから陽動は危険だな。出来るだけ気づかれないように……」
bg理研外壁
小次郎常「有刺鉄線……、これくらいならばどうにかなるか」
sound着地音
bg理研中庭
小次郎常「(……この深夜に、そこら中の窓に明かりが……、どうなっているんだ)」
bg近づく足音
小次郎常「(中庭にも警備兵か……)」
bg遠ざかる足音
小次郎常「(ふぅ……、しかもこの広さ……、当てずっぽうで探していてはどうしようもないな)」
小次郎常「(少し、手荒くなるのは避けられんか……)」
bg本館入口
小次郎常「(……誰か、一人で近くまで来てくれれば……)」
学生1「なんで当の教授が留守にしてるのに俺たちは徹夜で実験なんだよ」
学生2「言うな。俺だって帰りたいんだ……」
小次郎常「(残念……二人か)」
学生1「俺は蒸気演算機と格闘するためにここに入ったんじゃないぞー!」
学生2「言うなー!ここは女の子が少なすぎるんだー!」
小次郎常「(……実力行使するのが悪い気がしてきたな……)」
学生1「だいたい、教授とアインがここんところ揃って留守って怪しくないか」
小次郎常「(……何?ということはバレス教授の研究生か)」
学生2「怪しいも怪しい。……だがお前の考えている方向とは違うと思うぞ」
学生1「何だよそれ」
学生2「硝煙臭いんだよ。あの退役軍人ってのが来てから色々おかしい」
小次郎常「(この二人に着いていくか……)」
cg理研廊下
学生1「あれから予算が潤沢に使えるようになったじゃないか」
学生2「予算が二蒸機のように膨張するわけないだろ。どこから流れてきてるんだ」
学生1「それこそアインの仮説通りじゃないか」
学生2「……笑えないぞ。研究室まるごと悪魔に売ったとでも言うのかよ」
学生1「魔界って名前に引いてどうするんだ。あれは純然たるエネルギーだろ」
小次郎焦「(……予想はしていたが、やはりそうなのか……!)」
学生2「そうだという保証はあるのか。誰も向こう側を見た者はいないんだぞ」
学生1「そう言われるとそうだが……」
学生2「俺は怖くて仕方がないんだよ。教授とアインが帰ってこないのだって……」
学生1「おい、脅かすなよ。二人揃ってあっちに行ってしまったとかいうんじゃ」
学生2「まだこの世にいるとは思うが……、近づくなって言われているしな」
学生1「あーもー、なんであんな美人があんな研究一色なんだよ勿体ない」
学生2「あれ?お前知らなかったのか」
学生1「何がだよ」
学生2「アインの昔話だよ。アイツ、ただのベトナム出身者じゃないって話だ」
学生1「確かに、ベトナム出身であの知識量は異常だよな。頭もいいし」
学生2「今のベトナムの環境でそこまで勉強できる人間は極めて限られる」
小次郎常「(……確かに、日本より遙かに勉強しにくいはず……)」
学生1「……おい、それは、とんでもない話じゃないか」
学生2「とんでもない話さ。考えられるのは……」
小次郎常「(……王族、もしくは、それに近い上流階級しか、ないな……)」
学生1「聞きたくない聞きたくない!俺はそういうきな臭い話が嫌だから理研に入ったんだよ」
学生2「そうだったな……悪い。振り向いてもくれない演算機が俺らにはお似合いだよな」
学生1「そうだそうだ。科学様万歳だ」
sound扉を閉める音
cg理研扉
小次郎常「(このあたりが、バレス教授の研究室ということか……)」
小次郎常「(外部の警戒を考えると、あまり時間も掛けていられないが……)」
sound扉が開く音
小次郎驚「(しまった……!)」
学生1「ん?アンタ誰?」
lips逃げる! 拘束する! タイムオーバー>名乗る
lips逃げる
小次郎焦「(三十六計逃げるにしかず……!)」
学生1「あ!不審者だ!」
学生2「衛兵!」
sound警報
cg理研廊下
小次郎焦「そんなものが用意されている研究所って一体何事だ……!」
sound纏まった足音
衛兵「侵入者発見!」
衛兵「人質はいません。射殺します!」
小次郎驚「な……!?」
sound銃声
sound銃声
小次郎驚「ここは……軍事施設でも……あったか……。不覚……」
bg暗転
badend

lips拘束する
小次郎焦「騒ぐな……!聞きたいことがある……!」
学生1「甘いぜっ!!」
soundフラッシュ音
bg白転
小次郎驚「なにっ!」
学生1「一家に一本!マグネシウムリボンを思い知ったか!」
小次郎焦「そんなものを常備しているとは……」
学生1「理研を舐めるなよ!おい!警報入れろ!」
学生2「なんだかわからんが了解!」
sound警報
cg理研廊下
小次郎焦「どんな所だ……!ここは……!」
sound纏まった足音
衛兵「侵入者発見!」
衛兵「人質はいません。射殺します!」
小次郎驚「な……!?」
sound銃声
sound銃声
小次郎驚「ここは……軍事施設でも……あったか……。不覚……」
bg暗転
badend

lipsタイムオーバー
小次郎焦「(彼らは別に奴らに荷担しているわけではない……ならば)」
小次郎焦「……アインの知り合いの東洋人だ。彼女を捜している」
学生1「ふーん、アインならいないぜ。居場所もわからない」
小次郎焦「わかっている。だが、その手がかりを探しに来た。入れてもらえるか」
学生1「……。どうしたもんかね」
学生2「ん?来客か?」
学生1「ああ。いいところに来た。この東洋人、アインを捜索しているらしい」
学生2「探偵かい?」
小次郎焦「ああ」
学生2「入ってもらったらどうだ。衛兵に見つかると厄介な立場みたいだぜ」
学生1「そうだな」
小次郎焦「(俺が思うのもなんだが、順応性よすぎだろう、この学生たち……)」
bgバレス研究室内部
