アインシナリオ・五日目第一ルート




selectベルナデッドの居場所を探す
小次郎常「意図的なのかどうか、正体を見せたからには、アイツの居所を探すしかないか」
メル常「アイツ、って、ベルナデッド・シモンズのことですか?」
小次郎常「ああ。アイツは詩人としてはそれなりに有名なんだろう」
メル常「ええ。確かに有名ですが、あまりにも謎が多いということでも有名です」
小次郎常「どれくらい謎が多いんだ」
メル常「名前と顔以外の全てが謎だと言われています」
小次郎常「…………。表向きの所在地などもわからないのか」
メル常「社交界で何度となく噂になりましたが、誰も居所を突き止めた者はいないそうです」
メル常「普段公園で目撃されることはあるのに、どんな尾行の名手でも追いかけられなかったとか」
小次郎常「それはそうだろうな。姿を消せるのなら尾行のしようがない」
小次郎常「詩集の奥付……にまさか住所を書いているわけもないか」
小次郎常「だが、ドレフィスの一党だということは……」
小次郎常「見つからないのも道理か。おそらくアイツは軍の施設に隔離されていたんだ」
メル驚「隔離……ですか?」
小次郎常「シュペングラーとスタンダール暗殺、ミキの誘拐と、アイツは事実上切り札だ」
小次郎常「任務時に逃走されないようにある程度自由を認めていたのかもしれんが……」
小次郎常「普段囲われている場所は、おそらく軍の、いや、ドレフィスの直轄地のはずだ」
メル常「確かに……、透明になれる暗殺者なんて存在を軽々しく扱えるとは思えませんね」
シー常「そうよねぇ。扱いを一つ間違えたらどこにでも逃げられちゃいそうだし」
小次郎常「こうなると軍の関係者に当たるしか無いわけだが……そんなツテは無いしな」
メル常「いえ……、あります」
cgメル
シー驚「ちょっと!メル!?」
小次郎驚「何?」
メル常「必要とあれば、軍の関係者に話を通すことは可能です」
シー焦「メル……、それは」
小次郎常「必要とあれば、か」
メル常「はい」
小次郎常「……お頼み申し上げる」
メル常「ウイ。明日の昼までに話をまとめます。正午ごろにはアパートに知らせを入れます」
メル常「シー。そういうことになったから、オーナーには今夜お休みするとお伝えして」
シー常「……まったく、そういうときの無謀さは昔と変わっていないんだから……」
メル常「それでは明智さん。後ほど、必ず」
cgクリア
小次郎常「メル嬢は……」
シー常「…………」
小次郎常「済まない。君の友人につらいことをさせるようだ」
シー常「それは筋違いですよぅ、明智さん」
シー常「メルは、私たちシャノワールの仲間のために、自分のわだかまりを捨てる覚悟をしたんです」
シー常「ですからぁ、謝られる筋合いはありません」
シー常「それでももし、侍である貴方が気に病むのでしたら……」
シー常「エルザとミキを、必ず助け出して下さい。それが一番の礼ですよぉ」
小次郎常「心得た。必ずだ」
bg夜の街
小次郎常「さて……、俺もできるだけのことをしなければな」
小次郎常「念のため、エビヤンには言っておくか」
小次郎常「万が一、何らかの狙いで開放されるかもしれんしな」
bg警察署
cgエビヤン
エビヤン常「なんだと!この巴里で白昼堂々婦女子を誘拐とはふざけたことを!」
小次郎常「そんなわけだから、東洋人の少女が見つかったら俺のアパートに連絡を頼む」
エビヤン常「……わかった。部下たちには伝えておく」
エビヤン常「済まない、明智くん。まさかこんなことに巻き込んでしまうとは……」
小次郎常「あんたが巻き込んだんじゃなくて、敵さんが勝手に巻き込んだんだから気に病むな」
エビヤン常「うむ……、しかし、なんとも無念だ」
エビヤン常「肝心の事件には我らは動けぬだけでなく、こうして第二第三の事件を見逃すことになるとは」
小次郎常「奴らも焦っているのだと思うさ。こちらはやるだけやってみる」
エビヤン常「頼む……」
cgクリア
bg警察署外
bg日本大使館
小次郎常「というわけで、赤城三郎も尋問できればいいんだが……」
より子常「残念ながらまだ無理です。生きているのが不思議な状態ですから」
小次郎常「尋問する以前の状態か……」
より子常「はい。尋問することに躊躇はありませんがそもそも喋れないでしょう」
より子常「しかし、彼のような薬漬けの狂人が、どうして敵のアジトを突き止めることができたのでしょう?」
小次郎常「……突き止めたんじゃないだろうな」
より子常「誘導されたと?シュペングラーは死んだのでしょう」
小次郎常「結局、その薬はシュペングラーのアジトから消えたままだ」
小次郎常「シュペングラーの腹心の部下あたりはまだ残っているはず」
小次郎常「……そうだな。ドレフィスたちと対立していた組織ならば手がかりを知っているかもしれん」
小次郎常「メルからの報告が正午ごろに来るから、明日は朝から残党の捜索だな」
より子常「わかりました。今話を伺いましたので明日の朝はご自由になさって下さい」
小次郎常「……間に合うか。間に合わさねばならんがな……」
bg暗転
bg下町
小次郎常「……ここが赤城三郎の下宿か」
小次郎常「(売れなさそうな画家の溜まり場だな。薬の売りつけ先には困らないか)」
bg赤城三郎下宿扉
小次郎常「……錠前がこじ開けられている?鍵を借りてくる意味がなかったか」
小次郎常「となると、ここも望み薄か」
bg赤城三郎下宿
小次郎常「やれやれ、やはり証拠隠滅された後か」
小次郎常「めぼしい書類はあらかたかっさらったようだが……」
小次郎常「放火して焼き払わないあたりは詰めが甘いな。日本語が全て読めるわけではないだろうに」
小次郎常「手紙の下書きくらいでも残っていればいいが……」
小次郎常「この封筒は……、差出人、大河双葉?日本からの手紙か。これは違うな」
小次郎常「ドイツ語かフランス語の手紙は見あたらず、か」
小次郎常「あとは……、日記は無いかな」
小次郎常「……あった。わざわざ絵筆で縦書きとは凝った奴だ」
小次郎常「ふむ、最初はまともだが……」
小次郎常「……」
小次郎常「この日か。シュペングラーに遭遇したのは本当に偶然のようだな」
小次郎常「売る商品が届いた、か。堂々と郵便で麻薬を送るな」
小次郎常「……だんだん狂ってきているな」
小次郎常「双葉という人物への妄執と、一郎という人物への敵対心がアイツを狂わせた元凶か」
小次郎常「親戚に優秀なのがいると常人は苦労するのだろうな」
小次郎常「色々出かけてはいる……。商品は送ってくるとしても金を渡す必要があるはずだ」
小次郎常「送り先が……わからないか」
小次郎常「……?なんだこれは?新聞社に、寄付?」
小次郎常「後でこの新聞社に当たってみるか」
小次郎常「他に使えそうな書類は……、これは美大の願書か。違うな」
小次郎常「……この描きかけの絵の女性が、双葉、か?せめて理想の姿くらい笑わせてやればいいものを」
bg下町
小次郎常「(まだ正午まで時間がある。少しでも多く情報を掻き集めねば)」
小次郎常「(関係者が出入りしていないか、近所の奴らに聞けないか)」
小次郎常「おい、そこの部屋の奴について聞きたいんだが、いいか」
画家「…………あ?」
小次郎常「そこの部屋に東洋人が居ただろう。そいつについて聞きたいんだが」
画家「……東洋人……、サブロー……、よこせ、薬をよこせえええええ!」
小次郎驚「ちっ!こいつも既に使用済みか!」
sound衝撃音
画家「がっ……!!」
小次郎焦「しまった。反射的に手が出てしまった」
画家「あ……が……」
小次郎驚「何……!?身体が灰のように崩れて……」
画家「…………」
小次郎驚「……これが、あの薬を使った者の末路か。済まぬ……」
bg暗転
bg下町
小次郎常「結局、このあたりは全滅状態か……」
小次郎常「そういえばあの薬の素性はわからないままだな」
小次郎常「手がかりになりそうだったのは新聞社に行っていたということくらいか……」
小次郎常「メル嬢の手配次第ではそちらも当たらねばならんか……」
小次郎常「そろそろ正午だな」
bgアパート
cgメル
メル悲「申し訳ございません、明智さん。連絡を取ることは出来たのですが……」
メル悲「どうしても今日の夕方にならないとお会いすることはできないそうです」
小次郎焦「(夕方……か。間に合うかどうか……。いや、仕方あるまい)」
小次郎常「そうか。軍の関係者に無理に渡りを付けてくれたのだろう」
小次郎常「十分過ぎるほど有り難い。よくやってくれた」
メル常「はい。それでは、夕方五時にこちらへ再び迎えに上がります」
小次郎常「わかった。ならばこちらはそれまでに調べるだけ調べておく」
メル常「よろしくお願い致します。くれぐれもお気を付けて」
cgクリア
小次郎常「となると、新聞社に行く時間が出来たな。急ぐか」
bg暗転
bg新聞社前
小次郎常「赤城三郎宅にあった新聞の発行住所はここか。……合っているといいが」
カミュ常「おや、珍しい顔だね」
cgカミュ
小次郎常「新聞屋。何故お前がここに」
カミュ笑「人のことを新聞屋呼ばわりして、僕が新聞社にいるのが不思議かい?」
小次郎常「本当に新聞記者だったのかとようやく納得しているんだ」
カミュ笑「なるほどね。僕はここに務めているんだ。用があったら知り合いのよしみで応じるよ」
小次郎常「……この新聞社に東洋人が寄付に来ることはなかったか?」
カミュ常「それはひょっとして赤城三郎君のことかな。確かに時々寄付に来るよ」
小次郎常「知っているのなら話は早い。どういう事情で寄付に来るんだ」
カミュ常「取材で必要でない限り、事情は詮索しないのが篤志家への礼儀だよ」
小次郎常「……」
カミュ常「……と言いたい所だが、君にはあらぬ疑いを掛けてしまった借りもある」
カミュ笑「内密にしておいてくれよ。彼は孤児院への寄付をしていた。彼も天涯孤独なのかもしれないね」
lips天涯孤独、か あらぬ疑い、か
小次郎常「天涯孤独、か。果たしてそうかな……」
カミュ常「孤児院への寄付をする人にはそういう人が多いんだ」
カミュ常「彼も身なりの割にはかなりの額を寄付してくれていたよ。苦労したんだろうね」
小次郎常「……そうか」
lipsout
lipsあらぬ疑い、か
小次郎常「あらぬ疑い、か。ようやく疑いは晴れたんだな」
カミュ笑「新聞屋の情報力を甘く見ないでくれ。暗殺者の正体を突き止めたよ」
小次郎常「ハッタリじゃないだろうな」
カミュ笑「本当だよ。ノワール・フルーレと呼ばれる、姿無き黒薔薇使い」
カミュ笑「噂だけは聞いていたけど、まさか本人だったとは思わなかった」
カミュ笑「その正体はね、わずか13歳の少女なんだそうだ」
小次郎常「……あいつ、13歳だったのか」
カミュ常「どういう意味だい?君もノワール・フルーレの正体を突き止めたのか?」
小次郎常「突き止めたというか、向こうが正体を明かしてきた」
小次郎常「……俺の妹を攫うときにな」
カミュ驚「何だって!表だって動いたっていうのか……」
小次郎常「既に他にも行方不明者が出ている。ノワール……フルーレだったか、根拠地はわからないか」
カミュ驚「何てことだ。済まないが僕も今それを探そうとしているところなんだ」
カミュ常「しかし、君の妹を攫ったのは何故だろう?人質にして君を押さえ込みたいのかな」
小次郎常「それがあるならまだしもだ。何も要求がない」
カミュ常「それは、恐ろしいね。何をするつもりなのかわからない」
小次郎常「そういうことだ」
カミュ常「わかった。僕も出来るだけの手を使って奴らの根拠地を探そう」
カミュ常「分かり次第、日本大使館を通じて君に連絡しよう」
小次郎常「えらく協力的だな」
カミュ常「事態が切迫している。どうも奴らは何か大きなことをしようとしているようだ」
カミュ常「警察が動けないと聞いているのでね。僕としては君に事件を解決して欲しいんだよ」
小次郎常「なるほど。一応そういうことにしておこう」
カミュ笑「もちろん、君が事件を解決したら独占インタビューの権利は認めてくれよ」
小次郎常「お前の情報で解決できたのならそうしてやるさ」
カミュ笑「期待しているよ。じゃあ僕も期待に応えるとしよう」
lipsout
カミュ笑「それじゃあ、また会おう、明智くん」
cgクリア
小次郎常「行ったか。……さて、どうするかな」
lips別の人間に聞く 別の場所を捜索する
小次郎常「……新聞屋は確かに別の場所へ向かったな」
小次郎常「よし、改めて新聞社で聞こう」
bg新聞社受付
受付嬢「面会のご予約はありますでしょうか」
小次郎常「予約はないが、寄付のことでお聞きしたい。よろしいか」
受付嬢「寄付、ですか?先の争乱で家を失った方への寄付事業は先日終わりましたが……」
小次郎常「では、貴社で孤児院への寄付をとりまとめているということはあるか?」
受付嬢「そういうことは教会や修道院の管轄が強いので、弊社としては行っておりません」
小次郎常「そうか。お手数をおかけした」
受付嬢「寄付事業が始まりましたら入口前のポスターで告知致しますのでご覧下さい」
bg新聞社前
小次郎常「新聞屋め。色々と図っていたな」
小次郎常「赤城三郎にこちらに金を持ってこさせて、アイツがそれを受け取っていたとすれば話は繋がる」
小次郎常「だとすると、シュペングラー、赤城三郎、カミュが一本の線で繋がるな」
小次郎常「シュペングラー暗殺直後に即座に俺に疑いを掛けたのも、元々同行していたためか」
小次郎常「ということは赤城三郎にディビジョン・ノワールを襲撃させたのはカミュか?」
小次郎常「奴を締め上げれば早かったか。次に見えたときは容赦せんぞ」
sound足音
小次郎常「ん?なんだ」
警官「東洋人!いた、こいつだ!」
警官「おい貴様、明智小次郎だな!」
小次郎常「確かに俺は明智小次郎だが」
小次郎常「(なんだ?軍人ではなく、警官だ……?)」
lips大人しくする 撃退する>警察から逃亡することになり、メルと会えなくなりbadend
小次郎常「何か用か?」
警官「エビヤン警部がお前を捕まえてこいとのことだ。大人しくしろ」
小次郎常「……エビヤンが?」
小次郎常「何かの間違いだと思うが……まあいい。ついていこう」
bgブローニュの森
cgエビヤン
エビヤン驚「な!?なんだ明智くん、その姿は……」
小次郎常「見ての通り、連行されてきたんだが」
警官「警部、ご命令通り連れてきました」
エビヤン怒「バカモン!犯人ではなく身元確認のために連れてこいと言ったんだ!」
警官「えええええ!?」
小次郎焦「……身元確認?」
エビヤン焦「う、うむ……。とりあえずさっさと縄を解け」
警官「は、はい……」
小次郎焦「エビヤン……、まさか」
エビヤン焦「ついさっき聞いたばかりでまさかと思ったのだがな……」
小次郎驚「……!」
cgクリア
bg袋入り遺体
エビヤン焦「……開けるぞ。いいな」
小次郎焦「ああ……」
bgメイリン遺体
エビヤン焦「……」
小次郎焦「……。違う。妹とは別人だ」
エビヤン驚「なんだと!?」
小次郎焦「髪の色も身長も似ているが、顔は明らかに違う」
小次郎驚「ん……?これは……!」
エビヤン驚「お、おい、明智くん!妹と違うのなら手荒に扱わないでくれ……!」
小次郎驚「この肩の焼き印の番号、04……」
小次郎驚「(元パピヨン孤児院の、メイリンか……!なぜこんなところに……)」
エビヤン焦「明智くん、この娘の身元に心当たりがあるんだな?」
小次郎常「無い、といっても信じてもらえそうにないな。ああ、この焼き印の話を聞いたことがある」
エビヤン常「遺体引受人を捜さねばならんのだ、教えてもらえるか」
小次郎常「と言われてもな……。バーで会った酔客の一人で名前も知らない」
小次郎常「やたらなんでも知ってそうなマスターがいるバーだが、わかるか?」
エビヤン常「おそらくレナードのことだな。わかった。連絡を入れよう」

