[サクラ大戦BBS]

MAKING APPEND NOTE
風間響矢 への返事

 えー、皆様初めまして。風間響矢と申します。
 昨年九月末以来、半ば『難民』と化していましたがこの度、こちらにお世話になる事に決めました。
 何の脈絡も無く現れ、ヘンなネタを書き散らすだけの変わり者ですが、先住者の皆様コンゴトモヨロシク。
 で、移住記念というにはちとアレですが、色々(好き勝手に)書いた各種文ネタを投下しました。おヒマな方は見ていって下さい。

 ・・・そうだ。シナリオ担当がやらないコトをやれ。
 常に原文と混入ネタとのバランス取りを思え。
 ファンを唸らせ、自分をも納得させうる最高の改変ネタを想像しろ。
 難しい筈は無い、不可能な事でも無い、元よりこの脳は、只それだけに特化した妄想回路・・・・・・!

        その9『その想いは』
    『サクラ2・6話Bパートより』

「・・・・・・レニは、いつも一人ぼっちだから。なんだか、ほっとけなくて。多分、理由はそんなものです」
「嘘、でしょう。いくら貴方の部下でも、それだけで自分の命を賭けられるものなの? 君にそうまでさせる理由は何?」
「いや、本当に理由はそんなものなんです。・・・レニは今迄、自分には闘いしかないって脅迫観念に追われてて、楽しいっていう事がいっぱいあるって事も知らなくて。ずっと、馬鹿みたいに一人で戦ってた。そんなのは寂しすぎる。そんな意味の無い人生、俺は許せない。だから・・・・・・」
 だから。ただ、教えてやりたかった。
 世の中には沢山の出来事があって、その大半は無意味で無駄なコトだけど、それを知る事が出来るのが、生きてるってコトの楽しみなんだって、どこにでもいる子供でも知っているようなコトをーーーーーー
「・・・・・・只、教えてやりたかった。レニはあんなに楽しそうに笑うけど、そんなのは誰にでも手に入れられるものなんだって、教えてあげたかった。世の中にはもっとーーーもっと、それこそつまらない悩みや今この瞬間以外のことが消し飛ぶぐらい楽しい事があるんだって、何回でも連れ回したかった。当たり前のことを当たり前のように感じられるようにーーーレニを、幸せにしてやりたかった」
 ・・・・・・いつでも、本当に笑っていられるように。
 レニの純粋さが好きだから。
「だってそうでしょう。レニは今迄、任務だ戦いだのに追われていた分、絶対に幸せにならなくちゃならない。帳尻は合わせないとダメだ。・・・・・・だいたい、彼女が自分を好きになる方法なんて、驚くぐらい簡単なんです」
 ・・・・・・そう、すごく簡単。
 単に誰かと話して、自分のやりたい事をやるだけでいいんだから。
「・・・・・・きっと、それは誰にだってしてやれる事なんです。他の誰にでもレニを幸せにする事は出来る。だからーーー確かに、俺がじたばた足掻いたり、みっともなく兵隊として失格してまで躍起になる必要はないんでしょうよ。他の誰にだって、レニを幸せにしてやる事はできますから」
 ・・・・・・わかってる。そんなコトはわかっちゃいるけど、理屈じゃないんだよな。
「ーーーけど、ダメなんです。他の誰かなんかに任せられないし、このままレニを放って置くなんて出来ません。・・・・・・自分には、もう彼女以外にいないんです」
 だって。大神一郎が幸せにしてやりたいって思うのは、この世でただ一人、レニ・ミルヒシュトラーゼだけなんだから。
「・・・・・・レニを愛している」
 男として、何もかも愛している。
「でも、それ以上に、俺は自分の手でレニを幸せにしてやりたい。その為だったら、軍人としての立場や将来なんてどうでもいい。このままレニを只の戦闘機械なんかにさせられない。・・・今は只、それだけなんです」