学生1「アインに付き合ってる男がいるとは知らなかったぜ。男なんて興味ないって態度だったしな」
小次郎常「期待させて申し訳無いが、付き合っているわけじゃない」
学生1「なんだつまらん。ようやくアイツが男に興味を持ったかと期待したのに」
学生2「待て待て、付き合っているわけでなくても進んでいないというわけでもないだろ」
学生1「ふん……。なるほどね。少なくとも仕事でこんな危険を冒したわけじゃなかろうしな」
小次郎常「(恐るべきは、恋の都パリか……)」
学生1「それはそうと、あんたの目的はアインの捜索で間違いないんだな」
小次郎常「ああ。親族を人質に取られて脅迫され、いずこかへ姿を消した」
学生2「退役軍人どもめ、あの婆さんに手を出しやがったのか……」
小次郎常「知っているのか?」
学生2「時々研究室に来ていたよ。隠していたが、あれは祖母じゃなくて臣下だったね」
学生1「ははあ、なるほど。言われてみればそうだ」
小次郎常「退役軍人ども、ということは、奴らはここに来ていたんだな」
学生1「何度もな。主に会っていたのは教授だが、途中からアインも呼ばれるようになった」
学生1「アインの論文に目を付けたのは明らかさ。あれは確かに強烈だ」
学生2「どこまで知っているかわからないけど、基本的にこういう研究室は資金不足でね」
学生2「特にうちの研究室の研究は大規模系で金も場所も無いということが続いていた」
学生1「そこに、突然膨大な予算が確保された。色々考えるよな」
小次郎常「軍事予算、と見たか」
学生2「それ以外無い、というのがまともな推論だね」
小次郎常「君らが俺に協力的な理由は何だ。君らにとって今の状況は歓迎すべき内容のはず」
学生2「フランス人を甘く見ないでくれるかい、東洋人。僕たちはバスチーユを攻め落とした者の末裔なんだ」
学生1「話が飛びすぎてそれじゃ理解されないぜ。並の研究なら確かにそれも歓迎だった」
学生1「問題は、アインの研究の中身だ。アンタ、少しは聞いているかい」
小次郎常「エネルギー保存則の崩壊、と聞いた。あり得ないエネルギーが得られているとな」
学生1「結構。だが、質量保存とエネルギー保存は絶対だ。これが覆ったら俺らは科学者を辞めるね」
小次郎常「現象としては起きているんだろう?」
学生1「そう。そうなると何か、別のことが起きていると推察される。アインはそれも推測していた」
小次郎常「別の世界から来ている、と言ったか?」
学生1「おい……」
学生2「それを、アインから聞いたのかい?」
小次郎常「いや、直接聞いたわけじゃない。だが、アインが注目していたものを総合すれば……」
小次郎常「答はおのずと限られてくる。俺はこれでも日本の帝都から来たんだ」
学生1「なるほどな。そりゃ、現物を見てきたわけか」
学生2「帝都東京は、魔界に最も近い蒸気都市だ。アインはそう言っていたよ」
小次郎常「あいつの無茶な言動は最初から前提がそこにあったわけか」
小次郎常「この世界よりも高エネルギーな魔界から、こちらにエネルギーが流れ込んで来る……と」
学生1「アインの仮説はそうだった」
学生2「僕たちの追試実験もその説との間に齟齬がないんだ。困ったことに」
小次郎常「追試実験……?」
学生1「第二世代蒸気機関の臨界状態を観測するための実験炉くらいある」
学生2「それでは不足しているから、教授は退役軍人たちの話に乗ったんだけどね」
学生1「なんなら見てみるか?今丁度臨界観測の準備中だ」
小次郎焦「侵入した俺が言うのもなんだが、いいのか?ここは機密の塊と聞いたが」
学生2「君、どうも素人ではなさそうだよね。部外者の意見も聞きたいところだ」
学生1「そういうことだ」
bg実験炉
学生1「そこの線よりは近づくなよ。かなり高温になるんだ」
学生2「臨界状態まで2000ミリバール……。上々の仕上がりだね」
小次郎焦「既に内部は高温高圧の圧縮蒸気か」
学生1「そう。ここから一気に圧縮して、高エネルギー状態へ遷移させる」
学生2「ここまでの加熱と圧縮に使っているエネルギーが……えーと、6553kcalで……」
学生2「臨界状態を1秒維持できれば、経験則通りなら、気体の自由エネルギーは80000kcalになるよ」
小次郎焦「秒数が関係するのか?」
学生2「維持時間が長いとその分魔界から流れ込んで来るエネルギーが増えるんだ」
学生2「ただしエネルギーが増えすぎる分、爆発的に系を開放しようとするから長時間の維持は難しい」
小次郎焦「なるほど……」
学生2「あ、そこのサングラスして。かなりの光が出るから」
小次郎焦「む。わかった……」
学生1「最終圧縮いくぞ−」
sound蒸気噴出音
学生1「まて……!内部温度の上昇速度が……!」
学生2「……え?」
bg白転
sound鼓動音
小次郎焦「な……!?これ……は……」
sound爆発音
小次郎焦「この……大気……、まさか……!」
bg暗転
sound風切音
小次郎焦「……やはり、ここか……!」
bg亜空間
小次郎焦「飲み込まれたのは俺だけか……?あの二人が無事ならいいが……」
sound風切音
小次郎焦「どうするか……。ここでは俺も長くは保たん……」
小次郎焦「俺が飲み込まれた穴は……消えてしまったようだが……」
sound風切音
小次郎焦「蒸気が漏れるようなこの音……、ここから常に、落ち続けている、ということか」
小次郎焦「流れに乗ることができれば、戻れるかもしれんが……」
小次郎焦「並の蒸気機関が開く穴で通れるくらいなら、苦労はせんか……」
sound風切音
????「…………!」
小次郎焦「……?この声は……」
小次郎焦「いけるとしたら、そうだな。それ以外にはない……!」