小次郎常「メイリンが見つかった、と言えばわかるはずだ」
エビヤン常「ふむ……。ところでだ、やはり……」
小次郎常「ああ。犯人に心当たりは十分にあるが、聞けばアンタは捜査できなくなる」
エビヤン常「感謝するぞ。犯人が不明ならば捜査を邪魔される言われはないな」
小次郎常「(しかし……、遺体とはいえこの生気の無さは尋常ではない)」
小次郎常「(生きている頃から、生命力をほとんど使い尽くしていたような……)」
小次郎常「(この娘が使い物にならなくなったからエルザを使い、スペアでミキを……?)」
小次郎常「(タイミングとしては合っている。しかし、何故ミキに。あいつにはそんな力は無かったはず……)」
sound足音
警官「お、おい。ちょっと……」
エリカ焦「いいから、急いでるんです!」
小次郎常「……エリカ嬢の声?」
メル焦「明智さん!」
エリカ焦「攫われたミキさんが見つかったんですって!?」
cgメル
小次郎驚「メル嬢!それにエリカまで、どうして……」
エリカ焦「そんなことより!本当にミキさんだったんですか!?」
小次郎常「安心してくれ、というのも不謹慎だが、ミキじゃなかった。別の娘だった」
メル笑「あ……」
エリカ笑「ああ……、よかった」
エリカ常「はっ!……神よ、私は今、罪深いことを口にしました。お許し下さい」
エビヤン常「済まん。君の妹はシャノワールのバックダンサーと聞いていたのでシャノワールにも連絡したんだ」
小次郎常「なるほど。その配慮には感謝する」
メル常「はい、丁度私が明智さんに会わねばなりませんでしたが、皆さんもいてもたってもいられず……」
メル常「オーナーも、全員出動はお許しになりませんでしたが、エリカさんが最善ということで」
エリカ常「そうでした。済みません、エビヤン警部。遺体を拝見してもいいでしょうか」
エビヤン常「君にそう予め断られると意外だな……いや、こほん。そうだな、祈ってあげてほしい」
エリカ常「はい。ありがとうございます」
エリカ悲「……」
メル常「……どうですか、エリカさん」
エリカ悲「駄目です。もう、完全に命が尽きてしまっています……」
メル常「そうですか……」
小次郎常「?」
エリカ悲「……あなたの魂が、あなたの神の元で救われますように……」
小次郎常「(……今の祈り、教会の関係者というよりも多神教の司祭のような……)」
エビヤン常「ありがとう、エリカさん。さて、我々はここで犯人の遺留品が無いか探して行く」
小次郎常「わかった。後は頼む」
小次郎常「メル嬢、そろそろ時間か?」
メル常「はい。今から陸軍統括本部へ向かえば丁度約束の時間に間に合います」
小次郎常「陸軍統括本部!?」
メル常「はい。父のつてのあるフランス軍の将軍に話を聞くことができます」
メル常「どうぞ、こちらへ」
エリカ常「明智さん、何をぼーっとしているんですか。いきますよ!」
小次郎常「エリカ嬢も来るのか?」
メル常「ええ。オーナーのご指示です。攻め込む場所がわかったらエリカさんとともにすぐ向かって頂きます」
bg陸軍統括本部前・番兵四名
小次郎常「(……妙に、慌ただしい?何か準備しているのか?)」
番兵「止まれ!今は非常事態である。何者か!」
メル常「アモロ将軍にお目に掛かるお約束をしておりましたメル・レゾンと申します」
番兵「む……。確かに聞いておる。レゾン家の令嬢か。その二人は」
メル常「華撃団の赤と、今のこの事件に関わる日本大使館の調査官です」
番兵「しばし待て。許可を取る。おい、上に連絡を」
番兵「……こちら正門。……そうだ。華撃団の赤という少女と、東洋人……日本人らしい」
番兵「待て、本当か。……、そうか、了解した」
番兵「案内する。ついて来られよ」
小次郎常「(……武器を取り上げられなかった?メル嬢はどんな影響力を持っているんだ)」
bg陸軍応接室
cgアモロ
アモロ常「久しぶりだね。小さかったお嬢さんが大きくなったものだ」
メル常「ご無沙汰しております。その節は父はお世話になりました」
アモロ常「いやいや、あれは私が世話になったのだよ。だからこそ話をしにきてくれたのだろう」
メル笑「お見通しですね。恐縮です。
アモロ常「借りは作っておくものだな。こうして美しくなったお嬢さんに頼られるとは」
アモロ常「さて、何の用かな。この場にきてウェルレーズの詩の話でも無いだろうが」
メル常「はい、この巴里にとって憂慮すべき事態が起きております」
メル常「詳しくは、日本大使館のエージェントであるこちらの明智小次郎さんからお話頂きます」
アモロ常「……なるほど。イザベルと、サコミズが動いているのか」
小次郎常「お初にお目に掛かります。日本人の明智小次郎と申します」
小次郎常「貴軍に所属していたドレフィス大佐に、私の妹とその友が拐かされました」
アモロ常「ドレフィスが……!?」
小次郎常「やはり、彼にはそういう要素があるのですね」
アモロ常「……おそらくアンジュではないな。パピヨンの継続か」
小次郎常「(アンジュ……?いや、知らない様を見せるのは得策ではないな)」
小次郎常「パピヨン、でしょう。妹の友はかつてパピヨン孤児院にいたと聞いております」
小次郎常「また、パピヨン孤児院にいた少女が一人、つい先ほどブローニュにて遺体で発見されました」
小次郎常「その遺体からは、生命力がほとんど枯渇していました。異様なほどに」
アモロ常「……」
小次郎常「さらにこの数日、ドレフィス配下と思われる一群がパリ市街で対立勢力と交戦しております」
小次郎常「その中で、理化学研究所の研究者が一人、消息を絶っています」
アモロ常「そういうことだったか……」
小次郎常「以上から推測される事態はもうおわかりでしょう」

アモロ常「ドレフィスは……騎士団の後継者を作ろうとした夢を、二度潰された」
アモロ常「それでも、軍人としてフランスのために生きることを諦められなかった男だ」
アモロ常「君の願いは、私に志を同じくする同胞を売り渡せというものだ」
メル常「アモロ将軍……!」
小次郎常「……」
アモロ常「だが、イザベルが動いているということは、またあのような事件が起こるというのだな」
メル常「……はい。オーナーはそれを危惧しております」
小次郎常「起こさせはしない。私の予想が正しければ、事件が起きれば今行方不明になっている者はおろか……」
小次郎常「少なくともこの巴里が全滅する」
アモロ常「……」
アモロ常「どうやら、我々が恐れていた以上に事態は進行しているようだな」
アモロ常「我々も全力を尽くすが、あなた方にも存分に動いてもらわねばならない」
アモロ常「お答えできることならば何でも答えよう」
小次郎常「ならば単刀直入に伺おう。ドレフィスのアジトに心当たりはないか」
アモロ常「考えられるのはパピヨン孤児院だ」
小次郎常「子供たちの霊力強制をしていたところか。閉鎖になったと聞いたが」
アモロ常「あまりにも多数の犠牲者が出た場所なのでな。建物を壊すことすら難しく放置されている」
アモロ常「だが、最近になってパピヨン孤児院の周辺に出入りしている者がいるとの情報があるのだ」
小次郎常「……この陸軍統括本部全体が慌ただしいのはその情報のためか?」
アモロ常「いや、今までは理由がわからなかった。この巴里全体の霊力が異様に増加しているのだ」
アモロ常「だが、ドレフィスが暗躍しているというのならば話は納得できる」
アモロ常「あやつが関わったのは二つとも、極めて高い霊力に関する実験だ」

小次郎常「場所を教えて欲しい。今すぐにでも乗り込む」
アモロ常「単身乗り込むつもりか。まだドレフィスの配下は相当数が残っているぞ」
アモロ常「場所がパピヨン孤児院だとわかれば、我が軍の精鋭部隊を編成して今夜のうちに強襲できる」
アモロ常「それまで待てないか」
小次郎常「軍の精鋭部隊が強襲するとなったら、殲滅戦になるだろう」
アモロ常「……それは、否定できん」
小次郎常「俺にはそこから救出しないといけない人間が三人もいるんだ」
エリカ常「大丈夫です。私も付いていきますから単身じゃありませんよ」
アモロ常「華撃団は魔物でなければ容易に動けないはず。生身の出動をさせるとはイザベルも無理をする」
小次郎常「(華撃団か。やはりな……)」
メル常「行方不明になっているパピヨン孤児院の出身者は華撃団の候補生でもあります」
メル常「場合によっては、霊子甲冑無しでも華撃団は全員出動することもあり得ます」
アモロ常「軍としてはその状況は避けたいものだ。仕方があるまい」
アモロ常「パピヨン孤児院の場所は、パリ郊外のここだ。おそらく明朝6時には軍による殲滅作戦が開始される」
アモロ常「救出作戦を行うのならば、それまでに実行して欲しい」
メル常「ありがとうございます、将軍」
小次郎常「お礼申し上げる。必ず救出する」
bg陸軍統括本部前・番兵三名
小次郎常「時間が無い。パピヨン孤児院が奴らの本拠かどうかは確証が持てないが行くしかない」
cgエリカ
エリカ常「ええ、じゃんじゃん行っちゃいましょう」
小次郎常「……エリカ嬢、状況に慣れているな。本気で来るつもりか」
エリカ常「もちろんですよ。これでもちゃんと訓練を積んでいます」
cgメル
メル常「明智さん、ご心配なく。エリカさんは本当に強いですから」
メル常「巻き込まれないように注意して頂かないといけないくらいに」
小次郎焦「……おい」
メル常「私はオーナーたちにパピヨン孤児院の場所と経緯を伝えてきます」
メル常「エリカさん、あとの連絡は手はず通りに」
エリカ常「はーい。わかりました」
カミュ常「おや、麗しい女性たちと一緒とは羨ましいね、明智くん」
cgカミュ
小次郎常「新聞屋か。何をしに来た」
カミュ常「何をしにとは酷いね。君の助けになろうとして軍に探りを入れに来たんだよ」
カミュ常「ただ、どうも話がまとまってしまったようだね。どうなったんだい?」
if新聞社でカミュの裏を取った場合
lipsカミュを捕縛する timeover>そのまま進行


小次郎常「ああ、そのことなんだがな」
カミュ常「ひょっとして僕はもう不要だとでも言うのかい。つれないね」
小次郎常「その通りだ」
sound衝撃音
カミュ驚「があっ!!?」
メル驚「明智さん!? 一体……」
小次郎常「こいつはシュペングラーの仲間だ」
カミュ驚「……!!」
エリカ驚「へ!?」
メル驚「シュペングラーさんの……仲間!?どういうことですか」
カミュ焦「何を言い出すかと思えば……、そんな世迷い言を……」
小次郎常「悪いがのんびりしている時間は無いんだ。その顔だけで既に自白してるぞ」
カミュ焦「さっきはそんなそぶりすら無かった……。新聞社で詰めを誤ったか……」
小次郎常「そういうことだ。話が早いな」
カミュ焦「さて、僕をどうするつもりだい。言っておくけどそう簡単には……」
小次郎常「いや、お前の尋問は後だ。今は一刻を争うのでな。陸軍に預かって貰う」
カミュ焦「く……、僕の話を聞かなくていいのかい?」
小次郎常「今更お前の言葉に付き合っていると間に合うものも間に合わなくなる」
カミュ焦「カルマールの宮殿に簡単にたどり着けるとでも思うのか……」
小次郎常「……? カルマール?」
エリカ常「去年この巴里で暴れ回った魔物たちの王様の名ですよ」
メル驚「……どういうことですか。カルマールの宮殿ということは……」
カミュ焦「五百年カルマールを封じていた迷宮だぞ。僕の情報無しにたどり着けるものか……」
メル驚「敵の根拠地はシテ島だというのですか……、貴方は」
小次郎驚「何?」
カミュ笑「フッ……、どうやら何か間違った情報に踊らされているようだね」
カミュ笑「僕の裏事情を突き止めた君への報酬だ。この縄を解けば迷宮の奥まで案内すると約束しよう」
lips断る カミュの話を聞く timeoverは無視して次のlips後までジャンプ
小次郎常「断る。さすがにこれ以上お前に騙されるほど暇じゃない」
カミュ焦「バカなことを……、シテ島以外でどこに行くというんだ……」
小次郎常「ドレフィスが首謀者なんだからお前に想像が付かないとは思わないがな」
カミュ驚「……!!バカな!よせ!明智くん!今あそこへ行ってはダメだ!」
カミュ焦「時間を無駄にするどころじゃない!君はおろか華撃団のメンバーすら助からないぞ!」
小次郎常「どういうことだ……」
カミュ焦「君と華撃団は今、僕にとっても死んで貰っては困る駒だと言っている!」
カミュ焦「陸軍統合本部で何を吹き込まれたか知らないが、軍のバカどもに付き合っている場合か!」
小次郎焦「(苦し紛れか、それとも本気か……)」
lipsやはり嘘だと思う 真実かもしれない
小次郎常「あいにく、そう簡単には死ねない身体でな。万が一外れだったらお前の言うことに従うことにする」
エリカ常「そうですよ。こう見えても、私が付いていたら簡単には明智さんを死なせません」
カミュ焦「…………。こんなことになるとは……」
小次郎常「それでは、メル嬢。シャノワールへの伝言を頼む」
メル常「……はい、わかりました」
エリカ常「さあ行きましょう、明智さん。エルザさんとミキさんを助けに!」
小次郎常「ああ、急がねばな!」
bgパピヨン孤児院・霊力フルパワーモード
小次郎驚「妖力が……実体化している!?これは一体……!」
エリカ驚「明智さん……、これは危険すぎます!私の後ろに下がって!」
????「…………!!!!!……!!!……!!!」
小次郎驚「(頭の……中に……膨大な悲鳴が……これ……は……)」
エリカ驚「あなたたち、明智さんを……、呼んでいるの!どうして!?どうしてですか!?」
sound爆発音
bgマダガスカルオオツバメガ乱舞
エリカ驚「ああああああああああ!!そんな……!そんな……!貴方たちは……!」
小次郎驚「(まるであれは……蝶の……)」
bg暗転
badend