        その10・パターン1
     ちゃちゃちゃ〜ん ちゃらら〜(SE)
        『ロベリア脱走』
    『サクラ3・四話の同イベントより』

「・・・見回り・・・! くそ、なんだってこんなタイミングでーーー!」
 そいつは、もうすぐにでもここにやって来る。
 ここはーーー?
「っーーーーーー!!」
 迷っている時間など無い。
 こんなナリではケンカをしても勝ち目は薄いし、今は見つからない事を最優先にすべきだ。
 とりあえず、あのベッドの下の隙間なぞいかがなものカーーー!!
 ベッドの下に潜り込み、身を縮めて蔭の部分にどうにか収まる。
 間髪入れず響く扉の音。・・・看守が戻って来たのか、それとも先程会った妙な女連れの東洋人か。
 ともかく、アタシを捜しに現れた何物かは突如消失した囚人に驚愕し、困惑し、呆然とカラになった部屋を見つめている。
「ーーーーーーーーー」
「ーーーーーーーーー」
 フ、カモフラージュは完璧だ。
 この完全なる密室トリックを前に、来訪者は声も無く立ち尽くし、
「・・・・・・何を遊んでいるんだ、ロベリア」
 と、呆れきった声でベッドの下にいるアタシに声を賭けた。
「ーーーえ?」
 ひょこ、とベッドの下から顔だけを出す。
 ・・・目の前に立っていたのは、やはりオーガミとか名乗った東洋人の男だった。
「そこで何をしていると尋いたんだよ。まさかとは思うけど、それで身を隠しているつもりじゃないだろうな」
「あーーーいや、その」
 もそもそとベッドの下から這い出す。
「一応、隠れていたんだが」
 甘かっただろうか、と視線で問いただす。
「大甘だよ。もし俺がここの人間なら、一片の情けもかけずにとっ捕まえているところだ」
「あ、う」
 二の句も継げずに縮こまる。
 ・・・・・・何というか、物凄く恥ずかしい所を見られたのではないか、アタシは。

        その10・パターン2
    『どうにもならない囚人(プリズナー)』

「・・・・・・仕方無いね。まあ、確かに一度くらいは現実を教えないといけないか。ロベリア! 大きな口を叩くのはコイツを見てからにしな」
 びっ! と懐から何かを取り出すグランマとやら。
 と。一目で役所のモノとわかる紙には、なんか物騒な文字が書かれているんですけど・・・?
「えーーーええ?」
「こいつはね・・・内務大臣直筆のお前さんの死刑宣告書だ。こっちがその気になれば、いつでもアンタを殺す事ができるんだよ」
「うわ、ばか、止めろーーー! この、人権迫害、冷血鉄面皮、人の人生デタラメにして楽しいのか、ええい、難しいコト言えば済まされると思うなよバカぁっっっ!!!」
「・・・・・・素晴らしい。今の罵倒であたしも良心が消えたよ。アンタの協力に感謝しないとね」
「わーーーーー! うそうそ、今のワンモアーーー!」 
「却下だよ。今の罵倒を繰り返されると、あたしも理性を保てる自信はないからねぇ」
 さらさらと、いきおい紙の上を走るペン。
 しかもすぐ側に立つメイドの手には、ご丁寧にも封蝋と封筒がーーー!?
「きゃーーーーーー! シャレになってないっすーーーーーー!!」

 1、ーーー仕方ない、命あっての物種だ。
              ーーー14に進め。
 2、ーーー自由だけは譲れない、てっていこうせんだ!
              ーーーBADEND。
 ・・・芽瑠先生の授業(4時限目)を受けますか?
                  Yes
                  No