sound風切音
bg白転
sound通過音
sound落雷音
bgカルマールの間
cgドレフィス
ドレフィス驚「何!!?」
バレス驚「……人間……!?」
アイン驚「小……次……郎……?」
小次郎常「どうやら、大当たりのようだな!」
ドレフィス驚「炉から現れるとは……貴様!魔界の者だな!!」
sound銃声
小次郎常「はっ!当たらずとも遠からじといったところだな!」
sound銃声
ドレフィス常「教授!侵入者を片付けるまで避難されよ!」
小次郎常「お前が例の退役軍人とかだな!アイン!俺の後ろから動くな!」
アイン驚「何が……一体何が起こっているの!?どうして、どうして貴方が実験炉から現れるの……!?」
小次郎常「お前の研究室の同僚はいい奴らだな。もっとも、この結果は俺にも予想外だったが」
アイン驚「……まさか、研究室の実験炉から魔界を通って来たの!?」
小次郎常「魔界ではないが、少なくとも高エネルギーの空間だったな」
バレス驚「なんだと!?人間があのエネルギー準位差を越境して、再度降下してきたというのか!?」
ドレフィス常「……どういうことかな。アレが、貴方の研究室から来たというのは世迷い言ではないと?」
バレス常「君……、うちの研究室の夜番は何人いたかね?」
小次郎常「ん?二人だったぞ。いろいろぼやきも聞かせてもらった」
バレス常「……どうやら、本当のようだ。信じがたいが、考えられない話ではない……」
バレス常「蒸気機関が魔界への扉を開くというのなら、その魔界を通ればこの地上を行き来できるということになる……」
ドレフィス常「それは、世界が変わるな。小僧、大人しく投降しろ。素直に話せば命は助けてやる」
小次郎常「愚直なまでに軍人だな。そこまでして覇権を握りたいか」
ドレフィス常「国を守るとはそういうことだ。貴様ごときにはわからんだろうがな」
小次郎常「失礼な奴だな。おそらく貴様と同じくらいにはわかっているさ」
ドレフィス常「ほう」
小次郎常「だが、それでも手を出してはならんものがあることを、貴様はまだ知らない……!」
ドレフィス怒「ほざくな、地獄を見てきたわけでもない探偵風情が!」
小次郎常「あいにく、探偵は本業じゃなくてな……!」
sound衝撃音
sound衝撃音
小次郎焦「ちいっ!やるじゃないか……どの部下よりいい反応してるぜ!」
ドレフィス怒「やはり、アジトにいた部下たちを一層したのは貴様か、明智小次郎!」
小次郎常「厳密に言えば、俺だけじゃないがな!」
sound衝撃音
sound衝撃音
小次郎常「(……ドレフィスの攻撃がほとんどダメージになっていない。俺の身体が活性化しているのか……)」
小次郎常「(ならば……今の内に決着を……)」
ドレフィス常「なるほど。明らかに戦い慣れておるわ。ここまでやるとは思わなかったぞ」
小次郎常「誉めて頂いてなんだが、その割にはずいぶんと余裕だな」
ドレフィス常「もちろん、貴様と違ってこちらには余力がある」
小次郎常「何?」
ドレフィス常「戦力にな」
小次郎焦「!」
sound風切音
sound金属音
小次郎焦「この攻撃……!姿を見せろ!ベルナデッド!」

ドレフィス驚「バカな、読みきりおっただと!?」
cgベルナデッド
ベルナデッド常「大佐。驚くほどのことではありません。この男なら」
ドレフィス常「確かに、お前が警戒していただけのことはあるようだな」
ベルナデッド常「早々に殺しておかなかった私の不手際です。この場は私に」
ドレフィス常「よかろう。そなたの罪を贖うに、魔界から来た男は丁度良かろう」
ベルナデッド常「ありがとうございます」
小次郎常「ずいぶんな自信だな。生きて顔を会わすことはないという予言は外れたわけだが」
ベルナデッド常「予言ではなく忠告だったのよ。わざわざこんなところまで来るとは愚かも極まるわ」
小次郎常「俺の妹を攫っておいて忠告とはずいぶん親切だな」
ベルナデッド常「貴方の妹も含めての忠告だったのだけど、でも、私の目が曇っていたことは認めるわ」
小次郎常「ほう、殊勝じゃないか」
ベルナデッド常「ええ、真に異常だったのは妹の方ではなく、貴方だったということを見抜けなかったのだから」
小次郎常「ミキは生きているだろうな」
ベルナデッド常「殺すつもりなら最初から攫っていないわ。安心して死んでいきなさい」
小次郎常「できはせんよ。何故だか知らないが、今のお前には迷いが見える」
ベルナデッド常「……、兄妹揃って」
小次郎常「やはりそうか。あいつらしい」
ベルナデッド常「出来るか出来ないか、その身で確かめなさい!」
cgクリア
小次郎常「また消えたか……!」
ベルナデッド常「スタンダールの邸宅でも、その気になれば貴方を殺すことはできたのよ」
ベルナデッド常「貴方の命など、私の掌の上で許されていたに過ぎないことを思い知りなさい」
小次郎常「そのおしゃべりが大失敗だな」
ベルナデッド常「喋りながら接近すると思うの?必殺の一撃を加えるときは足音さえ聞かせないわ」
小次郎常「先ほど最初の一撃で俺を仕留められなかっただろう。お前らしくもない」
ベルナデッド常「……。何がいいたいのかしら」
小次郎常「言ったろう。お前に俺はもう殺せない」
ベルナデッド常「見えない私に対して、そんな短剣一つで対抗するつもり?」
小次郎常「刀を手にした侍を舐めるな」
ベルナデッド常「っ……!?」
小次郎常「シュペングラーを殺した時のような殺気は無い。鋭さを失ったお前の気配ははっきりわかる」
小次郎常「足音を消したようだが……、お前がそこにいるとわかれば……」
sound疾風
小次郎常「捉えたぞ!」
cgベルナデッド
ベルナデッド驚「私の術を……破った!?」