lipsカミュの話を聞くor本当かも知れない
小次郎常「……話は聞いてやる。嘘かどうかはこの場で判断する」
メル焦「あ、明智さん……」
カミュ焦「フッ……、拳銃を突きつけながら尋問してくれるとはね……」
小次郎常「四の五の言ってる場合じゃないんでな。妹を守るためならお前の命くらい軽く吹っ飛ばすぞ」
カミュ笑「恐ろしいねえ。君、明らかに今まで殺した数が一桁じゃないだろう」
小次郎常「ご託はいい。とにかく、敵の根拠地はパピヨン孤児院じゃないんだな」
カミュ常「僕の手に入れた情報では、違うね」
カミュ常「君はどこまで把握していたっけな。シュペングラー暗殺の首謀者はわかっていたかい?」
小次郎常「元陸軍大佐ドレフィスだろう。聴いているのはこっちだぞ」
カミュ常「結構。彼の過去の経歴は、霊力戦闘部隊の創設にあることはわかっているね」
小次郎常「でなくばパピヨン孤児院へ向かおうとはせん」
カミュ常「だが、パピヨン孤児院は閉鎖されて久しい。ドレフィスはそことは別のところで目撃されているんだ」
小次郎常「それが、シテ島だということか」
カミュ常「そう。話が早いね。彼の配下のアジトの多くが巴里中心近くにあることも理由の一つだけど」
小次郎常「確かに、パピヨン孤児院を本拠地にするにはあのアジトの配置はおかしい……」
カミュ常「だろう?パピヨン孤児院は巴里郊外で人里離れたところだからね」
カミュ常「そして、シテ島には霊力実験を行うには最適の場所があるんだよ」
カミュ常「そうだよね、巴里華撃団のお嬢さん方」
エリカ常「……その人の言うとおりです、明智さん。シテ島にはかつて魔物の根拠地がありました」
メル常「ええ、しかもそこは攻め落としたわけではありません。未だに不明な区画があるのです」
カミュ常「百年戦争の頃に作られて現代まで手つかずだった迷宮だ。半端じゃないよ」
カミュ常「だが、カルマール公の本拠地だけあってそこにある霊力は今なお膨大だ」
カミュ常「ドレフィスは、ノートルダム寺院の補修と称してそこに大量の資材を搬入している」
カミュ常「おそらくは、霊力を利用した巨大なエネルギー実験のための装置だろう」
小次郎常「よく調べたな」
カミュ常「とっておきの情報だらけだよ。少しは僕の誠意をくみ取ってくれたまえ」
カミュ常「そして、その迷宮を突破するための地図を僕は既に手に入れている」
小次郎常「……それが交換条件か」
カミュ常「あいにく今は持ってきていない。だがこの縄を解いてくれたら君にそれを渡すと約束しよう」
小次郎常「それが本物である可能性は」
カミュ常「既に察していると思うけど、赤城三郎にアジトを襲撃させたのは僕でね」
小次郎常「出所は確かというわけか」
カミュ常「悪くない話だろう?」
小次郎常「(さて……どうする。こいつの話に乗るか……)」
lipsカミュの話に乗る 乗らない>パピヨン孤児院ルートでbadend

小次郎常「いいだろう。今はそれ以上検証している時間がない」
カミュ常「賢明だね」
カミュ常「……ふう、まったく、手荒なことをしてくれるね」
小次郎常「さっさとシテ島に行くぞ。メル嬢、済まないが連絡を頼む」
メル驚「え……、あ、はい。わかりましたが、あの、地図を取りに行かせるのでは?」
小次郎常「こいつは今持っているさ」
カミュ常「……君も食えない男だね。わかっていて縄を解いたのかい」
if赤城三郎を拘束している場合 else>別行動を取り、後ほど赤城三郎とともに追いかけてくる
カミュ笑「こうなっては僕も覚悟を決めるとしよう。迷宮の案内は引き受けた」
小次郎常「敵陣まで同行するつもりか」
カミュ笑「これでもそれなりに戦力にはなるつもりだよ」
カミュ笑「ドレフィスとは敵対しているから、君を裏切る可能性は低いと思ってくれ」
小次郎常「敵の敵は真の敵ということもあるが……いいだろう」
エリカ常「昨日の敵は今日の友ですね」
小次郎常「……本当か?」

bgシテ島遠景
小次郎常「……嘘ではなかったようだな。何か、地下からとてつもない気配を感じる」
エリカ常「ええ……。カルマールがいた時と同じか、もしかしたらそれ以上かもしれません」
カミュ常「既に後手に回っている可能性が高い。急いだ方がいいね」
エリカ常「あれ?橋を渡るんじゃないんですか?」
カミュ常「できればそちらから行きたいところだが、無理だ。別のルートを使う」
小次郎常「……あれか。狙撃兵が橋を狙っているな。エリカ嬢、そのマシンガンでは落とせないか?」
エリカ悩「……花火さんなら射抜けるんでしょうけど、私は狙いを定めるのは苦手なんです」
小次郎常「しくじるとこっちが的か。仕方がないな。別のルートも迷宮なのか」
カミュ常「そうだ。遠回りになるから使いたくないけど仕方がないね」
bg洞窟入口
小次郎常「こんなところが入口か?」
カミュ常「洞窟と迷宮が奥で通じているとの情報だ」
小次郎常「俺は暗所でも夜目が利くが、この三人で突入するのか」
カミュ常「懐中蒸気灯の準備くらいはしてあるさ。さ、持ってくれたまえ」
小次郎常「自分の信頼度を考えてから言え」
小次郎常「俺が先頭を行って、後ろでエリカ嬢を人質に取られてはかなわん」
カミュ常「エリカさんを人質に?悪い冗談だね。まだ君を人質にエリカさんを脅す方が可能性があるよ」
エリカ驚「へ?……私を質屋に持っていくんですか?お金になりますかね」
小次郎呆「いや……。そもそもどこで日本の質屋なんて勉強したんだ」
エリカ常「日本に行ったときに織姫さんに教わりました。女を質に入れるのを人質って言うんですよね」
小次郎驚「……!いや、後半はともかく、ずいぶんと一言で多大な情報量を持つ回答だな」
カミュ笑「概ね理解したかい?僕も彼女を敵に回す度胸はないよ。巴里華撃団最強の隊員をね」
小次郎悩「……いいだろう。俺が先頭で貴様は中堅で蒸気灯を構えていろ。エリカ嬢が最後尾だ」
カミュ笑「うん、僕もそれが一番理に叶っている布陣だと思うよ」
bg洞窟内A
小次郎常「人型蒸気でも入れそうな洞窟だな」
カミュ常「実際に昨年の戦いではここから蒸気獣が出てきたそうだよ」
bg洞窟内分岐
小次郎常「おい、どっちだ」
カミュ常「右の道でいいよ。左に行くと罠だらけだが行ってみるかい?」
小次郎常「そんな暇はない」
エリカ常「カミュさんといいましたっけ。もし嘘だったら悔い改めてもらいますよ」
カミュ笑「怖いねえ。嘘じゃないよ」
bg迷宮直線路
エリカ常「あ、洞窟から石造りに変わりましたね」
カミュ笑「ほらね。ここからは五百年以上前の遺跡だよ」
小次郎常「さすがに五百年前の宮殿を歩くのは初めてだな」
カミュ常「ここからは迷宮が本格化する。細心の注意がいるよ」
小次郎常「そんなに凄まじい迷宮なのか」
カミュ常「当時の教会の注文は、ミノタウロスすら出てこれないように、だったそうだよ」
小次郎常「この奥に封じられていたものは、そんなに恐れられていたのか」
カミュ常「そういうことだよ」
bg迷宮十字路
bg迷宮直線路
bg迷宮右折路
bg迷宮丁字路
bg迷宮直線路
bg迷宮右折路
bg迷宮直線路
bg迷宮左折路
bg迷宮右分岐路
小次郎常「……待て」
カミュ常「どうした?」
エリカ常「どうしたんですか、明智さん?」
小次郎常「静かに。生きている人間の気配を感じた」
カミュ常「もうすぐ迷宮を抜けるはずなんだが、待ち伏せかな」
小次郎常「この迷宮を抜けるというだけで尋常な話ではない、待ち伏せていても警戒は緩んでいるはず」
カミュ常「気配を悟られないように行く、と」
小次郎常「そうだ。灯りを消せ。不本意だが手を繋いでいくぞ」
カミュ笑「君と手を繋ぐのは気味が悪いが、エリカさんと手を繋げるのは役得だね」
bg迷宮十字路
bg迷宮直線路
bg扉
小次郎常「……扉がある。この向こうに複数の人の気配があるぞ」
カミュ常「鍵があるとの情報は無い。おそらく開けられるだろうが……」
小次郎常「奇襲するしかないな。新聞屋、実戦能力はあるか」
カミュ常「取材用の護身術くらいならね。どちらかというとエリカさんに頼りたいところだ」
エリカ常「わかりました。扉を開けると同時に左から右へ横薙ぎに掃射します」
小次郎常「向こう側がわからんからな。説明が不要で助かるが……大したものだ」
カミュ常「君は華撃団実戦部隊にまだ実感がわかないようだね」
小次郎常「信じたくないだけだ。いいな、開けるまで5,4,3,2,1」
sound扉の開放音
sound機銃音
bg廊下・黒服四人
小次郎常「(四人……!うち二人は機銃でほぼ戦闘不能……!)」
黒服「て……!敵しゅ……!」
カミュ常「おやすみ」
sound衝撃音
小次郎常「悪く思うな」
sound衝撃音
エリカ常「敵の本隊にばれなかったでしょうかね?」
小次郎常「機銃を使った以上、音でばれていると思った方がいいが……ここからまだずいぶん先があるな」
カミュ常「まだ宮殿の外郭だからね。うまくいけば中まではばれていないかもしれないよ」
小次郎常「それならいいが……。それにしても、なんだこの濃密な大気は……」
エリカ常「立ちこめている霊力がオプスキュールやミカサの上並ですよ」
小次郎常「ミカサの……。やはりエリカ嬢、あのときあの上にいたのか」
カミュ常「少なくともすぐに駆けつけてくる気配は無さそうだね」
小次郎常「おい、この宮殿に牢獄みたいなものはないのか」
カミュ常「あるはずだけど、何をしにいくんだい」
小次郎常「俺は妹たちの救出に来たんだ」
カミュ常「それどころじゃないと思うけどね。おそらくドレフィスが何かやらかすまで時間がない」
カミュ常「足手まといを増やして、攻め落とせるとでも思うのかい」
小次郎常「居場所を確認しておくだけだ。お前の言う通り、作戦終了までは牢獄に居た方が安全だ」
カミュ常「分かっているのならいいだろう。幽閉に使えそうな小部屋は……こっちだ」
bg扉の廊下
小次郎常「なるほど、どうやらここに監禁していたらしい跡はあるが……」
カミュ常「着替えとかはあるが住人がいないね。厄介なことになりそうだよ」
エリカ常「明智さん、この部屋の中におばあさんが倒れてますよ!」
小次郎常「おそらくアインの祖母だ。……まだ生きている。おい、聞こえるか!」
フォン苦「う……、東洋人……?そなた、姫様が仰っていた日本人の探偵か……?」
小次郎悩「(姫様……?アインのことか……?)」
小次郎常「そうだ、探偵明智小次郎だ。アインの祖母だな、今鍵を壊す……」
カミュ焦「銃はよせ、明智くん!さっきはやむを得なかったが奴らに銃声を聞かれる可能性が高い……!」
エリカ焦「でも、鍵が開けられません……。少なくともおばあさんに触れるくらいまで近づかないと……」
フォン苦「私のことはいい……!どうせ足手まといにしかならぬ……」
フォン苦「私のことよりも、どうか姫様をお救い下され……!我が祖国の未来は姫様に掛かっているのです!」
小次郎焦「……わかった。その見上げた忠義、応えんわけにはいかん」
エリカ焦「明智さん……!?」
小次郎焦「大丈夫だ。彼女に死相は出ていない。ディビジョンノワールを全滅させてから救出に来る」
エリカ焦「……わかりました。必ず戻りますからね!」
カミュ常「冷静な判断だね。時間を取った。急ごう」
小次郎焦「(しかし……、エルザとアインに何かさせているとして、何故ミキがここにいない……?)」
bg柱の間
小次郎焦「広間……?いかん、隠れろ!」
sound銃声
sound銃声
カミュ焦「待ち伏せか。ここで食い止めるつもりのようだね」
エリカ常「六人います……。いえ、奥の方に消えそうな気配が……」
小次郎常「消えそうな気配?」
エリカ常「……多分、大怪我をしてます。ここからでは見えませんが」
小次郎焦「(ミキか、アインか……、まずいな。急がねば)」
sound銃声
sound銃声
カミュ常「いい狙いをしている。間を詰めてきているな。どうする、明智くん」
小次郎常「のんびりしている余裕はなさそうだ。俺が一旦火線を集めるから横に展開しろ」