       その11・パターン1
  『激突! 大神VSグリシーヌ。ギャグVer』
    『サクラ3・三話の同名ムービー後より』

「!? しまったぁーーーっ!」
「隙有りーーーーーーっ!」
 雄叫びに続き、風切り音と共に襲い来る鋼鉄の凶器。
「グワ、ヤラレター」
 どっでん、どんどん。
 グリシーヌの(容赦ない)攻撃を食らって、ど派手に転がる巴里花組隊長こと、大神一郎。つまり俺。
「チィ、油断した・・・!」
 ・・・なんて、悔しげに言ってみる。
 俺が本気だったら、グリシーヌはもっとエスカレートしていただろう。それがこの程度で済んだのは、一重にこっちが手加減していたからである。
 慣れない武器だったが、出来る限り怪我をさせない、しないよう上手く立ち回ってわざと負けた甲斐があった。
 ああ、まさに隊長の鑑。略してタイガミ。
「ぅ、く・・・・手足が、言う事を、きかない・・・・・・」
 渾身の演技でヤラレタことをアピールするタイガミ。
 だが。
「大神さん、わざと負けましたねーーーー!」
「隊長、今手を抜きおったなーーーー!」
 てな叱咤が開口一番、飛んで来てくれやがりました。
 いやもう、どうしろっちゅーねん。
「馬鹿にして、そんな手加減をされて喜ぶと思っておるのか!? 立つのだ隊長、断固やり直しを要求する!」
「む、無茶いうなーーー! そりゃ、手を抜いたのはホントだけど、ヤラレタのもホントなんだ。やり直しなんて出来る訳がないだろーーー! 大体な、手加減に気付いたんなら、君の方も手を抜けば丸く収まるんだって気がつかなかったのかーーーー!?」
「む・・・・・・それは、そうだが」
「ほら見ろ。まったく、グリシーヌはそのカッとなる性格を治さないとダメだぞ」

       その11・パターン2
 『激突! 大神VSグリシーヌ。シリアスVer』
     
「隙有りーーーーーーっ!」
 ・・・・・・決闘場は無音に戻る。
 グリシーヌは武器を振った姿勢のまま止まっている。
 そのあまりの速攻に、場にいた全ての者が、勝敗は決したと見て取った。
 ーーーそう。一人冷然とたたずむ、大神一郎以外の者は。
 疾走。停止。一撃。
 眼前の敵が見せた戸惑い。一秒にも満たない時間、何ら反応させる隙を与えず、グリシーヌは勝負を決した。
 踏み込む速度、不安定な足場をも問題にしない体捌き、横一文字に振り抜いた刃に是非は無い。
 彼女の手にした得物は敵手たる男を一閃した。
 最高の機を窺っての奇襲である。
 斬撃は大木を断つ程の会心さで、仕損じる事なく、大神一郎の体を吹き飛ばした。
 いやーーー吹き飛ばした、筈だった。
「なーーーーーー」
 当惑で息が漏れる。
 一体どうなっているのか、と。武器を振るった姿勢のまま、グリシーヌは呆然と目の前の敵を見た。
「ーーーーーーばか、な」
 彼女でさえ、事態が掴めていない。
 横一線に薙ぎ払った必殺の一撃。それが止まっている。
 敵の胴体を薙ぎ払う直前に、何かに刀身を挟まれて停止している。
「ーーー腕と、足?」
 そんな奇蹟が起こりえるのか。彼女の槍斧(ハルバード)は、敵手たる大神一郎によって止められていた。
 肘と膝。
 高速で切り払われるソレを、男は片方の肘と膝で挟み込むように止めていたのだ。
「ーーーーーー」
 無論、彼女は知らない。
 素手で相手の武器ーーー刃を受け止める武術がある事も、それを実現する達人の事も。
 それでも、これが怪人相手の戦いなら放心する事などなかっただろう。
 だが事は人間同士の決闘。 いかに場数と修練を踏み、霊力を備えていようと敵はあくまで只の人間だ。
 それが自分の必殺の一撃、霊力によって強化された刃金を捉え、かつ素手で押し止めたなど、もはや正気の沙汰ではない・・・・・・!
「ーーー侮ったね、グリシーヌ」
 それは、地の底から響いてくるような声だった。
「・・・・・・っっっ!!!」
 グリシーヌの体が流れる。
 止められた刃を全力で引き戻そうとする。その瞬間。
「がっーーーー!?」
 彼女の後頭部に、正体不明の衝撃が炸裂した。
「は、っーーー!?」
 訳が判らない。素手で槍斧を止める、などという相手は初めてだ。 いや、となると今のは素手による攻撃か。
 つまりは殴られた。
 この間合い、お互い、肌を合わせる距離で、後頭部を殴られた・・・・・・?
「っーーーーーー!」
 正体が掴めないまま回避する。
「はーーーーーー!」
 こめかみを掠っていく”何か”。
 それが何らかの霊力によって"強化"されたとおぼしき拳であると看破し、グリシーヌは跳んだ。
 長柄の武器を持つ以上、素手の相手に対して接近戦(クロスレンジ)では不利だ。
 グリシーヌは自身の間合い、槍斧の利点を生かせる空間を持った距離(ミドルレンジ)まで後退する。
 