小次郎常「ああ、しかと見えているぞ。一メートル少々の高さに浮かんでいるお前がな」
ベルナデッド驚「そんな……、どうして!?」
小次郎常「あいつの推測通りか。お前は人の頭に働きかけて、見えていないと錯覚させていただけだ」
小次郎常「心眼でひとたび捉えてしまえば、そんなまやかし、通用しない」
ベルナデッド驚「それなら……これはどう!?」
小次郎常「念動力で操る薔薇か……!」
sound金属衝撃音
sound金属衝撃音
sound金属衝撃音
小次郎常「シュペングラーやスタンダールの延髄を的確に貫いたのはこれか」
ベルナデッド驚「……!」
小次郎常「見えない状態で背後から繰り出せば一撃必殺だろうが、見えれば打ち落とせる」
ベルナデッド驚「……貴方は、一体……」
小次郎常「さて、な。本業が探偵でないのは確かだが、自分が何なのか俺自身にもわからない」
ベルナデッド常「……そう、それなら詩人らしく表現してあげるわ」
小次郎常「拝聴しよう」
ベルナデッド常「喩えるなら貴方は……」
soundたて続く銃声
小次郎驚「がっっっ!!!!」
ベルナデッド驚「ああっっ!!!」
アイン叫「小次郎!!」
小次郎驚「霊子封入弾による一斉射撃……、貴様ら……!」
cgドレフィスとディビジョン・ノワール
ドレフィス驚「いかな魔界の魔物といえ、虎の子の霊子封入弾をこれだけ撃ちこまれても死なんとは……!」
バレス常「効いておらぬわけではない……。しかし、なんという生命力だ」
ベルナデッド苦「あ……、たい……さ……?」
ドレフィス常「もはやお前にその男は殺せぬ。まさかアンジュ計画最後の一枚がこんな形で役立たずになるとは」
小次郎怒「貴様、ベルナデッドを足止めにしてこいつごと俺を撃ったな……!」
ドレフィス常「よくも儂の作品を骨抜きにしてくれたものよ。だが、その咎人形に情を持ったのが貴様の失敗だ」
小次郎怒「咎人形……?」
ベルナデッド苦「大佐……、私の、罪……は」
ドレフィス常「案ずるな。その傷がお前の罪を贖うだろう。もはやそやつを殺せぬお前だが、最後の役には立ったぞ」
ベルナデッド笑「そう……ですか、よかった……」
小次郎怒「何を言っている!?良かったわけがあるか……ベルナデッド!」
ベルナデッド笑「私の罪は、贖われた……。後は……」
ifベルナデッドの信頼度が一定未満
ベルナデッド笑「……言い忘れてた」
ベルナデッド笑「貴方は……、龍だわ。まるで、海から上がってきた、巨大な獣……」
ベルナデッド眠「……」
小次郎怒「貴様……。何をやったら、こいつをここまで傀儡のようにできるのだ……」
ドレフィス常「そやつは元より儂がフランスのために作り上げたもの。本来の意味で人間と呼べるかもわからん」
ドレフィス常「そうだな、傀儡と呼ぶのが適切か。役に立たなければ、機密のため処分するしかない」
小次郎怒「戦で死ぬのは軍人だけでいい。あんな少女を殺してなんとする」
ドレフィス常「全ては我が祖国のため。仏普戦争のような恥辱を二度と繰り返してはならん」
ドレフィス常「そのためならば、何であれ利用する。それが儂の使命であり信念だ」
小次郎怒「ならば俺は、この人生に賭けて貴様を叩き伏せるのみ……!もはや封入弾もあるまい!」
ドレフィス常「そうだな。どうやら今の我らでは貴様を殺すのは難しいようだ」
小次郎怒「分かっているなら、速やかに終わらせてやる!」
ドレフィス常「使いたくは無かったが、この奥の手しかなさそうだ。教授、実験はスペアで行いますぞ」
バレス常「仕方があるまい。あの少女の適性はわからんが霊力は十分であったな」
小次郎焦「貴様……何を……!」
ドレフィス叫「パピヨン計画の最高傑作、エルザよ!今こそその力を見せよ!」
小次郎驚「何!!」
soundガラスの割れる音
sound風切り音
cgエルザ(蝶羽はオーラ)
小次郎驚「エル……ザ……?」
アイン驚「そんな……。ミキさんはエルザの代わりになるほどの力があるというの……!?」
ドレフィス常「蒸気機関実験は貴様の妹で続けるとしよう。今は貴様を排除するのみ……!」
エルザ狂「−−−−−!」
小次郎焦「……意識がないのか……!トランス状態で、俺を仕留める気か……!」
ドレフィス常「その傷ではエルザの攻撃に耐えられまい」
エルザ狂「−−−−−−−−−−−!」
小次郎焦「エルザ!応えろエルザああああああ!」
sound貫通音
アイン驚「いやああああああああああああああ!」
小次郎苦「ぐ……、エル……、ミキ……」
ドレフィス常「滅びるがよい魔物よ」
小次郎苦「アイ……、すま……ん……」
sound倒れる音
bg暗転
badend



ifベルナデッドの信頼度が一定以上
sound治癒音
ドレフィス驚「何!!?バカな!お前にそれは出来なかったはず!!」
小次郎驚「俺の傷が治って……、これは……治癒能力?」
ベルナデッド笑「初めて、出来た……。オリジナルにできて、私に出来なかったこと……」
ベルナデッド笑「どれほど……能力を使いたいと思っていてもできなかったのに……」
ベルナデッド笑「こんな、簡単なことだったなんて……、ただ、貴方に治って欲しいと思うだけ……」
小次郎焦「よせ……無理に喋るな……!」
ベルナデッド笑「……言い忘れてた」
ベルナデッド笑「貴方は……、龍だわ。まるで、海から上がってきた、巨大な獣……それなのに、優しい……」
ベルナデッド眠「……」
小次郎苦「……ベルナデッド……」
ドレフィス驚「貴様、一体何をした……!?どんな薬を投与しても、ベルナデッドには出来なかったことが……」
小次郎苦「わからないのか。わからないのだろうな……。わかっていたらこいつはこんな風にはならなかった……」