カミュ常「まさか僕を囮にするつもりはないだろうね」
小次郎常「そのつもりならこの場で射線へ蹴飛ばしている」
カミュ笑「怖いねえ。了解したよ」
エリカ常「分かりました。信頼しますよ。ミキさんのお兄さんを」
小次郎常「いくぞ。3,2,1,0!!」
sound銃声
sound銃声
小次郎叫「正確だな!くそう!!」
エリカ叫「……明智さん……!」
小次郎叫「かすり傷だ!そっちを頼む!」
カミュ叫「そう頼まれたら、やるしかないじゃないか!」
エリカ叫「祈りなさいっっ!!」
sound連射音
sound銃声
sound銃声
黒服「があっ!」
黒服「がっっ!」
黒服「ぐあっ!」
エリカ叫「明智さん!一人そっちへ!」
小次郎叫「心得た!」
sound銃声
小次郎常「ふぅ……」
エリカ焦「明智さん!大丈夫ですか!」
小次郎焦「大丈夫だ。それより、あそこに倒れているのは……」
bg血溜まりに倒れたアイン
小次郎叫「アイン!」
カミュ常「理研のグエン女史か!」
アイン眠「…………」
小次郎焦「……まだ、辛うじて息はあるが……、この怪我と出血では……」
エリカ叫「明智さん!その人の身体、預かります!」
小次郎驚「……!?」
エリカ叫「まだです!まだ助けられます!!」
sound治癒音
小次郎驚「これは……」
カミュ常「華撃団上層部が彼女を帯同させた最大の理由がこれだよ。彼女には治癒能力があるんだ」
小次郎驚「…………まさか、この力をまた見ることになるとは……」
カミュ常「ん?」
アイン眠「……う……、大樹……?」
エリカ笑「……気がつきましたか……、もう……少し……動かないで……」
小次郎驚「(すごい……、あれほどの深手を治すなど……)」
小次郎焦「(だが……、その力が無尽蔵なわけが、ない……)」
カミュ笑「…………」
エリカ苦「はあ……、はあ……」
エリカ笑「………………よっし、これ、で……、大丈夫、です……」
小次郎叫「エリカ嬢……!」
エリカ笑「え、えへへへ……、かっこわるいところ見せてしまいましたね」
小次郎焦「……、すまない……」
エリカ笑「さて、アインさんを起こしてあげてください。ちょっと今は踊れないので……」
小次郎常「アイン、俺がわかるか……?」
アイン常「……う、……あ、小次郎……」
小次郎笑「そうだ。よかった……。ここで何があった……」
アイン常「ドレフィス大佐の勧誘というか要求を二度断ったら、撃たれたの……」
小次郎常「二度か。よほどお前の頭脳が欲しかったと見えるが……、この奥で一体何をやっているんだ」
アイン常「先日の授業の続きになるわね……」
アイン常「でも、それをのんびり話している時間はないの。だから今は手短に話すわ」
アイン常「バーで話した第二世代蒸気機関の謎、覚えている?」
小次郎常「エネルギー保存則を無視したエネルギー効率というやつだったか?」
アイン常「ええ。その答は単純なものだったのよ」
アイン常「別の世界から、エネルギーが来ている」
カミュ笑「…………!」
小次郎驚「別の世界……、まさか、それは……」
アイン常「そこへの道が開けば、無尽蔵のエネルギーが手に入るのは理解できるわね」
アイン常「ただし、その道を開くのに、極めて強力な霊力がいるのよ」
小次郎焦「エルザを呼んだのはそのためか!それが、もう動き出しているんだな……」
アイン常「彼女だけで済むか……。あの亜麻色の髪の女の子、あなたの妹と聞いたわ」
小次郎驚「………………ミキが!?馬鹿な……」
カミュ焦「明智くん、もう動いているのなら、これ以上話している時間はないぞ!」
小次郎常「アイン、エリカ嬢、動けるか」
アイン常「ええ、おかげで……」
エリカ常「……はい、なんとか。回復ができるまではしばらくかかりますが……」
小次郎常「(アインを避難させたいが……、残存兵力がどこにいるかわからない以上かえって危険か……)」
エリカ常「明智さん、アインさんは私がなんとか守れると思います。みんなして急いじゃいましょう」
小次郎常「……わかりました。アイン、道案内を頼む!」
アイン叫「ええ、ここの扉は封鎖されたから右へ回って!」
bg通路
bgカルマールの間・遠景
小次郎驚「大江戸大空洞ほどではないが……」
カミュ驚「予想はしていたが……、なんて広い空間だ……」
エリカ常「……まずいですね。悪い人たちのいるところまでかなり長いこと遮蔽物がありません」
小次郎驚「あれは、まさか……。アイン、あの中心にあるものが、世界の扉を開けるというのか」
アイン常「ええ……。右下にあるカプセルにエルザって子が入って霊力を供出しているわ」
カミュ焦「まずい……。既に駆動し始めている。逡巡している余裕はあまりないぞ」
エリカ常「ミキさんの姿が見えません。牢獄にも居ませんでしたし……、どこへ」
アイン焦「牢獄……?フォンは……、えっと、70ほどの老女がいませんでしたか?」
エリカ常「大丈夫です。意識もありました。これが終わったら助けに行きますから」
アイン焦「ええ……、ありがとう。でもおかしいわ。暗殺者の少女が小次郎の妹を連行していたはず……」
小次郎焦「(そう……。あの軍人がドレフィス、もう一人は多分アインの教授。ベルナデッドがいない……)」
lips様子を見る 突入する timeover>小次郎のモノローグ無しでカミュの台詞へ
小次郎焦「(エリカ嬢は立っているのがやっとの状態……。俺が突撃しても、ドレフィスを抑えられるか……)」
小次郎焦「(ここで俺がドレフィスと相打ちになっても、ベルナデッドが控えている……)」
小次郎焦「(なにより、この新聞屋の傍を離れるのは危険すぎる……)」
小次郎焦「(ダメだ……。ここで突撃するわけにはいかない……!)」
カミュ焦「明智くん……!ドレフィスが動いたぞ……!」
小次郎焦「アイン……、ドレフィスが動かそうとしているアレは……まさか、霊子櫓では……!」
アイン焦「極めて正解に近いけど、厳密には異なるわ……。あれはいわば霊子核併用圧縮蒸気機関……」
アイン焦「でも、あんな出力で実験したら、穴を支えるエルザの命が保つはずが……!」
アイン焦「まさか……、小次郎の妹も機関に繋いだというの!?」
小次郎驚「何イッ!?」
アイン焦「こちらから見て装置の逆側に副機関席を設けているのよ……」
アイン焦「ノワール・フルーレの姿がここから見えないのは……もしかしたら」
小次郎驚「……!!!」
????「(お……に……い……)」
小次郎驚「ミキ……!?」
カミュ驚「明智くん……!?」
小次郎叫「ミキ!」
エリカ叫「明智さん!!駄目です……!間に合わ……」
sound銃声
小次郎驚「が……っっ!」
アイン叫「小次郎!」
カミュ驚「ちいっ!ドレフィスめ!!予定より早く明智くんを殺られるとは……!」
小次郎焦「(……頭を、撃たれた、の……か……)」
ベル常「まだ生きているとはね。一足先に冥土へ行って妹を待っていなさい」
sound切断音
小次郎叫「……!」
badend
lipsout
lips 突入する
小次郎常「(ベルナデッドの姿だけでなく、気配が察知できない……)」
小次郎常「(今なら、あの軍人と教授らしい者の二人……)」
小次郎常「新聞屋、二択だ。右左、どっちから行く?」
カミュ常「突撃かい。仕方がないね……。一応奴から遠い側を選ばせて貰うよ。僕は頭脳労働者なんだ」
小次郎常「どの口がほざくか。エリカ嬢、こいつが飛び出ないようなら後ろから撃ってくれ」
エリカ常「わかりました。撃たせないで下さいね」
カミュ笑「怖いねえ」
小次郎常「アイン、制圧し終わったら来てくれ。装置は俺の手に負えん」
アイン常「わかったわ……」
小次郎常「3,2,1、行くぞ!」
カミュ常「人使いが荒いね!」
sound足音
sound銃声
sound銃声
小次郎焦「この距離では当たらないか!」
ドレフィス驚「探偵と、内閣の小僧か!」
小次郎焦「ちっ!新聞屋の方に行ってくれればいいものを……」
sound銃声
sound銃声
小次郎焦「(避けるために走りながら当てるのはキツイ……、新聞屋任せにはしたくないが……)」
ドレフィス驚「視線からここまでかわしおるとは、ここまで来るだけのことはあるようだな!」
小次郎叫「お褒めにあずかり光栄だ!」
sound銃声
sound銃声
ドレフィス苦「ぐ……!小僧が!」
カミュ笑「小僧小僧と五月蠅いね。僕はこれでもれっきとしたフランス人なんだよ!」
小次郎焦「(近づけた!まだ浅手だ……、やはり取り押さえるしかない……!)」
sound衝撃音
ドレフィス怒「格闘でこの儂を取り押さえるつもりか!」
小次郎叫「探偵は殺しじゃなくて喋って貰う方が本業でね!」
ドレフィス焦「我が国の邪魔をしただけでは飽きたらず、フランス軍人まで愚弄するか!」
小次郎叫「国の邪魔なんて大層なことをしにきたつもりはない!
sound衝撃音
ドレフィス焦「く……!」
小次郎叫「妹とその友を返してもらいに来ただけだ!」
ドレフィス焦「なるほど貴様の動機は認めよう。だが、あの少女は恐るべき逸材だ、返すわけにはいかん!」
小次郎驚「なんだと……!?」
ドレフィス焦「まさかアンジュとパピヨンのどの検体よりも優秀な霊力者がこんな市井にいようとは……」
ドレフィス叫「力を持つ者は世界に対して果たすべき責任がある!あの少女を返すわけにはいかん!」
小次郎叫「聞いたふうな口を叩くなーーーーーー!」
sound衝撃音
小次郎叫「どうして貴様らのような奴はいつもいつも、犠牲になる命を考えない!」
ドレフィス叫「貴様は欧州大戦の戦場を見たことがあるか!何十何百万の死が満ちた世界が!」
ドレフィス叫「あの再現を止めるためなら、わずかの犠牲など躊躇っていられるか!」
小次郎叫「犠牲になったことが無い奴がそう言うんだよ!」
sound銃声
ドレフィス叫「ぐあああああっ!」
カミュ笑「明智くんとの対談もなかなか興味深いが、僕のことを忘れていないかい、大佐」
ドレフィス苦「く……」
小次郎常「やれやれ……、ちゃんとあっちを狙撃してくれたか……」
カミュ常「尋問のために急所は外したんだ。さて、しっかり捕縛してくれよ、明智くん」
小次郎常「拘束具は使ったきりだったからな。ベルトか何かで……」
ベルナデッド叫「そこまでよ!」
cgミキを拘束したベルナデッド
小次郎驚「何!!」
ベルナデッド常「大佐から離れなさい……、明智小次郎……」
小次郎焦「くそ……、ベルナデッドが戻ってくるまでに片を付けられなかったか……」
ベルナデッド常「言っておくけど、二人いるから人質は殺せないなんて考えないことよ」
ベルナデッド常「妹の顔から鼻や耳を無くすだけでも、あなたには十分効果があるでしょうから」
小次郎焦「お前らしくもない、俗な台詞の連続だな……ベルナデッド」
ベルナデッド常「貴女からも兄に告げなさい。私のために言うことを聞けと」
ミキ苦「……いやです」
ベルナデッド常「あの男の妹だけのことはあるようね……」
カミュ笑「ノワール・フルーレ、その少女を人質にとって、僕が止められると思っているのなら甘いよ」
ベルナデッド常「甘いのは貴方よ。一撃で私を即死させられなければ、この子がタダではすまない」
カミュ常「それで躊躇する僕じゃないということさ。ドレフィスじゃないが仕方がない犠牲だよ」
ベルナデッド常「それをやった貴方が生きていられると思うのかしら」
カミュ常「何?」
ベルナデッド常「頭が悪いのね。それをやれば貴方は明智小次郎の手で殺されるということよ」
カミュ常「…………くっ」
ベルナデッド常「わかったら大人しくしていなさいな。稚拙な接ぎ木などその程度よ」
ミキ叫「お兄ちゃん!私に構わないで!今ここで止めないと……!またあんなことが……」
ベルナデッド常「おしゃべりが過ぎるわよ」
ベルナデッド常「貴女には後々役に立って貰うから殺さないけれど、死んだ方がいいという世界もあるのよ」
ミキ苦「あなたは、死ぬことを知らない……」
ベルナデッド驚「……ッ!暗殺者に向かって、死を知らないとは面白いわね貴女……」
ミキ苦「死ぬことを知らない……大切な人の死を見たことがないから、暗殺なんて出来るのよ……」
ベルナデッド怒「……雉も鳴かずば撃たれまいとは、貴女の国の格言だったわね!」
小次郎焦「(まずい!……だが、今ならベルナデッドの注意はミキに向いている!)」
lips銃で撃つ! 短刀を投げつける!
小次郎焦「……隙有り!」
sound銃声
ベルナデッド怒「!!」
sound弾く音
小次郎驚「何!?」
ベルナデッド常「念動力を持つ私が、銃弾に対する霊力障壁くらい身につけていないとでも思ったの」
小次郎焦「しまった……」
ベルナデッド常「兄妹揃って行儀が悪いようね。躾が必要だわ」
sound刺し音
ミキ苦「……あうっっ!………………」
小次郎驚「ミキ!?」
ベルナデッド常「兄を気遣って悲鳴を押し殺すとは見上げた気性だけど、次はその耳が無くなるわよ」
<タイムオーバーの場合ここから
小次郎常「……やめろ……」
ベルナデッド常「私を見下ろせる立場にいるというその思い上がりの前に、大佐から離れなさい」
sound鼓動音
小次郎常「やめろ……」
sound鼓動音
小次郎叫「やめろおおおおおおおおおおおおおっっ!」
ベルナデッド驚「な……!」
sound風切音
sound衝撃音
ベルナデッド常「……一飛びで、50メートル以上……」
ベルナデッド常「霊力障壁ごと私の身体を貫く力……」
ベルナデッド常「やはり、私の目に、狂いは無かった……」
ベルナデッド笑「その姿を見れたから、もう、どうでもいいわ……」
sound倒れる音
ミキ苦「お兄ちゃん……、戻って、しまったの……」
ミキ苦「ごめんね……、いつも、いつも、私のせいだよね……」
小次郎叫「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
sound破壊音
sound破壊音
アイン驚「小次郎……そんな……」
カミュ笑「あははははははは……、これが僕の不始末の結果か!こんなことで僕の復讐が終わるのか!」
sound破壊音
sound爆発音
ミキ笑「……お兄ちゃん、せめて、最後は一緒にいるから……」
bg白
badend
lipsout
lips短刀を投げつける!
小次郎常「(音を出せばおそらく気づかれる……。だが……)」
小次郎叫「(これならどうだ!!)」
sound風切音
ベルナデッド驚「!!……こんな、もの!」
sound刺し音
ベルナデッド驚「ああああああああっっ!」
小次郎叫「ミキ!逃げろ!」
ミキ常「うん!」
sound走る足音
小次郎笑「ミキ……よかった、怪我はないか」
ミキ笑「うん……。お兄ちゃん、信じてたよ。必ず助けに来てくれるって……」
ベルナデッド驚「そん……な……。こんな華奢なナイフ一つで、私の霊力障壁を貫通するなんて……」
sound足音
小次郎常「この短刀には色々と思い出があってな」
小次郎常「お前が念動力を持っていても、これならば止められない自信があった」
ベルナデッド常「……そう、なるほどね。ナイフではなく日本の刀だったの」
ベルナデッド常「……なかなか素敵ね。少し借りるわよ」
lipsベルナデッドを止める!    ★

sound軽い衝撃音
小次郎常「ふう……、まったく、これ以上目の前で女に死なれてたまるか」
ベルナデッド常「最期の自由すら認めないなんて、貴方、残酷だわ」
小次郎常「つべこべ言ってないで、黒薔薇を全部出せ。へし折ってやる」
ベルナデッド常「……勝手にしなさいな」
soundパキパキ音
soundパキパキ音
soundパキパキ音
小次郎常「さて、厄介ごとはだいたい片付けたところで……」
小次郎常「アイン、それに教授、これが何か教えて頂こうか。それに止め方もな」
バレス驚「何……?アイン君が、生きているのか?」
cgアイン
アイン常「教授……、ご心配をおかけしました」
バレス驚「おお……。しかしどうやって……、あの傷で助かるとは」
アイン常「奇跡に助けられました。それよりも教授、今度こそ私の話を聞いて下さい」

