[サクラ大戦BBS]

MAKING APPEND NOTE
クラウス への返事
つかの間の七夕(修正)

 作り話を修正・加筆しました。(7/11)

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〈お詫び〉
 丁稚のアキカさん、どうも申し訳ありません。ふたりで夏祭りを堪能するという点を無視したものをあらわしてしまい、そそっかしい次第です。修正・加筆しますのでしばしお待ちを。(7/10)

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 こんにちは、丁稚のアキカさん。私も参加させていただきます。妄想たくましく作り話の形にしました。おかしな点もありますが、ご容赦ください。

作り話 つかの間の七夕

 白いシャツに白いズボンに白い靴、と大神はうちわで顔をあおぎながら、人通りの多い道の端で、織姫を待っていた。

 「中尉さ〜ん、お待たせ」

 後ろの方から声をかけられて、ちょっとびっくりした大神に、

 「さっきまでおもしろい演歌をきいてました〜」

 白地に薄い紅色の花が咲き乱れた浴衣の織姫だった。予定の時間よりけっこう遅くなっていたのだが、そんなことは意に介してない彼女だった。閉口した大神だったが、気をとりなおして、出店の並ぶ道を二人して歩いていった。
 カキ氷を買ったり、お菓子を買ったり、ゆっくりとうろうろと歩いていると、

 「これなんでしょうね?」

 織姫が示したのはリアルに書かれた看板だった。ろくろ首、入道、人魚など奇怪な絵だった。「納涼 奇人の館」と銘打っていた。

 「あぁ、これは見世物小屋だよ。奇怪なものを見せて喜ばせる店だよ」
 「へぇ〜、ちょっとはいってみましょうよ」

 大神はやや困惑した顔を見せたが、織姫に引っ張られて小屋へと進んでいった。「お代は見てのお帰りだよ」

 中に入ると、舞台があり、その中央にチャップリンを思わせる男が

 「皆様、どうもご来場ありがとうございます。このたびは世にもめずらしい怪しげなものをお見せしましょう」

 男が舞台から消えると、すぐ中央に女が座っていた。文楽の人形のようないでたちで、

 「皆様わたくしをよくご覧になってください。見ての通りしがない女中です。帝都が江戸と呼ばれた頃、我が先祖は首切り役人でした・・・・」
 
 義太夫のような浪々とした声で話す女は、鬼気迫った感じで、口上が終わると、「とくと我が罪をご覧あれ」と顔をあげたかと思うと、そのまま首が伸び顔が天井近くまで上っていった。悲鳴と歓声があがり、拍手がおこった。

 「中尉さ〜ん、すごいですね〜」

 悲鳴をあげるかと思ったら、嬉々として見ていた。(アイリスでなくてよかった)
 その後は、人魚や、刀で突かれても傷つかない男など、出演した。
 小屋から出た二人は薄暗くなったのに気づき、

 「河川敷の方で花火を見よう」

 今度は大神が彼女を連れていった。

 「ここで待とう」

 二人並んで立っていると、川の遠くの方から煙があがり、花火が次々ととんだ。

 「きれいですね〜」

 炸裂音と雑踏の音が重なり、しばし簡単な言葉のやりとりだけが続いた。白、青、橙、黄など、花火の色合いは川に映って流れた。
 ・・・花火が終わって二人して駅へと向かった。

 「中尉さ〜ん、やっぱり亜米利加に行くんですね」
 「辞令がおりたからね。そんなに長い期間いるわけじゃないよ。今度は駐在武官として行くから、また大変だ」
 「・・・・、戻ったら部屋に来てください」
 「え?」
 
 帝劇に戻り、一旦自室に入った大神は、何かしら意味ありげな言葉遣いに不安と期待が混在ししていた。そして部屋を出て、彼女のドアの前にしばらく立っていた。ノックしようとしたら、ドアの向こう側から、彼女の歌声が聞こえた。イタリア語で歌っていて、何の歌かはわからなかった。それが「思いは黄金の翼にのって」という曲であることを、彼は後に知った。
 気をとりなおしてノックすると、甘えた声が許可した。部屋に入ると、

 「中尉さん、今日は特別に見せま〜す」

部屋の灯りの中でしなやかな指先は、机の薄い1冊の冊子を示した。何となく以前より部屋に物が多くなった感があったが、まずその1冊に注目した。

 「この冊子は写真が貼り付けてあります。ママから渡されたものですけど、まだ誰にも見せていませ〜ん。心して見てくださ〜い」

 急な言葉に、ややたじろいだ彼だが、しげしげと彼女の指先が開くのを眺めた。

 「これは?」

 白色の城、庭園、馬車、紳士・淑女達ーイタリアの風景のようだ。語らいながらページを少しずつめくる織姫。あるページで止めると、そこに若きカリーノと彼女に抱かれる幼子の写真があった。

 「ママとわたしの幼い頃の写真で〜す。それと故郷の風景です」

 女児用のドレスに身をつつんだ彼女の写真と、今の彼女を見ると、面影がよく出ていた。隣のページに目を移すと、二人の淑女と二人の幼児が並んだ写真が出た。

 「この左手に立っているのがママ、そのそばに立っているのがわたし。ママのそばにいるのがエレオノーラおば様。ママの友達よ。そのそばにいるのが、グイド」

 ドレスをつけたグイドは、丸い顔が泣きっ面になっていた。

 「この子が来た時、わたしは顔をひっぱたいて泣かしたそうなんだけど、わたし全然おぼえておりませんわ」

 この頃から気性は激しかったんだなと大神は苦笑いした。
 
 「織姫君はこんな小さい頃からかわいかったんだね。このグイドという子も今は君みたいに立派なレディーになっているんだろうね」 

 「プッ」織姫は口に手をあて、「キャハハハハハハ・・・」

 腹をかかえて笑い出した。

 「どうしたんだい。急に笑って」
 「どーしたもこーしたも、この子は男の子で〜す」
 「えっ? だってドレスを着ているじゃないか」
 「イタリアでは、女も男も幼児にドレスを着せるのです。それにグイドは男の名前です」
 「そうだったのか」

 大神はほんのちょっとバツの悪い顔をみせた。

 「も〜、はやとちりなんだから。亜米利加に出張する時は、向こうの娘に気をとられないでくださいね」

 やや語調の強い言葉に、大神は背中をちくりと突かれた思いだった。部屋に呼びつけた意図が何となくわかった。
 その後彼女は幼少時の頃とイタリアの風景の写真をこれでもかと見せ、祈るように説明していった。

 少し途切れたときに、目を別のところにうつした大神は、「目新しい本があるね」と言った。

 「それは、日本では『罪なき者』という本よ」
 
 イタリア語で書かれたものばかりで、よくわからず、詳しく訊こうと思ったら、すぐ織姫は話の舵取りを切った。
 
 「中尉さ〜ん、ねぇ〜」と大神の左上腕に抱きついて「本当に向こうの娘に気をとられないでくださいね」と少し悲しげな顔で唱えた。つかの間の七夕だった。

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