ドレフィス焦「何がわかっていないというのだ……」
小次郎常「この力は、己の命を削って為す願いそのものだ。単なる能力だと思っていたのか」
ドレフィス焦「願い……だと」
小次郎常「貴様はベルナデッドを操っていただけだ。こいつの思いも願いも、何も見ていなかったのだろう」
ドレフィス常「そやつは元より儂がフランスのために作り上げたもの。本来の意味で人間と呼べるかもわからん」
ドレフィス常「そうだな、傀儡と呼ぶのが適切か。役に立たなければ、機密のため処分するしかない」
小次郎怒「戦で死ぬのは軍人だけでいい。こんな少女を殺してなんとする」
ドレフィス常「全ては我が祖国のため。仏普戦争のような恥辱を二度と繰り返してはならん」
ドレフィス常「そのためならば、何であれ利用する。それが儂の使命であり信念だ」
小次郎怒「ならば俺は、この人生に賭けて貴様を叩き伏せるのみ……!もはや封入弾もあるまい!」
ドレフィス焦「切り札を使ってまで負わせた傷を全快させるとは……こうなったらやむを得ん!」
バレス常「仕方があるまい。あの少女でもおそらく代用は効くであろう」
小次郎常「貴様ら……何を……!」
ドレフィス叫「パピヨン計画の最高傑作、エルザよ!今こそその力を見せよ!」
小次郎驚「何!!」
soundガラスの割れる音
sound風切り音
cgエルザ(蝶羽はオーラ)
小次郎驚「エル……ザ……?」
アイン驚「そんな……。ミキさんはエルザの代わりになるほどの力があるというの……!?」
ドレフィス常「蒸気機関実験は貴様の妹で続けるとしよう。今は貴様を排除するのみ……!」
エルザ狂「−−−−−!」
小次郎焦「……意識がないのか……!トランス状態で、俺を仕留める気か……!」
小次郎常「だが、この命、また預かった分が増えた。易々とくれてやるわけにはいかん……!」
小次郎常「どうしていつも、魔に堕ちようとする奴は翼を持つことになるのかな」
小次郎常「その翼を、消し飛ばす。お前は妹の掛け替えのない友だ。必ず救ってやるぞ!」
エルザ狂「……!」
ドレフィス焦「日本の、カタナか……!」
小次郎常「二剣二刀ではないがこの短刀も曰く付きでな。一人くらいならばなんとかしてやる!」
ドレフィス焦「エルザ!そやつは危険すぎる!全力で仕留めろ!」
エルザ狂「−−−−」
sound風切り音
小次郎叫「はあああああああああっっっ!」
sound切断音
エルザ狂「!!」
ドレフィス驚「霊力の翼を……斬りおった……!?」
小次郎常「魔の力が集中するそこは半ば実体と化している。あのとき、これができればな……」
エルザ狂「あ……」
小次郎常「戻って来い、エルザ」
soundガラスの割れる音
エルザ常「……おにい……さん……?」
小次郎常「ああ。よく戻った。今は休め……」
エルザ笑「ええ……。なんだか……、疲れちゃった……」
ドレフィス驚「そんな……、バカな……」
小次郎常「万策尽きたな。それだけの人数がいたところで、今の俺には勝てんぞ」
ドレフィス苦「儂らはよい。だが、この機関をどうするつもりだ」
小次郎常「残しておくと妹が狙われ続けることになりそうだからな」
小次郎常「アインや学生たちには悪いが、壊させて貰う」
ドレフィス苦「そうはさせん。儂の望みが叶わずとも、せめて我が国の未来への灯火は消させぬ……」
小次郎常「何?」
ドレフィス苦「こういう、ことだ……!」
sound跳躍音
小次郎常「蒸気機関によじ登って……何を」
アイン叫「いけない!大佐を止めて!貴方が飛び込んできた穴に飛び込むつもりよ!」
小次郎驚「何!」
ドレフィス苦「遅い。失敗した者は処断されるが軍の定め。せめてこの命を実験に供しよう!」
sound風切り音
sound破裂音
黒服「大佐あああ!」
黒服「大佐!我らもお供致します!」
小次郎叫「よせ!!」
sound破裂音
sound破裂音
sound破裂音
小次郎苦「バカ……野郎ども……が……。どうして軍人はいつも同じ事を繰り返す……」
アイン叫「小次郎!気をつけて!魔界への穴が拡大してる!!」
小次郎焦「エルザの霊力から切り離されて、閉じるじゃないのか!?」
アイン叫「大佐はそれを自分の生命力でこじ開けたのよ!活性化エネルギーの壁を越えて穴が安定しかかってるわ!」
小次郎焦「となると……、やはり蒸気機関そのものを破壊するしかないな。いいな」
アイン焦「仕方が無いわ……。無念だけど、これをそのままにしておくわけにはいかない」
バレス常「アイン君、落ち着きたまえ」
cgバレス
アイン焦「教授!落ち着いている場合ではありません!止めないと!」
バレス常「何を為すべきかを考えたまえ。ドレフィス君は命がけで魔界への穴を維持してくれたのだよ」
アイン焦「……教授?」
バレス常「軍人と学者と、立場は違えど、あの生き様を見せられて、後に引けるとでも思うか」
小次郎焦「何……?」
バレス常「動くな、探偵よ。こちらも殺すことはできないが、妹の顔に傷をつけたくはあるまい」
cgミキ(眠り)
小次郎驚「ミキ!!」
アイン驚「教授!正気ですか!」
バレス常「正気だとも。いや、元より正気だったのかは疑わしいな」
バレス常「君の仮説を聴いてから、魔界がいかなるものか、ずっと気になっていた……」
バレス常「この世界のエネルギー需要を全て賄えるほどの高エネルギー世界にして、魔物の故郷」
バレス常「解き明かさねばと願わずにはいられんよ。それが科学者の業だとわかっていてもな」
バレス叫「まして、ドレフィス君から託された今、何を躊躇うものか!」
アイン叫「小次郎!今すぐ機関を破壊して!教授は妹さんで再起動させるつもりよ!」
小次郎叫「!!させるかあああ!」