バレス悩「止めようというのかね……。これは、私が生み出したというよりは、君の研究成果だ」
バレス悩「自らの研究成果を否定する。それは、科学者の姿勢として認めてはいかんことだ」
小次郎常「いや、何が何でも止めさせて頂く。霊子櫓の再燃など、我が祖国に賭けて断じて認めん」
バレス常「なるほど、君がアイン君の言っていた日本人の探偵だな」
バレス常「だが、少しばかし訂正を要求しよう。厳密にはこれは霊子櫓、……霊子核機関ではない」
小次郎常「……厳密には、か。どう違うのか聞かせて欲しいものだ」
バレス常「霊子核併用圧縮蒸気機関、というのが適切なところだろうな」
小次郎常「アイン。高圧蒸気の理論は解っていないんじゃなかったのか?」
アイン常「学会では、まだ、ね」
小次郎常「高圧蒸気のエネルギー保存無視がお前の研究テーマだと言っていたな」
小次郎常「既に、答にたどり着いて、実証実験段階まで到達していたんだな」
バレス常「その通りだ、日本の探偵よ。この機関の基礎理論を立てたのはアイン君だ……」
バレス常「この機関が完成すれば、事実上、この地上におけるエネルギーは無尽蔵になる」
バレス常「それは、産業革命をさらに凌ぐ、絶大な繁栄をもたらすであろう」
小次郎常「……どこからなんだ」
バレス常「……よい質問だ。どこ、と言ったな」
アイン常「私はそこまで説明した憶えはないわ、小次郎。貴方は、まるで最初からわかっているみたいね」
小次郎常「この気配には覚えがあるからな……」
アイン常「さすがに、先の帝都での戦いをよく知っているのね」
アイン常「山崎真之介が発見した蒸気併用霊子機関理論が最大の手がかりだったわ」
アイン常「圧縮蒸気を用いた第二世代蒸気機関よりも、蒸気併用霊子機関はさらに効率がよかったの」
アイン常「単独での出力は純粋な霊子機関の方が上だったけれど……」
アイン常「山崎真之介の推定によれば、蒸気併用霊子機関は理論上、上限が無かった」
小次郎常「上限が……、つまり、エネルギー効率が、最大で無限大になると?」
アイン常「ええ。だから圧縮蒸気には、霊力に絡む何かが作用していると考えたの」
アイン常「霊力介在下で、圧縮蒸気の最適条件に合わせて、エネルギー保存則が成立しない環境を観測したわ」
アイン常「そこでね、水分子が特異な挙動を示していたの」
アイン常「六角六芒型に水分子が共役してできる混成軌道が、一瞬だけ、その六角形の中心で消失した」
アイン常「その瞬間に、膨大なエネルギーが流れ込んで来ることが観測されたわ」
小次郎常「流れ込んできた……。生じたのではなく、流れ込んできたんだな」
アイン常「ええそう。圧縮蒸気を生じる特殊環境下では、一瞬だけど、別世界への穴が開いている」
アイン常「高エネルギー準位にあると推測されるその別世界からは、エネルギーが流れ込んで来る」
アイン常「エネルギー保存則は破られているわけじゃない。別の世界からエネルギーを受けていただけなのだから」
小次郎常「道理で……」
アイン常「驚いていないのね」
小次郎常「その別世界の名前を知っているか」
アイン常「ある程度想像はついているわ」
バレス常「知っておるよ。この現象を説明づける世界は一つしかない。古来よりよく知られた場所だ」
アイン常「正式名称ではないけど、通称、魔界、でしょう」
小次郎常「……………………そうだ」
小次郎常「道理で、霊力と圧縮蒸気の親和性が高いはずだ。霊力で魔界との孔を開け続けていたのならばな」
アイン常「厳密には違うわ。蒸気併用霊子機関では、既に活性化させた圧縮蒸気を使っている」
アイン常「霊力が、圧縮蒸気が有している魔界からのエネルギーと相乗効果を発揮していると推察されるわ」
アイン常「霊子水晶回路はまだ未解明な所はあるけど、少なくとも霊子甲冑の設計者はそれを知っていたはず」
小次郎常「霊力と相乗効果をもたらすということは、単純な熱エネルギーではないな」
アイン常「ええ、多変数の複素関数で表されるけど、一般的な自由エネルギーではないことは確かよ」
小次郎常「だとしたら、色々と納得できることがある」
バレス常「是非聞かせてもらおうか。君の意見は傾注に値するようだ」
小次郎常「アインには少し話したが、帝都病という単語をご存じか」
ミキ驚「…………!」
小次郎常「よく聞いておくんだ、ミキ。ここに、一つの答がある」
バレス常「先天性蒸気症候群。今や日本の帝都のみならず世界中で患者数が増加してきておるな」
アイン常「ミキさんの友人が罹ったという話だったわね」
ミキ悲「そうです……。さと子の身体には蒸気が有害でした」
ミキ悲「最初はお兄ちゃん以外の誰にも信じてもらえなかった……」
ミキ悲「帝都はこうして繁栄して、他の誰もそんな病気にはなっていないって……」
ミキ悲「でも、間違いなかった。蒸気がない世界なら一緒に生きられたのに……」
ミキ悲「さと子と同じ病気の人が、増えているんですか」
バレス常「否定したいところだが、科学者として事実に背は向けられん」
アイン常「残念ながら、それは事実と認めるわ。罹る人と罹らない人がいるから解決はできると思ったけど……」
小次郎焦「残念ながら、そんな楽観論はもうとても信じられそうにない」
小次郎焦「圧縮蒸気はやはり無害なんかじゃなかった。さと子はただ、魔界のエネルギーに敏感だっただけだ」
ミキ悲「…………」
小次郎焦「その後も帝都病の患者は増加しているというのなら……」
小次郎焦「帝都だけでなく世界中の蒸気都市で、魔界のエネルギーが蓄積され続けているはずだ」
小次郎焦「圧縮蒸気として使っている純粋なエネルギー以外の要素がな」
アイン常「……ええ。それは、否定できないわ。仮説ならあの本にもあったけど……」
小次郎焦「だとしたら、帝都で何度も魔物が跋扈するのも道理……」
小次郎焦「今の蒸気文明は、降魔実験をひたすら繰り返して成立していることになる……!」
アイン常「その仮説には異議を唱えたいわ。蒸気文明が魔物を呼ぶのなら紐育や伯林で魔物が発生していないのは何故?」
小次郎常「だが、先日はこの巴里で魔物が跋扈したんだろう」
アイン常「……」
小次郎常「予言してやろう。遠からず、数年と待たずして紐育や伯林など主要蒸気都市で魔物が跋扈する」
バレス常「それは、経験則からの推論かね。それとも……」
小次郎常「経験した観測からの論理的帰結だ。他にもわかることがあるぞ」
小次郎常「アイン。エルザが入っているその装置、霊子核併用圧縮蒸気機関と言ったな」
アイン常「ええ。その様子だと、機構の具体的理論まで想像がついているのでしょう」
小次郎常「単純に人型蒸気用の効率が良いだけの機関じゃないだろう」
小次郎常「帝都七大ボイラー、いや、ミカサボイラー級の、一国のエネルギーを賄うほどの規模になるはず」
アイン常「ええ。従来の圧縮蒸気が引き出せる魔界のエネルギーは一瞬だったけれど……」
アイン常「高濃度の霊力集中場を形成させた上で蒸気を臨界に到達させるとエネルギー孔を長時間維持できるの」
アイン常「元より生体由来の霊力は水分子との相性がいいからと考えられるわ」
小次郎常「そんなものを、人間一人で支えられるはずがあるか」
バレス驚「…………!」
小次郎常「それだけの高濃度の霊力集中場に必要な霊力を搾り取って、霊力者がただで済むわけがない……」
ミキ悲「そんな……!」
小次郎常「あのメイリンという子、並の死に方じゃなかった」
小次郎常「命全てを使い尽くしたような、生きていた気配さえ伺えない遺体だった」
小次郎常「エルザを、妹の親友をそんなことにさせられるか!」
ドレフィス苦「それは貴様の考えだ、異邦人よ……」
小次郎常「何?」
ドレフィス苦「エルザに何も説明せずにその装置に入れたとでも思うのか」
ドレフィス苦「全てを説明した上で招聘したとも」
小次郎苦「馬鹿な……!」
ミキ悲「エルザ……」
ドレフィス苦「わが国のために霊力を限りに散っていった騎士団の後継を、私は育ててきたのだからな!」
小次郎叫「命と引き替えにしてでも祖国に尽くせなどと吹き込んだのは、貴様か!」
ドレフィス苦「そうだ。そのことの何が悪い!」
小次郎怒「ほざけ!ならばメイリンはどうなる!なぜミキを攫った!貴様の言っていることは矛盾だらけだ!」
ドレフィス苦「わが国に来た異国人は全て我が国に奉仕する義務がある!」
ドレフィス苦「貴様の妹についても調べたとも。シャノワールに立つべく来訪した志や見上げたものよ」
ドレフィス苦「ならばこそ、我が国を守るために何を躊躇うことがある……」
ドレフィス苦「ましてメイリンは天涯孤独になった後我が国が生かしたのだぞ……」
ドレフィス苦「我が国から学び、我が国に救われた者は、我が国に命を捧げねばならぬ!」
小次郎怒「罪もない少女に命を貸し付けて、存在の尊厳まで絞りとるのが貴様の正義か!」
ドレフィス苦「戦略の過程でやむを得ない犠牲はある。少数の犠牲で多数が救われるのならそれは正義だ!」
ベルナデッド笑「ふふふ……あははははは!命の貸し付けとはね」
小次郎常「ベルナデッド……?」
ベルナデッド笑「仮初めの命と思ったことは何度もあるけど、貸し付けとは恐れ入ったわ」
ベルナデッド笑「本当に、貴方が面白いと思った私の目に狂いは無かった……」
小次郎常「ベルナデッド……。パピヨン計画とは別にアンジュとやらがあると聞いた。まさか……」
ベルナデッド笑「それ以上詮索すると殺す、……と言いたい所だけどもうできないわね」
ベルナデッド常「それ以上踏み込んでくるなら、舌を噛んで死んであげるわ」
小次郎常「…………」
ベルナデッド常「世迷い言よ。忘れなさい。それよりは、私も貴方の推理の続きに興味があるわ」
小次郎常「……いいだろう」
小次郎常「そもそもこの実験にどこまでの意義がある」
バレス常「それは、どういうことかね」
小次郎常「虎の子の精鋭だった孤児院のメンバーでさえ霊力を使い尽くす装置など、実用になるものか」
バレス常「それについては私から説明した方がよいだろう」
小次郎常「……何?」
バレス常「これはあくまで実験用機関でな。自在な調整のために今は高レベルの霊力者が必要だが……」
バレス常「完成すれば、彼女のような霊力者がいなくても駆動できる。それを目標にしておる」
バレス常「アイン君が突き止めた蒸気併用霊子機関の正体だったが、それをそのまま大きくしては従来とかわらん」
バレス常「この機関はそうではない。アイン君が説明した通り、これは霊子核併用圧縮蒸気機関だ」
バレス常「最初に君は霊子櫓と言ったな。すなわち、霊子核機関を知っているな」
小次郎焦「ああ……知っている。霊子核機関とは、霊力を周囲から吸い上げ無限に近い出力を……」
小次郎驚「…………まさか!」
バレス常「その推論で正解だよ。言ってみたまえ」
小次郎驚「人々から集めた霊力で、魔界への孔を恒常的に開け続けるつもりか……!」
アイン常「そう。薪も石炭も石油も必要なく、誰もが微弱ながら持っている霊力と水だけで足りる」
アイン常「人がいるところならどこでも無尽蔵のエネルギーが手に入り……欧州とアジアの格差を打ち破れる」
アイン悲「……そう思っていたわ」
バレス常「君の立てた理論に瑕疵はない。私の名に賭けてそれは保証しよう」
アイン悲「教授……、科学者としての私はそのお言葉に感激しなければなりません」
アイン悲「復讐のために来たはずのこの国で、貴方に教えを請えたことは幸いでした」
アイン悲「祖国のためではなく、フランスのためにも働こうかと思ったこともありました……」
アイン悲「でも……、私はアジアの王族の一人……、いえ、一人のアジア人です」
アイン笑「忘れそうになっていたそのことを、私は思い出させて貰いました」
小次郎常「…………」
アイン常「貧困にあえぎ、欧州との格差に苦しむ祖国に背を向けて、生きることはできません」
バレス常「…………それが、君ほどの科学者が行き着いた答か。残念だ」
バレス常「日本人の探偵よ、君の答も同じなのか。ミカサボイラーによる繁栄を目の当たりにしても」
小次郎常「ミカサボイラーを実感していたからこそわかる。あの半年、帝都の人間は何かおかしかった」
小次郎常「何故か活力はあるのに精気が無い……。当時は謎とされていたが、ミカサの中身を知って納得したよ」
小次郎常「だが、そんなことよりも俺にはあんたの計画を止める理由が二つある」
バレス常「妹の犠牲を見過ごせぬか、それは人として正しい感情なのだろうな」
小次郎常「そうだ。そしてもう一つ、俺はもう二度と霊子櫓を見過ごせない」
小次郎常「それだけは、俺の魂が尽きるまで、何があっても譲れんのだ」
小次郎常「霊子核併用蒸気機関であろうとも、その本質が同じであるなら、俺の答は変わらない」
小次郎常「止めさせてもらうぞ」
バレス常「それならばまず私を殺すのだな」
バレス常「今この場にある機関を壊したとて、私が生きている限り私は諦めんよ」
小次郎常「よせ、貴方自身にはなんら戦闘能力など無いはず」
バレス常「そんなものは無い。あるのはただ科学者として自らの研究に賭ける矜持だけだよ」
アイン常「教授……やめて下さい」
バレス常「力に善悪は無いというのが私の持論でね。研究者が自らの研究を捨てるとは死ぬにも等しいことだよ」
小次郎常「仕方がない。殺しはしないが、力尽くでどいてもらう」
アイン叫「……小次郎!」
小次郎常「わかってくれ……」
アイン叫「そうじゃない!機関が……!」
sound駆動音
小次郎驚「何……!?」
エルザ眠「…………」
小次郎驚「……これは……!何が起きて……いや、まさか」
アイン驚「説明した通りよ!臨界状態……魔界への孔が開いたのよ!」
アイン驚「出力が高すぎるわ!ここまでの霊力を使っては……」
バレス驚「まだ止めておいたはず……、どういうことだ!」
cgカミュ
カミュ笑「おっと、手が滑ってしまってね……。つい機関を駆動させてしまったよ」
小次郎驚「カミュ……!」
カミュ笑「説得のために注意をそちらに向けすぎたね、明智くん。僕の存在を忘れていただろう」
小次郎常「エリカ嬢に牽制されていて動けなかったと思っていたが……」
カミュ笑「うん、彼女に後ろから狙われているとなかなか動けなかったけどね」
カミュ笑「人間一人の命を救った後で疲労困憊の彼女を置いて、長話しすぎだよ」
カミュ笑「彼女の集中力が切れて昏倒してくれたことに気づかなかったようだね」
小次郎常「エリカ嬢に手を下しては……いないようだな」
カミュ笑「さすがの僕もイザベルの子飼いに手を出して黒猫に噛まれるのは遠慮したい」
カミュ常「さて、実験を進めましょうか教授。そこの面々を排除した上でね」
バレス常「貴様、何者だ……」
ドレフィス苦「新聞記者を装った内閣情報局の調査官だ……だが」
カミュ笑「ハハハハハ!やはりそこまでしか掴んでいなかったようだね!」
ドレフィス苦「そうか、薄々怪しいとは思っていたが、貴様、やはりドイツの二重スパイか……!」
カミュ笑「気づくのが遅いよ。しかし、二重スパイとは酷い言いぐさだね」
カミュ笑「僕はフランス人の母とドイツ人の父との間に生まれたんだ」
カミュ笑「どちらかを選ぶ権利くらいあるだろう?」
カミュ常「シュペングラーがノワール・フルーレにやられて、どうしようかと考えていたが」
カミュ笑「やはりこれだけの技術はフランスには勿体ないよ」
カミュ笑「この機関も、エルサ・フローベールも、我がドイツが頂く!」
ドレフィス苦「国を踏みにじるコウモリめが……!」
カミュ笑「愛国心という道化かな。僕には理解し難いけどね」
小次郎常「そこの軍人はいけすかんが、少なくとも貴様よりマシのようだ」
小次郎常「国を背負い、民のために戦おうとするその男を、道化師が罵倒する資格は無いぞ」
カミュ笑「おや、ずいぶん嫌われたものだね。君にはどこか僕に似たところがあると思っていたのに」
カミュ笑「少なくともフランス人じゃない君を、積極的に殺す理由は無いんだけどね」
カミュ笑「どうだい、ここまで捜査に協力してきた者のよしみだ。僕とともにドイツに来ないかい?」
カミュ笑「これでも僕は結構君を評価しているんだよ。探偵とは思えないその胆力、実力をね」
小次郎常「お断りだ。妹の友人を見殺しになどできん」
小次郎常「まして、この国を愛するがゆえに自らを捨てようとしたエルザの心境を聞かされてはな」
小次郎怒「祖国を捨てさせ、その命をドイツへの奉仕に使わせるなど、断じて許さん」
カミュ笑「エルサ・フローベールはシュペングラーが先に目を付けていた、伯林華撃団の最有力候補なのだけどね」
ドレフィス苦「エルザは孤児の頃から我らが育ててきた……先に目を付けていたなどと戯れ言を!」
カミュ笑「果たして、そうかな?まあ、そう思っているのならそのまま死ぬといい」
小次郎常「待て。そこの軍人を射殺した瞬間に、俺の銃が貴様を撃つ」
カミュ常「……。気に入らないね。今、言わなければ本当にそうしただろう君は」
小次郎常「止めねばそこの軍人を殺されていただろうからな」
カミュ常「それが気に入らないというんだよ。ドレフィス以上の殺気を見せながら言う言葉じゃないね」
カミュ常「勧誘に乗ってくれないというのなら、残念ながら君にはこの場で死んで貰うしかないよ」
カミュ常「巴里に来てわずか五日でここまで食い込む君は異常すぎる……」
小次郎常「ずいぶんと過大評価されたものだ」
カミュ常「君をここまで監視していたのは伊達ではないよ」
小次郎常「ならば……さっさと撃つんだな」
ミキ叫「お兄ちゃん!」
アイン叫「小次郎!」
カミュ常「冗談じゃない。その挑発には乗らないよ」
小次郎常「…………」
カミュ常「確かにここまで、君に霊力があるようなそぶりはなかった」
カミュ常「だがディビジョン・ノワールの連中を相手にここまで来て、一つも致命傷が無いのは異常なんだよ」
カミュ常「……君には、聖人か何らかの加護が付いていると僕は見ている」
カミュ常「並の銃弾ではおそらくその加護を突破できない。心臓を狙っても逸れるだろう」
カミュ常「君は軽傷で済み、僕は倒される。……このままならね」
カミュ笑「だが、シュペングラーから貰った霊力封入弾くらいの持ち合わせはあってね」
小次郎焦「(……まずいな。わざわざ宣言したところを見ると、弾換えにも自信がありそうだ)」
小次郎焦「(だが、奴が霊力封入弾に入れ替えて撃ち終わるまでに、こちらが撃てるはず……)」
小次郎焦「(奴のこの自信は……、どうする?)」
lips銃で撃つ 突っ込んで取り押さえる