 ーーー剣士ならぬ、拳士な大神が勝っちゃうと、ストーリーが破綻するんでここ迄。ちなみに相手がナマモノその3(レオン)に変わって、これを徹底的にどつき回してKOする完全版もあるけど、読みたい人いますーーー?
 
        その12『正義・伝承』
     『1以前・降魔戦争終結後より』

 それは五年前の冬の話。月の綺麗な夜でした。
 わたしは何をするでもなく、父である真宮寺一馬と月見をしていました。
 冬だというのに、気温はそう低くはなく。縁側はわずかに肌寒いだけで月を肴にするにはいい夜でした。 
 帝都でのお勤めが終わってから、父様は外出が少なくなっていた。
 あまり外に出ず、家にこもってのんびりしている事が多かった。
 ・・・今でも、思い出せば後悔する。それが、死期を悟った動物に似ていたのだと、どうして気がつかなかったのだろう。
「子供の頃、私は正義の味方に憧れていた」
 ふと、わたしから見たら正義の味方そのものの父様は、懐かしむように、そんな事を呟いた。
「なんですそれ。憧れてたって、もう諦めたの?」
 不満そうに不思議そうに言い返す。父様はすまなそうに笑って、遠い月を仰いだ。
「うん、残念ながらね。正義の味方は心も体も強くないといけないけど、何よりそう名乗るのは期間限定で、オトナになると名乗るのが難しくなるんだ。そんなコト、もっと早くに気が付けばよかった」
 言われて納得した。なんでそうなのかはわからなかったけど、父様の言うことだから間違い無いと思った。
「そっか。それじゃあしょうがないね」
「そうだね。本当にしょうがない」
 相づちをうつ父様。だから当然、わたしの台詞なんて決まっていた。
「うん、しょうがないからわたしが代わりになったげる。父様はオトナだからもう無理だけど、わたしなら大丈夫でしょう? まかせてね、父様の夢は」
 ”ーーーわたしが、ちゃんと形にしてあげますから,,
 そう言い切る前に、父様は微笑った。続きなんて聞くまでもないって顔だった。
 真宮寺一馬はそうか、と長く息を吸って、
「ああーーー安心した」
 静かに瞼を閉じて、その人生を終えていた。
 それが朝になれば目覚めるような穏やかさだったから、幼いわたしは騒ぎたてなかった。
 年不相応に死に対して覚悟があったせいだろう。
 何をするでもなく冬の月と、永い眠りに入った、父親だった人を見上げていた。
 庭に音を立てるものは無く、辺りはただ静かだった。
 明るい夜(やみ)の中、両目だけが熱かったのを覚えている。
 泣き声も上げず、悲しいと思う事もない。
 月が落ちるまで、ただ、涙だけが止まらなかった。
 ・・・それが、五年前の冬の話。
 むこう十年分ぐらい泣いたおかげか、その後はさっぱりとしたものでした。
 夜が明けて、お婆様と権じいが葬儀の段取りを始め、バタバタとそれが終わると、前にも増して剣の修練に打ち込んだ。
 父様がいなくなっても変わらない。
 真宮寺さくらは父様のような正義の味方になるのだから、のんびりしている暇などありはしない。
 父様のように誰かを助けて、どこかの誰かの未来の為に戦う正義の味方に。
 その彼こそが”そういうモノ”に成りたかったと遺して、わたしの目の前で穏やかに幕を閉じた。
 ーーーだから、そういう人間になろうと思ったのだ。
 娘が父の跡を継ぐのは当然のこと。
 真宮寺さくらは正義の味方になって、誰よりも憧れたあの父親(ひと)の代わりに、彼の夢を果たすのだと。
 幼い頃にそう誓った。
 けれど、まだ。
 わたしはその夢を叶える事が出来ず、正義の味方とはなんなのかという事すら判らずにいる。
 焦っても仕方がないけれど、道はまだ遠く、スタートラインを越えたかどうかも疑わしい。