sound銃声
sound銃声
小次郎驚「弾かれた……!?」
バレス常「ドレフィス君が維持した穴から機関に流れ込んで来るエネルギーは、見えないが膨大だぞ」
バレス常「遠距離から破壊できるものではない。そして、これで定常状態へ移行する……!」
ミキ眠「……」
バレス常「図らずも、降魔実験の再燃だよ。さあ、偉大なる過去の遺産にして未来を見せてくれ……」
小次郎叫「それだけは……断じてさせるかああああ!!」
バレス常「遅い」
sound爆風音
sound風切音
アイン驚「発動……した?しかもこの力は……」
バレス常「おお……なんという力だ。素晴らしい力だ……!」
バレス常「さすがにドレフィス君の目に狂いは無かった。この少女はエルザをも凌駕する力を持っておる……」
小次郎苦「そん……な……、ミキには、そんな力は無かった……はず……」
バレス常「休眠状態にあった霊力が目覚める場合もある。この子の場合はいささか違うようだが……」
バレス常「いずれにせよ、既に臨界突破した。リボルバーカノンでも無ければもはやこの霊力風は突破できまい」
小次郎苦「ミキイイイイイ!!」
エルザ苦「ミキを……、目覚めさせればいい、だけよね」
小次郎驚「エルザ!?」
エルザ苦「お兄さん……、私の手を取って、ミキに……呼びかけて……。中継する……」
小次郎焦「中継?」
エルザ苦「直接、ミキの心の中に、呼びかけてみる……」
小次郎焦「できるのか?」
エルザ笑「いいえ。やるのよ……」
小次郎笑「わかった。頼む」
エルザ笑「私……ね、妹が、いたの……。もう、ほとんど何も覚えていないけど……」
エルザ笑「ただ、あの子を救えなかったことだけは、思い出した……」
エルザ笑「ミキ……、私は、もう、繰り返さないから……」
小次郎叫「ミキ……!帰ってこいミキ!もうあとは、お前が帰ってくるだけだ!」
エルザ叫「ミキ……!起きなさい!出番よ!」
小次郎笑「……!」
sound風切り音
小次郎笑「まったく……、お前はこの地でよい友を得たな……」
小次郎笑「もうお前は俺がいなくても歩いて行ける……」
小次郎笑「これが俺がお前を守ってやれる最後だ」
小次郎笑「起きろミキ!これが、お前の長い夜の終わりだ!」
ミキ眠「……!」
アイン常「魔界からの風が……、止まった!」
バレス驚「トランス状態から……そんなバカな方法で……!」
sound駆け足
アイン悲「教授……、さよならです。お世話になりました……」
バレス驚「アイン君……!よせ、準臨界状態で機関から霊力者を外せば……」
アイン悲「ええ……、こうなりますね」
バレス叫「やめるのだああああああああ!」
bg白転
sound爆発音
bg崩壊した霊子櫓
小次郎叫「アイン!ミキ!」
アイン笑「……妹さんより先に呼んでくれて嬉しいわ」
小次郎驚「無事か!」
アイン笑「無事……ではないけど、なんとか生きてるわ。妹さんはしっかり守ったわよ」
小次郎常「無茶をする……。ミキを引き離せば爆発するとわかっていたな」
アイン笑「ええ。準臨界状態というのは不安定極まりないからね」
アイン笑「もう破壊しなければならない状態なのはわかっていたから、一石二鳥よ」
小次郎常「あの爆発からミキをよく守れたな。並の鍛え方じゃない」
アイン笑「わずか数日で借りばかり積み上がってしまったから、少しは返せたかしら?」
小次郎常「…………、いいだろう。十分に、返してもらった。余計な詮索はすまい」
アイン笑「まったく、怖いわよ。あなたは」
エルザ笑「あー……、お兄さんが浮気してるって、ミキに言っちゃおうかな……」
小次郎常「おいエルザ、無理はするな」
エルザ笑「もー……、そこは少しは慌てふためいてくれないと……」
エルザ常「大丈夫、とは言い難いけどね……。でも、とにかくミキを目覚めさせないと」
エルザ常「大方、私が連れて来られたところに来るために、わざと捕まったんだろうけどさ……この子は」
小次郎常「そうだな……。こいつは、そういう奴だ」
エルザ笑「さて。……お兄さん、ミキの名誉のためにちょーっとだけあっちを向いておいてね」
小次郎常「は?」
小次郎驚「え……おい……エルザ!待て……!あーーーーーーーーーーーー!」
エルザ笑「うるさいなあもう。はい、ミキ、起きて」
小次郎焦「いやそのお前あれがどうしてそのなんだつまり」
エルザ笑「手っ取り早く霊力を口移ししただけよ」
ミキ眠「……」
ミキ常「あ……。エルザ……、お兄ちゃん」
小次郎笑「ミキ!……よかった。よく戻ってきた」
ミキ常「うん、聞こえていたよ。お兄ちゃんの声と、エルザの声」
小次郎笑「まったく……、いつもいつも、無茶をしやがって……」
小次郎笑「だが、もう大丈夫だな。ミキ……、これであの約束も終わった……」
ミキ常「………………お兄ちゃん」
小次郎常「さて、あとはアインの祖母を捜して帰るだけ……ん?」
小次郎常「……アイン」
アイン悲「……教授」
バレス眠「…………」
小次郎常「(……即死か。爆発の寸前に蒸気機関を止めようとしたのだから無理もないが……)」
小次郎常「なぜ、教授は身を挺してまでこれを止めようとした。おそらく止められないことはわかっていたはずだ」
アイン常「……教授はこの二年、不遇だったわ」
小次郎常「二年……?」
アイン常「る最高位の蒸気科学者だというのに、超法規的国家機関の圧力によって冷遇されていたの」
小次郎常「(……賢人機関が?)」
小次郎常「何故だ。奴らはミカサしかり、蒸気科学を推進する立場のはず……」
アイン常「私も、一度教授が酔ったときに零した言葉を聞いただけだけど」
アイン常「なんでも、蒸気科学の深淵を覗いた者は帰って来れない、と言われたそうよ」小次郎常「何?」