小次郎常「(奴もここまで霊力があったようには見えなかった……、防御はできないはず!)」
小次郎常「(奴が霊力封入弾に取り替える前に、こちらが撃ち終わる!)」
カミュ常「さよならだ、明智くん!」
小次郎叫「させるか!」
sound銃声
sound風
小次郎驚「逸れた……!?」
カミュ笑「使いたくは無かったがね!赤城三郎君に渡していたあの薬を飲んでおいたんだよ!」
小次郎驚「霊力……!」
カミュ笑「ここまで君の銃の腕を見て来て、無策で君の前に立つ僕じゃないさ」
カミュ笑「じゃあね、明智くん」<タイムオーバーの場合ここに
ifベルナデッドを助けていない
sound銃声
小次郎叫「が……っ!!」
アイン叫「小次郎!」
ミキ叫「お兄ちゃん!」
エルザ眠「…………!」
小次郎苦「む……ねん……」
bg暗転
badend
elseベルナデッドを助けている
sound風
sound刺し音
カミュ叫「うおおおっっ!?何が、飛んできた……!?」
小次郎驚「俺の、短刀……?」
cgベルナデッド
ベルナデッド苦「死ぬ気になれば、30メートルの念動力もなんとかなるものね……」
ベルナデッド苦「シャイロックの死を喜ぶ商人は三流……。借りを返さず死なれたら利息だけが積もる」
ベルナデッド苦「……命の借りは、これで返したわ。さっさと取り押さえなさい」
小次郎叫「恩に着る!」
sound走る音
ベルナデッド常「これ以上着せられるのは御免だわ……」
lipsout
lips突っ込んで取り押さえる
小次郎常「(対狙撃防御手段を持っていると考えるべきだ。でなければ姿を現さない……)」
小次郎常「(ならば、一か八かだ……!)」
sound走る音
カミュ驚「……正気かい!?狙撃が無理だと判断したのはさすがだけどね!」
小次郎焦「(くそ……封入弾を装填されて……間に合わんか……!!)」
カミュ常「さよならだ、明智くん!」
ifベルナデッドを助けていない >上記のbadendパターンと同じ
elseベルナデッドを助けている
sound風
sound刺し音
カミュ叫「うおおおっっ!?何が、飛んできた……!?」
小次郎驚「俺の、短刀……?」
cgベルナデッド
ベルナデッド苦「死ぬ気になれば、30メートルの念動力もなんとかなるものね……」
ベルナデッド苦「シャイロックの死を喜ぶ商人は三流……。借りを返さず死なれたら利息だけが積もる」
ベルナデッド苦「……命の借りは、これで返したわよ」
小次郎叫「恩に着る!」
ベルナデッド常「これ以上着せられるのは御免だわ……」
lipsout
小次郎叫「歯を食いしばれええっ!」
sound衝撃音
カミュ叫「が……ッッ!」
sound倒れる音
小次郎常「……とりあえず寝てろ。貴様を問いただすのは後だ……」
小次郎叫「アイン!急いで装置を止める!指示を出してくれ!」
アイン焦「わ、わかったわ!」
ミキ叫「お兄ちゃん!私も手伝う!エルザを助けなきゃ……!」
小次郎叫「駄目だ!魔界への孔が開いている以上危険すぎる!」
ミキ悲「そんな……」
小次郎叫「待っていろというんじゃない。入口で倒れているエリカ嬢の介抱を頼む!」
ミキ驚「エリカさんが……」
アイン焦「……まずいわ。既にエネルギー準位が第二活性化エネルギーを越えている……」
小次郎焦「つまり……、何が起きている?」
アイン焦「安定出力のために戻せる範囲を超えて……要するに、このままだと」
アイン焦「機関を止めることができずに、霊力を使い尽くすまで魔界のエネルギーを呼び寄せることになるわ」
バレス常「……メイリンではここまで到達できなかった。エルザの霊力ならばと期待していたが、実現したか」
小次郎叫「木喰かアンタは!分析はいいから、このままではエルザはどうなる!」
バレス常「メイリンの例によれば、生命力全てを使い尽くして死ぬであろうな」
ミキ驚「…………!」
小次郎叫「そんなことさせるか!機関を壊してでも止めてやる!」
アイン叫「止めて!現時点でも空中戦艦ミカサの六分の一のエネルギーがあると言えばわかる!?」
アイン叫「この状態で壊したら、彼女が助かる保証も無いどころか、貴方は確実に死ぬわ!」
アイン焦「逃げるしかないわ……。遠からずこの空洞ごと機関が吹き飛べば、魔界の孔は閉じることになる……」
小次郎常「それは、できん……。そもそも二人とも、この事態は想定外のようだな」
バレス常「いかにも。私やアイン君が仕掛けた安全装置が作動していればこうはなっておらん」
小次郎常「新聞屋が解除したんじゃないのか」
アイン常「彼が発動させたのはただの駆動スイッチよ、ここまでにはならないわ……」
バレス常「そこの二重スパイとて容易に解除できるものではないはず。解除には霊力がいるのだ」
小次郎焦「霊力……?」
小次郎焦「まさか……、エルザが、自分自身で暴走させているのか?」
小次郎焦「……ドレフィス、エルザに何を吹き込んだ!?」
ドレフィス苦「……エルザには、それが生きてきた意義だと教えた」
ドレフィス苦「パピヨン計画のそもそもの始めから、全ては我らが祖国のために動いてきたのだとな……」
ドレフィス苦「リシャール様たちの……、騎士団の後継者となるために」
小次郎焦「ちっ……、責任感の強い女を騙すには都合の良い話だな……」
小次郎焦「機関が吹き飛ぶと言ったな、アイン」
アイン焦「ええ……。機関から噴き出しているあの霊力が見える?既に近づくことさえ困難よ」
バレス常「だが止めねばなるまい。既に実験の目的は概ね達した。ならば被験者は救わねばならん」
小次郎笑「……なんだ、ずいぶん常識的なところもあるんだな、教授」
小次郎常「ならばその役目、俺がやろう。どうやればあの機関を止められるのか教えろ」
小次郎常「俺ならばあの妖力に突っ込んでもなんとかなる」
アイン焦「そんな……無茶すぎるわ」
小次郎常「この地上の誰がやるより俺がやる方がまだ可能性がある。俺を信じろ、アイン」
アイン焦「……信じていいのね。わかったわ」
アイン焦「安全装置が解除されている以上、手段は一つですね、教授」
バレス常「……やむを得まい」
小次郎常「外部からの蒸気供給を根元から止めるのか?」
アイン焦「いいえ、既に霊力以外のエネルギーの大半は魔界から入ってくるからそれでは無理よ」
小次郎常「つまり、エルザの霊力を切り離せばいいんだな」
アイン焦「そう。被験者収容カプセルの正面ガラスを破壊して、直接霊子水晶伝達管を引き抜いて」
小次郎焦「わかりやすいな。じゃあいくぞ」
アイン驚「ちょっと……!素手で!?」
小次郎焦「ガラスは問題じゃない。行ってくる」
sound強風音
小次郎焦「(問題なのは、この膨大な妖力風だ……!)」
小次郎焦「(耐性の無い人間がこれを浴びては長く保たん……!)」
小次郎焦「(急がねばアインも……。これ以上、目の前で死なれてたまるか……)」
小次郎叫「エルザ!目を覚ませ!」
エルザ眠「(……!)」
小次郎焦「今のは……?エルザ、聞こえているか!」
エルザ眠「(…………!)」
小次郎焦「邪魔をするなと言っているのか?ならば、この妖力風はお前が自分で……?」
小次郎焦「魔界の力を自分で呼び込もうというのか。そこまでしてフランスに尽くしたいか」
小次郎焦「だがそれは間違いだ。エルザ、この力はフランスのためにはならん」
小次郎焦「かつて、お前のように考えた人がいた。だが、そのために帝都は今もなお災禍に見舞われている」
小次郎焦「それは、本来人間が手を出してはいけない力なんだ」
小次郎焦「お前が死力を尽くして呼び寄せる力は、フランスを繁栄させるのではなく、破滅させる……!」
エルザ眠「(…………!)」
sound強風音
小次郎焦「くそ……聞く耳持たずか……!」
小次郎焦「この妖力密度……並の人間なら死んでるぞ……」
小次郎焦「まずい……、このままでは、押し切られる……!」
ミキ叫「エルザ……!帰ってきてよ!エルザーーーーーーー!」
エルザ眠「…………!」
小次郎驚「(弱まった……!今だ!)」
sound走る足音
小次郎叫「エルザ、今そこから引っ張り出してやるぞ!」
soundガラスの割れる音
小次郎焦「これが霊子水晶伝達管だな。しかし、なんて霊力だ……」
小次郎焦「くそ……スーツと一体化して、抜けん……!」
アイン叫「小次郎!後ろ……!」
小次郎驚「何……!ドレフィス!?」
cgドレフィス
小次郎焦「今はお前とやり合ってる暇は……」
ドレフィス苦「……エルザよ、作戦は中止する」
小次郎驚「ドレフィス……!何故お前が手を貸す!?」
ドレフィス苦「騎士団の後継を育ててきたと言ったろう……。無駄死にさせてなるものか……」
ドレフィス苦「我がフランスのために役立つのならその命を散らせよう、だが」
ドレフィス苦「無為に死ぬと解っていて、死なせはせん!」
小次郎焦「その意気や良し……!ならば、助けるぞ!」
ドレフィス苦「言われずとも……!」
sound脱着音
小次郎笑「よし……!」
ドレフィス焦「いかん……!」
小次郎驚「……エルザ……!」
sound爆発音
bg白
ミキ叫「お兄ちゃん!!」
アイン叫「小次郎!!」
小次郎叫「が……は……っ!」
bgカルマールの間
小次郎常「……止まった、か……」
ドレフィス苦「フン……、あの瞬間、とっさにエルザを庇うとはな……」
小次郎常「……同じことをしたアンタに言われたくないな、おかげでエルザは無傷だ」
ドレフィス苦「結構だ。ならば我が騎士団は滅びぬ……」
小次郎常「……ドレフィス……?」
ドレフィス眠「……」
小次郎常「その矜持、見事なり……」
bg鳴動音
小次郎常「……なんだ?エルザを助け出した以上、機関は止まったはず……」
アイン叫「小次郎!無茶をして……、確かに機関は止まったわ」
小次郎悩「では、この鳴動は……」
バレス常「ここは元々古の王の封印のための空間と聞いた」
バレス常「限界以上の妖力が流れ込んだことで、その支えが無くなったのかもしれん」
小次郎焦「それはまずい……。アイン、急いで祖母を助けに行け!教授はエルザを頼めるか」
cgアイン
アイン焦「わかったわ……!」
アイン常「……、待って。どうしてエルザを教授に頼むの」
小次郎常「俺はミキとエリカ嬢を担いでいかねばならんからな。ぐずぐずするな!」
アイン悩「……貴方、もしかして、今の爆発で身体を傷めて動けないんじゃ……」
小次郎常「……頭のいい女は騙されてくれんか」
アイン驚「何を言っているの、小次郎!ここがもうすぐ崩落するというのよ!」
小次郎常「そうだ。ならばまず動ける奴が逃げるのが鉄則だ」
小次郎常「俺はなんとか動ける範囲で脱出を試みる」
アイン驚「いやよ!貴方を置いて逃げるなんて!」
小次郎常「そう言うな。俺の命はせいぜい数人分だが、お前の命には多分数百万の命がかかっている」
アイン驚「……小次郎、私の出生を知っているの……?」
小次郎常「あの、祖母ということにしていた老女の言葉から、大体想像はつくさ、お姫様」
アイン驚「あなたは……」
小次郎常「何のためにフランスまで来たのかを考えろ。お前は生きなければならん」
小次郎常「とにかく全てを急げ。俺も後から行く」
if巴里華撃団メンバーの合計信頼度一定未満
アイン苦「小次郎……」
小次郎常「無事に帰ったらお姫様のキスの一つでもくれると約束しろ」
アイン苦「あんなことまでしておいて今更それを言うの?」
アイン笑「……いいわ。あなたがお姫様嗜好というならそれにつきあってあげる」
アイン叫「だから、必ず戻ってきなさい!」
小次郎笑「ああ……必ずな」
sound足音
小次郎常「そんなわけだ。教授、済まないが広間から脱出したら扉を封鎖してくれ」
小次郎常「広間の外にいる俺の妹たちが俺を救出しようなどと考えないようにな」
バレス常「やはりそのつもりか。アイン君に恨まれるな」
小次郎常「あんたにも背負うべき咎はある。罰だと思ってくれ」
バレス常「わかった。日本の侍よ、その言葉を有り難く頂戴しよう」
sound足音
sound鳴動音
小次郎常「……お前は脱出しないのか。ベルナデッド」
cgベルナデッド
ベルナデッド常「牧羊犬を失った子羊は死ぬしかないわ」
小次郎常「空を飛べるおまえが子羊ね。とてもそうは思えないが」
ベルナデッド常「空を飛べる私に泣いてすがれば、ここから連れ出してもらえるとは考えなかったの」
小次郎常「さっきの恩返しで極度に疲弊してるお前にはもう力があるまい」
ベルナデッド常「最期に、無様な姿を見せてくれれば私を楽しませてくれたのに」
小次郎常「期待に添えなくて申し訳無いな」
ベルナデッド常「そう思うなら、最期に私の願望を叶えてくれてもいい?」
小次郎常「できることならな」
ベルナデッド常「なら、私の手で死んでくれる?」
ベルナデッド笑「そうしてくれたら、私の暗殺はそれで最期にするから」
小次郎笑「魅力的な提案だが、動機はなんだ」
ベルナデッド笑「私の運命をひっくり返してくれた貴方を、落盤なんかで死なせるのは勿体ないわ」
小次郎笑「いいだろう。やるなら心臓ではなく頭にしてくれ。心臓は俺のものじゃないんだ」
ベルナデッド笑「道理で、貴方にずっと死相が見えていたわけだわ」
ベルナデッド笑「別れの挨拶はしないわ。一緒に地獄へ行きましょう」
小次郎笑「さて、日本の地獄とフランスの地獄が繋がっていればいいがな」
ベルナデッド笑「地獄に国境を設けるほど神は無粋ではないと思うわよ」
小次郎笑「では、よろしく案内を頼む」
ベルナデッド笑「ええ」
sound鳴動音
sound轟音
sound破裂音
badend