   ・・・To be continued  〜sakurawars1

           その13
  『風雲グリシーヌ邸〜とつげき! ブルーメール』 
     『3の本編中ないし、4後の一幕かと』

 コンコンとドアをノックする。
 返事が無いし、グリシーヌがいる気配も無い。
「やっぱハズレか」
 あはは、と笑いながらドアノブを握ってみる。
 ガチャ。
 ノブは、まるで鍵がかかっていないかのように回った。
「・・・って、まるでじゃなくて、ズバリ鍵かかってないな・・・・・・」
 彼女も正体が思いっきり怪しい戦うお嬢様だっていうのに、大胆なまでに不用心だな。
「もし、空き巣に入られたりしたらどうするんだ、グリシーヌ」
 ぷんぷん、とグリシーヌのうっかりさんぶりに腹を立ててみたりする。
 で。そうはいいつつ、大神一郎はこれからどうするつもりなのでしょう?
 1、・・・おとなしく帰る。
 2、・・・ちょっとだけお邪魔する。
 3、・・・グリシーヌの箪笥の中身が気になるワン!

 2、・・・ちょっとだけお邪魔する。
「・・・・・・そういえば、グリシーヌの私室って割と謎だ」
 ここ最近は、用事があれば彼女の方から俺の部屋を訪れる事が多いから、この部屋とも幾分、疎遠になっている。
 出会った直後からすれば彼女も随分変わった。
 部屋を覗いてみる事で、それをより実感させられる何かを見つけられるかも知れない。
「・・・・・・まあ、部屋を見るぐらいならおかしくないよな・・・・・・」
 頼りない弁明を呟きつつ、足音を忍ばせて奥の部屋へと移動する。
「おはようございまーす・・・・・・」
 音も無くノブを回し、ドアを開けてすべり込むと、やはり音も無く閉める。
 部屋の中はやはり無人。加えて、中に入る所を誰かに見られた形跡は全く無い。
「・・・・・・良好だスネーク。引き続き探索を続けてくれ」
 と、壁際に背中を押し当て呟くと、そこからしゃがみ、更にホフク姿勢に移り、ずりずりと部屋を移動する。
 ほどなく、目的地に到着。
 ーーー大の大人が数人いても窮屈さを覚えないだろう、と思わせる広さと、好事家ならずともアンティークとしての価値を理解しうる豪奢なデザイン。そして、長く大切に使われて来た事を悟らせる風格をも備えた天蓋付きベッドは、きちんとメイクされていた。
 白いシーツには一筋の乱れも無く、さながら風の無い砂漠のようだ。
「・・・・・・う。なんか妙にドキドキするな」
 ある種の罪悪感のなせる業か。
 ふ、この心地よい緊張感と雰囲気こそ喜びよ!
「・・・・・・っと、バカなモノローグはそこまでにしておいて、と」
 いそいそと床に膝をついてベッドの下をチェックする。
 ・・・・・・ベッドの下には何も無い。埃一つ無くてキレイなものだった。
 ホッとしている反面、なんかがっかりしたようなこの満たされなさはどうしたものか。
「ーーーシーツを剥してベッドに転がる・・・ってのは、さすがになあ」
 シーツを剥した後、またここまでキレイにベッドメイクできる腕は自分にはないし、何より。そんな行動をしてしまうとここまで築いた大神一郎というイメージを壊しかねない。
「・・・・・・後は枕の下ぐらいか」
 そうそう、見た時から怪しいと思ってたんだ。
 この必要以上にばら撒かれた大量の枕が!
「ーーーでは失礼」
 ひょい、と左端の枕を取る。
「・・・・・・む」
 と、そこには数冊の本が隠されていた。