アイン焦「霊子核機関の端緒を担った日本の工学者は存在一つ残さず消失したと聞いているわ」
アイン焦「そして、貴方にもみせたあの本の著者……山崎真之介はね……」
アイン焦「魔人、葵叉丹と名乗って、帝都を破壊しようとした、という噂があるのよ。
小次郎驚「……葵叉丹!アイツが……!!!」
アイン常「……そう、根も葉もない噂じゃなかったのね」
小次郎常「……ああ。そうか……、あれが、アイツが、あのお方にな……」
アイン常「結局、彼らの危惧通りになってしまったけど……私は諦めないわ」
アイン常「この力は、世界を正すことができると信じている……」
アイン常「少なくとも、私を拾い上げて下さったころの教授はそう信じていたわ……」
小次郎常「そうか……。ならば、その道に間違いはあるまい……」
bg廊下
小次郎常「こちらでいいのか?」
ミキ常「うん。私があの子……ベルに連れて来られてしばらくはこの辺りの部屋に入れられてたから」
ミキ常「そのときに、どこかの部屋におばあちゃんが倒れてたのを見たの」
エルザ笑「よっ、さすが名探偵の妹だね」
ミキ常「エルザ……、フラフラなのに笑いをとろうとしないで……」
アイン焦「フォン!聞こえますか!返事をして!」
フォン驚「姫様!?ご無事でしたか!」
アイン笑「フォン!生きてるのね!すぐ鍵を壊すわ」
小次郎常「少し下がってろ。鍵を撃ち抜く」
sound銃声

小次郎常「よし」
アイン焦「フォン!」
フォン笑「ああ……姫様、よくぞ、よくぞご無事で……」
アイン悲「ひどい傷が……」
フォン笑「痩せても枯れても、けして奴らに屈したりは致しませんでしたぞ……」
アイン悲「あなたは……」
フォン常「姫様、そちらの御仁があの日本人探偵ですか」
アイン常「ええ。彼と仲間のおかげで、奴らは殲滅したわ。帰りましょう」
フォン驚「なんと、奴らを殲滅とは……。さすがは日本のサムライ、恐れ入りました」

小次郎常「(この態度……、ただの奴隷上がりというわけではなさそうだな……)」
フォン常「いかがされましたか、明智殿」
小次郎常「いや……、話は後にしよう。どうやら先ほどの爆発で岩盤が崩壊しかかっているようなのでな」
エルザ常「ちょっとちょっと……、それって私たちみんな危ないってことじゃない……」
小次郎常「かすかな鳴動が聞こえないか?急いでこの地下から脱出するぞ。乗れ」
フォン常「乗れ……と言われましても……」
小次郎常「そのケガした身体で走れるか。背負って走るくらいのことはできる」
フォン常「しかし、大恩人殿にそのような……」
アイン常「フォン、命令です。大恩人ならばこそ、小次郎の指示に従いなさい」
フォン常「……心得ました。御恩頂戴いたしますぞ」
小次郎常「エルザ、ミキ、いけるな」
エルザ常「ええ。任してちょうだい」
ミキ常「いけるわ、お兄ちゃん」
アイン常「地上への道はこっちよ、ついてきて!」
bg暗転
sound足音
bg夜明けのシテ島
小次郎常「ふう……、なんとか脱出できたな」
エルザ常「ノートルダム寺院が損壊してる……」
小次郎常「むしろ、元の形を保持していることの方が驚きだぞ。地下であれだけやらかしたんだ」
アイン常「ひょっとして……、とんでもないことになってしまったのかしら」
小次郎常「何、責任は依頼人にとってもらうさ。鉄壁の迫水ならなんとでもするだろう」
カミュ常「そうか、やはり君を引きずり込んだのはあのサコミズだったか」
小次郎驚「!!」
cgカミュ
小次郎常「……新聞屋か。軍用無線でも受信したのか、ずいぶんと動きが早いじゃないか」
カミュ常「それはこちらの台詞だよ。君はどういう魔術を使ったんだい」
カミュ常「軍と華撃団が揃って大間違いなところへ突っ込もうとしているのをなんとかこちらに向けたのに……」
カミュ常「ようやく準備が整ったと思ったら、ディビジョン・ノワールは壊滅していたときたもんだ」
小次郎常「なるほど。大方、パピヨン孤児院にでも攻め入ろうとしていたか」
カミュ常「説明の手間が省けるよ。さて、今度はこちらの仕事なんだけど、インタビューしてもいいかな」
ミキ驚「お兄ちゃん!」
エルザ驚「!!」
アイン驚「!!」
小次郎常「お前のインタビューはペンの代わりに拳銃を突きつけるのが流儀なのか」
カミュ常「少しは顔色を変えて欲しいね。この方が口が滑らかになってくれることも多いんだよ」
小次郎常「で、愛と正義の使者が何を聞きたいんだ。察するところどうやらお前が黒幕か」
カミュ常「そんなに大それた存在じゃないよ。シュペングラーを殺された時点で僕らは防戦一方だったからね」
小次郎常「赤城三郎を脅していたのはお前というわけだ。色々腑に落ちたぜ」

カミュ常「脅していたなんて人聞きが悪いね。彼には正当な対価を身体で払って貰っただけだよ」
小次郎常「ずいぶんぺらぺら喋ってくれるじゃないか。それで何を聞きたい?」
カミュ常「何があったのか、生存者が生きている内に証言をね」
小次郎常「地下で爆発があり、死者行方不明者は10名以上。落盤の恐れがあるため近付けん。こんなところか」
カミュ常「そんな事が聞きたいんじゃないんだよ」
カミュ常「その地下にあったはずの、霊子核機関はどうした?」
小次郎常「そんなものは無かったな」
カミュ常「……なるほど、そんなものは、か。では、質問を変えよう。バレス教授はどこへ行った?」
小次郎常「死んだよ」
カミュ常「君が殺したということはないのかい?」
小次郎常「直接には殺していないな。原因ではあるだろうが」
カミュ常「素直に答えてくれて嬉しいよ。核心をなかなか喋ってくれないけどね」


小次郎常「知らんな」