else巴里華撃団メンバーの合計信頼度一定以上
sound轟音
小次郎叫「いかん!この轟音では上層部の崩落が始まったぞ!急げアイン!教授!」
アイン叫「あなたもよ!エルザも、フォンも、あなたの妹も!みんな生きて帰るのよ!」
小次郎叫「それでは全滅する!お前は早く……!」
小次郎叫「(上空から……、巨岩……!まずい!)」
アイン叫「小次郎!」
小次郎叫「来るな!」
ミキ叫「お兄ちゃん!伏せて!」
小次郎驚「……!?」
sound波濤音
グリシーヌ叫「グロース・ヴァーグ!」
sound燃焼音
ロベリア叫「フィアンマ・ウンギア!」
小次郎驚「……!」
アイン驚「たす……かった……?」
cgコクリコ
コクリコ叫「コジロー!アイン!助けに来たよ!」
小次郎驚「コクリコ……!?どうしてお前がここに!?」
cgエリカ
エリカ笑「えへへー。実は巴里華撃団には秘密の通信機があるんですよ。それで場所を伝えたんです」
ミキ笑「エリカさんが意識を取り戻してすぐに手配してくれたんです」
エリカ笑「エリカ気絶しちゃってましたからね。ミキさんが気付けしてくれてよかったです」
小次郎笑「そうか。よくやってくれたな、ミキ」
ミキ笑「うん!」
小次郎常「しかし、巴里華撃団……。やはりグリシーヌ嬢もか。それに……」
cg花火
花火笑「またお会いできましたね。明智さん。……ぽっ」
小次郎驚「花火嬢……、まさか貴女まで。こんな戦場に来るとは無謀すぎます」
花火笑「いいえ、これは本来、私たちがしなければならないことなのです」
花火笑「巴里を守ること。私たちの仲間を助けること」
花火笑「それを、ここまでやって下さったことに、感謝してもし尽くせません」
cgグリシーヌ
グリシーヌ笑「まったくだ。ここまで我らの出番が無くなるとは思わなかったぞ」
グリシーヌ笑「日本の男というものはどういうものなのだ」
cgロベリア
ロベリア笑「あー?化け物だろ。あいつもこいつも」
グリシーヌ常「フン、口の悪い奴め……」
ロベリア笑「無様に生き延びてて何よりだ探偵。きっちり払って貰うからな」
小次郎笑「やれやれ、借り一つか。高く付いたな」
ロベリア笑「残念ながら一つじゃなくて二つだ」
グリシーヌ常「貴様、あの老女の分まで請求するつもりか」
ロベリア笑「アタシとしては誰が払ってくれても構わないぜ。そこの科学者でもな」
アイン驚「え……?」
cgフォン
フォン笑「ああ……姫様、ご無事で……」
アイン笑「フォン……そなたもよくぞ無事で……」
小次郎常「結局、俺一人では何も為し得ずか。誰かに頼らなければ人は何もできんのだな」
ロベリア笑「ずいぶんと殊勝じゃないか探偵。だが、誉めてやるよ。お前のおかげでエルザも助かりそうだ」
小次郎常「なんとかなりそうか」
コクリコ常「うん。霊力を相当消耗してるから早く帰って休ませないといけないけど」
小次郎常「そうか。エリカ嬢もだからなおさらだな。急いで撤収したいが……」
グリシーヌ常「む……、エリカ、小次郎の怪我はなんとかならんか」
エリカ常「うーん、折れているらしい骨だけでもなんとかしないといけませんね」
小次郎常「よせ。今のエリカ嬢がやれば命に関わる。その治癒能力、無尽蔵ではあるまい」
花火常「……残念ながら明智さんの仰るとおりです。でも、よくご存じですね」
小次郎常「その力の持ち主に会ったのは二度目なのでな」
エリカ常「へ?私と同じ力を持った人に会ったことがあるんですか?」
小次郎常「ああ。……ずいぶん昔にな」
グリシーヌ常「シャノワールに戻れば治療手段はある。とにかく脱出するぞ」
グリシーヌ常「先ほど私とロベリアが吹き飛ばしたがここはいつ崩落してもおかしくない」
小次郎常「(……やはりサフィールが偽名でロベリアが本名だったか)」
sound轟音
小次郎焦「言った傍からこれか!」
ロベリア常「仕方がないね。エルザはグリシーヌが担いでいきな。探偵はアタシが引きずっていく」
小次郎常「お手柔らかに頼むぜ」
ロベリア笑「せいぜい死なないように気をつけな」
花火叫「先導します!みなさん、こちらへ急いで!」
アイン常「教授!」
バレス常「……生き残れということか」
小次郎叫「ベルナデッド……!お前も急げ!」
cgベルナデッド
ベルナデッド常「……貴方にはもう借りはないわ。シャイロック」
ロベリア常「……おい。アイツ、ひょっとしなくてもノワール・フルーレじゃ……」
小次郎常「言うことを聞く義理は無いとか、そんなことを言ってる場合か!」
ベルナデッド常「大佐が亡くなられたというのに、ここから逃げ出て何になるの」
ベルナデッド常「毒花はここで枯れる。凡人はそれを喜びなさい」
ミキ叫「いいえ!私を攫った分の貸しがあります!あなたも来て下さい!」
ベルナデッド驚「!……あなた、自分を攫った使いに何を言っているの」
ミキ叫「ええ、あなたのことは怖いです。でも、お兄ちゃんを助けてくれた人です!」
ベルナデッド常「……。日本人は、そういうものなのかしらね」
ifベルナデッドの信頼度が一定未満
ベルナデッド常「もう少し、日本というものを知っていたら、私も変われたのかしら」
小次郎叫「ベルナデッド!」
ロベリア叫「駄目だ、諦めろ!アイツは死なせてやれ!それが慈悲ってもんだよ!」
小次郎苦「くそ……」
ベルナデッド常「貴方のその顔、毒花の最期には過ぎたものよ」
ベルナデッド笑「地獄へ行っているから、当分は顔を見せないようになさい」
ifend
elseベルナデッドの信頼度が一定以上
ベルナデッド常「少し、未練があったわね。貴方たちを生んだ国を知ってみたかった……」
ミキ笑「なら……!」
小次郎叫「よし!付いてこい!」
ロベリア呆「やれやれ……。こんなお人好しどもを生んだ国のどこがいいのかねえ……」
elseend
sound轟音
bg暗転
bgシテ島地上
cgメル・シー
シー笑「あー!帰ってきた!」
エリカ笑「はーい、帰ってきましたよー!」
メル笑「皆さん、おかえりなさいませ」
グリシーヌ笑「うむ。エルザたちは全員救出してきたぞ。至急搬送の手配を頼む」
cgより子
より子笑「はい、蒸気自動車の準備はできております」
小次郎常「おい。しれっといるじゃないか」
より子常「明智さん、さすがです。お帰りなさいませ」
小次郎常「やはりな。日本大使館が窓口となってシャノワール……巴里華撃団の外部機関として動いていたわけだ」
より子笑「はい。ご推察の通りです」
小次郎常「始めから終わりまであんたの掌の上で踊らされていた気がするぜ」
より子常「酷い評価ですね。明智さんの仕事は私の想像を遙かに上回るものでしたよ」
小次郎常「まったく。帝国華撃団を避けるためにミキのフランス行きを許したってのに……」
小次郎常「ところで……なんだこのシテ島全土を取り囲むフランス陸軍の偉容は」
メル常「明智さんたちが乗り込んだ後、地上からも巨大なエネルギーの奔流が観測されたんです」
メル常「そこで陸軍も、パピヨン孤児院ではなくこちらが本拠だと気づいて目標を変更したんです」
メル常「ただ、総攻撃を行えば救出は困難になるとオーナーは判断してなんとか止めさせていたんです」
シー常「丁度エリカさんから通信が入ったので、グリシーヌ様たちが直接乗り込み……」
シー常「解決するまで、一時間待て、ということで妥協させたんですよぉ」
小次郎常「まったく……。オーナー、ね」
メル笑「はい。後日、じっくりとお話下さい」
ifベルナデッド生存
メル常「ところで明智さん……、どういうことか説明していただけますか?」
メル常「なぜ、ベルナデッド・シモンズが明智さんと一緒にいるのか」
cgベルナデッド
シー常「そうですよぉ。この人、ミキさんを攫った人でしょう?」
ミキ悩「えっと……、色々あったんですが……」
小次郎常「取り押さえて助けて助けられて連れてきた」
ベルナデッド常「ずいぶんとあっさり説明してくれることね」
小次郎常「内容としてはそんなところだろう」
ベルナデッド常「情緒がないわ」
小次郎常「それなら今回の事件を叙事詩にしてくれ」
ベルナデッド常「悪くない提案ね。巴里華撃団の拷問を受ける間に考えておくわ」
グリシーヌ常「聞き捨てならんな。我らがそんなことをするとでも思うのか」
ベルナデッド常「イザベル・ライラックと迫水典通を貴女は甘く見過ぎているわ」
ロベリア笑「わかってんじゃねえか。あいつらの極悪人っぷりをな」
小次郎常「……逃げないのか」
ベルナデッド常「私が逃げれば、大佐を語り継ぐ者がいなくなる」
ベルナデッド常「尋問でとくと語ってあげるとするわ。心配は無用よ」
小次郎常「そうか……」
ベルナデッド常「ええ。さっさと捕まえなさいな。そこの番犬」
より子怒「私のことですか!」
ベルナデッド常「番犬で不服なら、貴女の素性を語ってあげてもいいのよ」
より子怒「……。ええ、お望み通り拘束して差し上げます。人道的にね」
小次郎常「本気で頼む。一応、そいつに命を救われたんでな」
より子常「……仕方がありませんね。わかりました」
ifout
elseベルナデッド死亡
小次郎常「(結局、あいつを救えなかったか……。もう少しわかり合えたかもしれんが)」
小次郎常「(そういえば新聞屋も置いてきたが、……あれは生きてるかもしれんな)」
elseout
アイン常「あの……とにかく今は病院へ。機関の爆風を受けた小次郎の傷は軽傷ではありません」
エリカ常「そうですね……。私が回復したら、明日にでも治しちゃうんですけど……」
グリシーヌ常「その様子では回復をさせるわけにはいかんな」
エリカ笑「あ、でも最後に一つやっておきたいことがあるんですよ」
ロベリア嫌「てめえ、まさか……」
花火笑「あ、あれですね」
コクリコ笑「うん、あれを忘れていたよ」
グリシーヌ笑「なるほど。片付いたとあらばやるしかないだろうな」
小次郎常「……なんだ?一体何が起こるというんだ」
エリカ笑「せーのっ」
????「勝利のポーズ、決めっ!」
bg暗転
bgシャノワール貴賓室
cg迫水
迫水常「怪我の具合はどうかね、明智くん」
小次郎常「あの後翌日に、エリカ嬢に治して貰ってこの通りだ。何の問題もない」
迫水常「ふむ……。ちゃんと回復したのなら何よりだ」
小次郎常「それはそうと、シテ島の捜索がどうなったんだ」
迫水常「退役大佐が関わったということで、警察ではなく陸軍が捜索したんだがね」
迫水常「君の言った通り、ドレフィス大佐以下ディビジョン・ノワールメンバーの遺体は見つかった」
小次郎常「人数は?」
迫水常「供述で得られた総メンバー数と合わないので、若干名は生き残りがいるようだ」
小次郎常「赤城三郎の時に逃げた奴もいただろうしな」
迫水常「ただ、内閣諜報局のスパイだったモルガン・カミュの遺体は見つからずじまいだった」
小次郎常「アイツはしぶとく生きているかもしれんな……」
グラン・マ常「早急に国境に非常線を張ったけど、ドイツに逃げられた可能性はあるね」
小次郎常「帰り道で遭遇ってのは勘弁して欲しいもんだな」
ifベルナデッド生存
小次郎常「それで、教授とアインとベルナデッドの扱いはどうなるんだ」
迫水常「君の嘆願もあって、バレス教授とアイン君について直接の刑罰が下ることはなさそうだ」
迫水常「おそらく、ドレフィスの計画に強制的に参加させられたということになりそうだよ」
小次郎常「死人に口無しか……」
迫水常「生きた口が一人残っているので、彼女次第だがね」
小次郎常「そのベルナデッドの扱いはどうなっているんだ」
迫水常「比較的素直に取り調べに応じてくれているので助かっているよ」
小次郎常「拷問はしていないだろうな」
迫水常「嫌だな明智くん。いくらなんでも将来の隊員候補にそんなことはしないよ」
小次郎常「……やはりあいつを勧誘するつもりか。巴里華撃団」
迫水常「彼女ほどの人材は貴重だよ。是非とも巴里華撃団に欲しいからね」
迫水常「出来れば後で、彼女を説得すべく君からも一言彼女に言ってやってほしい」
小次郎常「あいつはどこにいるんだ」
グラン・マ常「後で案内させれるよ。以前ロベリアの奴を収監していた特別監獄さ」
小次郎常「そんなことをせんでも、あいつは逃げはせん。……逃げ行く先がない」
グラン・マ常「私もそう思うんだけどね。そっちの鉄壁が納得しないのさ」
小次郎常「鉄壁、か。より子を通じて俺の動きを逐一把握していたようだが……」
小次郎常「どこまで計画通りだったのか。最初から最後まであんたの掌の上にいた気がするぜ」
迫水笑「ひどいな。僕はそこまで極悪人ではないよ」
ifout
小次郎常「そもそもシュペングラーは花火嬢に同行していた。花火嬢の関係だから日本大使館が出てきたと思ったら」
小次郎常「シャノワール管轄の秘密部隊の外郭機関という落ちで、この貴賓室への招待だからな」
グラン・マ常「おや、このシャノワール貴賓室が気に入らないのかい」
小次郎常「居心地が良すぎて困る。そもそも貴女が俺を日本から呼んだことも計画のうちなのか?」
グラン・マ笑「さすがにそこの男ほど策士じゃないよ。ミキのことで話がしたかったというのが本音さ」
小次郎常「そう、その話だ。結局の所、ミキにも霊力があったということだな」
小次郎常「それも、パピヨン計画の筆頭たるエルザに匹敵するほどの霊力が」
グラン・マ常「アンタの見立ては正鵠を射ているよ。ミキとエルザの霊力は群を抜いている」
グラン・マ常「鍛えればエリカたちにも匹敵するくらいになる」
グラン・マ常「この巴里華撃団は人材不足でね。そんな人材を一人でも多く欲しいんだよ」
ifベルが生存している
迫水常「ノワール・フルーレを勧誘するくらいだから、僕たちの台所事情は分かってもらえるだろう」
ifout
elseベルが死亡している
迫水常「何しろ実働部隊が五人なんだ。僕たちの台所事情は分かってもらえるだろう」
elseout
小次郎常「そっちは理解しよう。ひとまずベルナデッドの身の安全は確保されているとな」
小次郎常「だが、ミキには理不尽だ。アンタはミキの霊力ゆえにバックから引き上げたのか」
小次郎常「ダンサーとしての努力や実力ではなく……」
グラン・マ常「帝国歌劇団のことを多少なりとも知っているアンタならわかるだろうけど……」
グラン・マ常「舞台にせよステージにせよ、そこに立っているからこそ魔を鎮めることができる」
グラン・マ常「ここは巴里を守るための最前線でもあるんだよ」
グラン・マ常「だけど、このイザベル・ライラックを見くびらないで欲しいね」
グラン・マ常「霊力だけで抜擢するほど私はステージを軽んじていないよ」
グラン・マ常「あの子はこの三ヶ月で私の想像を超えるほどの努力を積み重ねた」
グラン・マ笑「それを、ご覧に入れようと思ってね。この貴賓室に招待したんだよ」
メル笑「それではみなさん、お待たせ致しました。ただいまより当店の新星によるステージをお楽しみ頂きます!」
sound拍手歓声
小次郎驚「……」
グラン・マ笑「どうだい、ご自慢の妹のステージは」
小次郎驚「……ああ。確かに、俺は見くびっていたようだ」
小次郎笑「ミキとエルザの二人が、まさかここまで輝いて見えるなんてな……」
グラン・マ笑「一人ではあの子たちはここまで到達しなかったろう」
グラン・マ笑「あんな二人を育てたのは初めてだよ。いい子たちさ」
グラン・マ常「さて、保護者であるアンタに頼みがある」
小次郎常「ここまで聞けば内容の推測はついているがな」
グラン・マ常「それじゃあ単刀直入に言おうじゃないか。ミキを巴里華撃団に欲しい」
小次郎常「………………俺が反対する意味はあるのか」
グラン・マ常「無いね。私は必要な人材なら親兄弟が泣きわめこうがスカウトするよ」
ifベル生存
グラン・マ常「ロベリアだって然り。ベルナデッド・シモンズも必ず引き込む。安心しな」
ifout
elseベル死亡
グラン・マ常「ロベリアだって然りさ。安心しな」
elseout
グラン・マ常「そしてミキは既に経済的にはアンタから自立している。自らの去就は自ら決める権利がある」
グラン・マ常「既にミキにはアンタより先に話をしている」
小次郎常「さすがは自由の国フランスだ。では俺の出る幕ではなかろう」
グラン・マ常「気分の問題はあるのさ。どれほど華やかに飾ったところで戦場へ連れ出すんだ」
グラン・マ常「保護者であるムッシュが反対していると、ミキにはよくない」
グラン・マ常「アタシも寝覚めが悪いしね」
小次郎常「…………俺が反対する可能性をミキは考えなかったか」
グラン・マ常「あの子がなんと言ったのかは私に答える権利は無い。直接聞きな」
小次郎常「いや。聞かずともわかる。あいつは俺の反対ではなく俺自身を心配したんだろう」
グラン・マ笑「ふん……」
小次郎常「自立できなかったのは俺の方か……」
小次郎常「ミキはかつてな、帝国陸軍対降魔部隊に命を救われている」
グラン・マ驚「何だって……!?」
迫水驚「何!?」
小次郎常「華撃団の前身に命の借りがある。ならば……」
小次郎常「その力が必要とされたときには、誰かを助けなければならん」
グラン・マ常「……権利と義務の考え方だね。嫌いじゃないよ」
小次郎常「思えば偶然なのかどうかもわからんな。元来素養があったから降魔に狙われたのかもしれん」
迫水常「……ふむ、すみれの例を考えればあり得る話だな」
小次郎常「霊子甲冑に乗って魔物と戦うのは、思えばミキが本来為すべきことなのだろう」
小次郎常「俺の役目はようやく終わったということだ。ならば反対などできん」
小次郎常「思えば、俺があいつの兄になれたのもそれ故か……」
小次郎常「イザベル・ライラック殿。迫水典通殿」
小次郎常「……私が託された最愛の妹を、あなた方に委ねます」
グラン・マ常「私の名に賭けて、明智小次郎、ムッシュの育てた最愛の妹の命を受け取った」
迫水常「娘を持つ父親の気持ちだろうが、私もわかるつもりだ」
迫水常「感謝するよ、明智くん」
小次郎笑「……」
小次郎悲「……」
エルザ笑「皆さんありがとう!」
ミキ笑「これからもよろしくお願い致します!」
小次郎悲「なあ……。それで、いいだろう……?」
bg暗転