カミュ笑「分かっているくせに、とぼけないでくれるかな。ドレフィスと、ノワール・フルーレはどうした?」
小次郎常「二人揃って俺たちとは別ルートで脱出したはずだが、奴らのアジトだけに行き先はわからん」
エルザ常「……!?」
カミュ常「ちっ……、どこまで嘘を入れ込んだんだい?バレス教授は本当に死んだのかい?」
小次郎常「最初から最後まで正直に答えているぞ」
カミュ常「嘘つきは自分を嘘つきと言わないからね」
小次郎常「どちらにしてもお前にはこの場でそれを証明する手段はない」
カミュ常「この距離で僕が君の心臓を外すと思われているとは心外だね」
小次郎常「そいつは困るな。借り物なんだ」
ミキ常「……」
カミュ常「仕方がない。いずれにしてもアイン女史を押さえておいた方がよさそうだ」
小次郎常「教授が死んでいた場合、機関を再現できるのはアインだけということか」
カミュ常「……、尋問しているのは僕だよ」
小次郎常「シュペングラーの一党ということは、ドイツへ連れて行く気か」
カミュ常「君の能力は惜しいが、生かしておくのは危険すぎることはよくわかったよ」
小次郎常「やれやれ、間に合ったか」
カミュ常「?」
sound矢音
sound金属音
カミュ驚「銃が……!これは……日本の矢……!?」
小次郎常「華撃団を呼んだと言ったのは貴様だろう!対岸から花火嬢が位置取りをするまで時間を稼いでいたんだよ!」
カミュ怒「おの……れえええ!!」
sound打撃音
sound打撃音
小次郎叫「再建などさせんぞ!二度と霊子櫓など作らせてなるものか!」
カミュ叫「愚かな!君は世界が欲しいと思ったことはないのか!」
sound打撃音
sound打撃音
小次郎叫「かつてそれを望んで、全てを失ったお方を見て来たからな!」
カミュ叫「力が足りなかっただけだ!フランスとドイツの血を引く僕ならば!」
小次郎叫「貴様ごときが、あのお方に勝るとでも思ったかあああああ!」
sound打撃音
カミュ驚「が…………っ!」
sound水面落下音
小次郎常「…………止めを差しておくべきだったかもしれんが……」
小次郎常「これで、全て終わったか……」
bg暗転
bg夜明けのシテ島
cgエリカ
エリカ笑「ミキさあああん!エルザさあああん!無事でよかったです!!」
ミキ驚「え?」
エルザ驚「きゃあああ!」
sound衝突音
小次郎常「……………………いや、こうなるんじゃないかとは思ったが」
ミキ常「だったら止めてよ、お兄ちゃん……」
エルザ常「エリカさんの愛が痛いわ……」
エリカ笑「えへへへ……」
cgグリシーヌ
グリシーヌ笑「見事だ、明智小次郎。エルザもミキも見事に救出してくれるとはさすがは日本のサムライよな」
小次郎常「身に余る称賛、痛み入る。最後は花火嬢にお助け頂かねば危なかったが」
cg花火
小次郎常「あの距離がありながら一射でカミュの拳銃を落とすとは尋常な腕ではない。お見事でした」
花火笑「お役に立てたようで何よりです。ぽっ……」
cgロベリア
ロベリア常「仲良しこよしはいい。結局何があったのか報告してもらおうか」
小次郎常「ディビジョン・ノワールは、首領のドレフィスもノワール・フルーレも含めて全滅した」
小次郎常「霊子核機関に類似する機関の研究をしていたバレス教授も死亡した」
アイン悲「…………」
ロベリア常「ふん……。一件落着というところか。新聞屋が死んでさえいればな」
小次郎常「不手際だったか?」
ロベリア常「まあいい、そいつはうちの極悪コンビがなんとかするだろう」
cgコクリコ
コクリコ常「はいはい、立ち話はそこまでだよ!フォンさんのケガもひどいんだから」
フォン笑「コクリコちゃん……、やっぱりあなたは……」
コクリコ笑「うん、ごめんね……。ボクがこういう立場だってのは秘密なんだ」
cgグリシーヌ
グリシーヌ笑「うむ、そうだな。出番を丸ごと小次郎に取られてしまったが、ともかく凱旋だ」
cgエリカ
エリカ笑「その前に、あれをやっておきませんか」
ロベリア常「アタシは嫌だね。今回は働いていないんだから付き合う義理はない」
コクリコ笑「またまた−。しっかりコジローとコンビ組んで戦ってたくせに」
ロベリア常「うるさい」
小次郎常「……何が始まるんだ?」
エリカ笑「さー、ミキさんもエルザさんも一緒に」
???「勝利のポーズ、決めっ」
bg暗転

bgシャノワール貴賓室
cg迫水常
迫水常「改めて自己紹介しよう。巴里華撃団副司令、迫水典通だ」
グラン・マ常「そしてあたしが、巴里華撃団司令、イザベル・ライラック……まあ、グラン・マでいいよ」
小次郎常「道理で、日本大使館からの依頼に、シャノワールの面々が協力的だったわけだ」
迫水常「秘書から君の動きは逐一聞いていたよ。ただ、私が表に出ると正体を見抜かれると思ったのでね」
小次郎常「もう秘密にしておかなくてもいいのか?」
迫水常「途中から薄々見抜いていたんだろう」
小次郎常「コクリコやロベリアに対するより子の態度を見ればな」
迫水常「うちの秘書は優秀なんだが、君にかかっては形無しだったようだ」
小次郎常「そうでもない。なかなか恐ろしかったぜ」
迫水常「うむ、それについては心から同意しよう」
グラン・マ常「それに明かさなければならなくなったからさ。迫水はともかく、あたしはね」
小次郎常「…………。あいつを帝国華撃団に入れさせないために、巴里行きを認めたんだがな」
グラン・マ常「帝都にいた頃からあれだけの霊力はあったのかい?」
小次郎常「昔はあれほどではなかった……。ただ、霊力の兆候らしいものが見えたのでな」


以下、連載予定。

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