ifベル生存
bgサンテ刑務所
cgベルナデッド(囚人服)
ベルナデッド常「あら。わざわざこんな地の底まで無駄足を運びに来たの」
小次郎常「……ずいぶんと居心地の良さそうな牢獄だな」
ベルナデッド常「巴里の悪魔が居住していた中古というのが気に入らないけど……」
ベルナデッド常「出来については誉めてやらなくもないわ。鉄壁」
迫水常「それはどうも。中途半端な監獄では君の前では東屋同然だろうからね」
迫水常「壁面の煉瓦は念動力耐性、格子はシルスウス鋼製、外周には転移封じの結界を設けたんだ」
ベルナデッド常「最後のはいい嫌みね。出来ないと言っているでしょう」
迫水常「失礼。詩人ならではの詩的な表現を理解できない粗忽者でね」
小次郎常「いつまでベルナデッドをここに閉じ込めて置くつもりだ?」
迫水常「彼女が巴里華撃団の一員になってくれたら出すつもりだよ」
ベルナデッド常「当分出る気は無いわ。陰鬱な地の底暮らしは詩作には悪くない環境なのよ」
小次郎常「ベルナデッド……」
ベルナデッド常「31音すら使わず、名前を呼ぶだけで説得しようとするのは言葉の足らない無教養のやることよ」
ベルナデッド常「安心してくれていいわ。今はまだその気にならないだけ」
ベルナデッド常「それとも、大佐が亡くなられてすぐに身を翻す女の方が扱いやすかったかしら」
小次郎常「扱いやすかったろうが、魅力に欠けていただろうな」
ベルナデッド常「貴方にしては気の利いた返し方ができたじゃない」
小次郎常「日本を知りたいと言っていなかったか」
ベルナデッド常「ええ。だから、いずれは鉄壁の勧誘にも応じるわ」
ベルナデッド常「華撃団に入れば、いずれ日本に行ける機会もあるでしょうからね」
小次郎笑「そうか……」
ベルナデッド常「だから、安心して帰国なさいな。次に会うときまでに日本語の勉強はしておくから」
小次郎笑「では、またな」
ベルナデッド常「そこで歌を詠まないから、貴方は駄目なのよ」
bg暗転
ifout

bg小次郎のアパート
ミキ常「うん、これで全部かな」
cgミキ
ミキ常「本当に荷物これだけでいいの?お兄ちゃん」
小次郎常「野郎の一人旅なんてこんなものだ。来るときだって大した荷物はない」
ミキ常「巴里土産も何も無しで……?」
小次郎常「いらんよ。記憶に留めることができればそれでいい」
小次郎常「それより、シャノワールの面々にはちゃんと伏せているんだろうな」
ミキ常「うん……、何もこっそり帰らなくても……」
ミキ常「エルザはお兄ちゃんにお礼をしたいと言ってたし、グリシーヌ様だって……」
小次郎常「脇役はこっそり退場すればいいんだよ。お前に知られただけでも不覚だ」
ミキ笑「お兄ちゃん、私に隠し事できると思うなんて見くびらないでね」
小次郎常「やれやれ。さて、行くか」
cgクリア
cgアイン(アオザイ姿)
アイン常「…………」
ミキ笑「……」
小次郎常「……………………」
小次郎常「おい、ミキ」
ミキ笑「なあに、お兄ちゃん」
小次郎常「どういうことだ、これは」
ミキ笑「うん。確かに、シャノワールのみんなには、何も言わなかったよ」
小次郎悩「………………」
小次郎悩「ミキ……」
ミキ笑「お兄ちゃん、私は先に駅に行ってるからね」
小次郎悩「……わかった」
アイン常「…………」
小次郎常「その服装は初めて見るが……、なるほど、お姫様というのも納得だな」
アイン常「……やはり、既にフォンが話していたのね」
小次郎常「元々、違和感はあった。植民地であるベトナムから女子が留学というのは尋常じゃない」
小次郎常「かなり上流階級のお嬢様だろうとは推測していたが、そうなると逆にフランスが認めるかは疑問だ」
小次郎常「だが、フォンからお姫様と聞いて思い出した」
小次郎常「ベトナム王朝の皇帝は確かインド洋の島、レユニオンだったかに島流しされていたな」
アイン笑「……つくづく、呆れるほど優秀ね貴方は」
アイン笑「私は成泰帝の姪にして維新帝の従姉に当たる、ベトナム王朝の皇孫です」
小次郎常「それで納得だ。フランスに簒奪されたベトナムで子供の頃飢えたことがないというのは疑問だった」
アイン常「後は、あの夜に話しましたね」
アイン常「フランスの暴虐によって王朝と国土と国民が踏みにじられる中……
アイン常「私は、フランスに対抗するためにはフランスに行くしかないと考えました」
アイン常「フランスを破壊するにしても、フランスの強さを知るにしても……」
アイン常「だから16のとき、島流しの船に同乗してレユニオンに亘り、さらにそこから密航したのです」
小次郎常「あんまり思い詰めた顔をするな。美人が台無しだぞ」
アイン笑「……仕方がないわ。それが王族に生まれた者の義務というものよ」
アイン常「もっとも……、一度はそれを忘れようとしたわ」
アイン常「このフランスに来て、学問に打ち込むことは心底楽しかった……」
アイン常「欧州の英知が結集して蒸気革命を成し遂げなければ、世界はここまで到達しなかった」
アイン常「そのことを考えると、フランスに対する敵愾心が消えそうになった」
アイン常「故郷を救うだけでなく、フランスにも貢献できるのなら……と思ったの」
アイン常「それが、私がドレフィスに荷担した理由」
小次郎常「だが、メイリンの扱いを見て、考えを取り戻したんだな」
アイン常「ええ……。どうしても埋めきれないものがあることも悟ったわ」
小次郎常「それで、これからどうするつもりだ。わざわざそんな服で来たということは……」
アイン常「……理研を、やめることにしたわ」
小次郎常「バレス教授はなんと言っていた」
アイン常「慰留されたけど、最後には納得して頂いたわ」
アイン常「……フランスから離れても、研究を続けることを条件に、ね」
小次郎常「ベトナム王族にして、なお研究者として生きるか。それも良いだろう」
小次郎常「だが、なお蒸気機関の研究を続けるつもりか」
アイン常「止めないわ。あなたの言う危険性は分かったけど、ならばこそ止められないのが研究者なのよ」
小次郎常「取り憑かれたというわけではなさそうだな」
アイン常「ええ。むしろその逆。既に第二世代蒸気機関は先進国において必須になっているもの」
アイン常「代替手段も無しに全廃なんて出来るはずもないし、植民地は宗主国に追いつけなくなるわ」
アイン常「科学技術がどれほど世界を作り替えようと、それを正すことができるのも科学なのよ」
小次郎常「ならば、期待していいんだな。魔界のエネルギーを使わない時代が来ることを」
小次郎常「そう約束してもらえなければ、今度こそ力尽くでもお前を止めるぞ」
アイン笑「もちろんよ。でも、それはそれで魅力的な脅しね」
アイン笑「約束するわ。近くでしっかりと私が暴走しないか監視してね」
小次郎悩「近く?ベトナムに戻るんじゃないのか?」
アイン笑「ええ。バレス教授に紹介状を書いて頂いたの。私の次の所属先はね」
アイン笑「帝大理学部物理学科よ」
小次郎驚「なにいいいいいいい!?」
アイン笑「読みの深い貴方を驚かせることがこんなに爽快とは思わなかったわ」
小次郎驚「ちょっと待て!単に私情で決めたんじゃないだろうな……!」
アイン笑「帝大物理学科には二十世紀の技術論の著者山崎真之介の論文を受けた教授がいるのよ」
アイン笑「四度の霊的災厄に見舞われた帝都なら、実測のための環境としても申し分ないわ」
小次郎常「……それだけじゃないがな」
アイン笑「着任は来年の四月からだけど、年明けには帝都に移住して準備するわ」
アイン笑「というわけだから、一足先に帰国して、住居の手配をお願いね」
アイン笑「ところで……、私情って、何のことかしら?」
小次郎呆「……………………」
アイン笑「何か不満でも?」
小次郎常「いや……」
小次郎笑「そうだな、そんな未来の到来をすぐ傍で見るのも悪くない」
アイン笑「……」
アイン笑「さあ、そろそろ行きましょうか。名残惜しいけど今日は駅までの見送りで我慢するわ」
cgミキ
ミキ笑「あ、お兄ちゃん、アインさん、やっと来た」
小次郎常「まったく……。大体、どこでアインと連絡を取るようになったんだ」
ミキ笑「大聖堂から生還した後だよ。この人なら大丈夫だって思ったの」
小次郎常「……ということは、来年からの事情も」
アイン笑「ええ。ミキさんには先に了承済みよ」
ミキ笑「ね」
小次郎呆「おまえら……」
ミキ笑「お兄ちゃんのことはよくわかってるつもりだけど……」
ミキ笑「あのときからお兄ちゃんはずっと、私のために生きてきた」
ミキ笑「でも、もう私は大丈夫だから。だから、お兄ちゃんもこれからは自分のために生きて」
小次郎常「ミキ……」
sound汽笛
小次郎常「……時間か。ミキ、また格上げされたら手紙をよこせ」
ミキ笑「うん。こまめに書くからね」
小次郎常「ただでさえ頑張っているんだから、そんなことを頑張らなくていい」
小次郎常「アイン、俺の住所はミキに聞け。こちらからは追って連絡する」
アイン笑「頼りにしてるわ。……またね」
小次郎常「またな。二人とも」
ミキ笑「またね、お兄ちゃん」
cgクリア
bg車内
小次郎常「帰りの座席は特等車か。ライラック夫人もそこまでしなくてもな……」
????「……また会おう、明智くん」
小次郎驚「……!?」
小次郎常「……いまの声は……」
小次郎常「やはり、生きてたか。やれやれ……。まあ、また会うこともあるだろう」
sound汽笛
sound車輪音連続
cgエビヤン
小次郎常「あれは……エビヤン警部。わざわざ見送りとは、律儀な御仁だな」
エビヤン常「……」
小次郎常「……ん?向こうを見ろ、と言ってるのか?」
bg巴里花組見送り
小次郎笑「……ミキのやつ、結局黙っていなかったのか。あいつめ……」
小次郎笑「感謝する。ありがとう、巴里華撃団。ミキを頼む……」
goodend2


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