「あ、これ前に俺から借りた小説だ。それと仏和辞書に、日本語の辞書とノート・・・?」
 小説の内容は、とある大陸を舞台にした仮想戦記だ。
 政治形態の違いから、数百年に渡り戦争を繰り広げて来た二つの国家。長すぎる闘いに疲れ閉塞し、腐敗するそれぞれの国にタイプの異なる二人の天才軍人が現れる。
 幾度かの闘いを経て頭角を現した二人の英雄は、やがて互いの国の未来と抱く理想に思想の是非を賭け、全知全能を挙げてぶつかり、対峙する・・・と、いった壮大な物語だ。
 ・・・まあ、その内容の所為で出版直後に、当局から発禁処分を食らった曰くつきの一冊でもあるが。
 英語とかならともかく、グリシーヌは日本語には疎いから、辞書を手に読み進めるのはヘンではないが、日本語の辞書もあるって事は、意味を調べながら読んでいるというコトか。
「でも、辞書はともかく、ノートなんて必要ないよな?」
 手に取って、ぱらぱらと適当にめくる。 
 そこに見い出したのは、日本語の進化の過程だった。
 始めはよくいって落書き、または象形文字にしかみえないモノが、ページを進める度に輪郭とサイズを整え、遂には漢字、カタカナ、ひらがなへと見事に変貌を遂げていた。
 しかもノートの各所にはびっしりと、赤鉛筆で注意や線等が書き込まれている。綴りや文法の違い、誤字脱字に至るまで指摘は丁寧だが甘くは無い。
「・・・これは、花火くんの字だな」
 書道を始め、様々な事に通じる彼女ならこういうのもお手のものだろうけど、まさかグリシーヌの日本語の先生をしていたとは以外だった。
 普段の自信と気品、覇気に満ちた態度の陰で、こうした努力を厭わない態度はいつか見た光景・・・深夜の帝劇。暗い舞台の上でひたむきに汗を流し、己と向き合い先を目指し続けてきた努力家やトップスタァ達の姿を思い出させる。
「ーーーーーーーーー」
 不覚にもグッときてしまった。
 無言で枕を戻して、次に真ん中の枕を持ち上げてみる。
 ーーーと。そこにはどこかで見たような安上がりな人形が置かれていた。
 黒のフェルトで作られたとんがった髪と、黒のボタンで出来た目を持つぬいぐるみ。
 加えて、もこもこの両手には丸っこい刀らしきものを持っているときた。
 見覚えがあるというか、見れば見る程、大神一郎の普段着とよく似た服装を目の前のそいつはしている。
「っーーーーーー!」
 思考が戻るや、ばふっ、と枕をベッドに戻す。
 なんか、とんでもなく顔が熱い。
 それは例えば、どうしてあんなぬいぐるみがここにあるのかとか、偶々街で似ているぬいぐるみを見つけて、一生懸命になって手に入れたのかとか、それとも誰かに頼んで作ってもらったんだろうかとか、もしかしたら自分で作ったんだろうかとか、枕の下に忍ばせているって事は抱いて寝ているのかとか、一人きりの時はなんとなくぬいぐるみに話しかけてたりしてるのかとかーーーーーー。
 あ、いや、俺だって彼女のプロマイドは肌身離さず持っていて、手持ちぶさたな時はそれを眺めるのが半ばクセになってるけど、それとこれとはその、破壊力がケタ違いだと言うかーーーーーー
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
 顔から火が出ているような熱さに囚われながら、一目散に屋敷の外へと飛び出した。
 誰にも見つけられずに済んだのがせめてもの幸いだったとはいえ、自業自得とはこういうコト。
 ・・・・・・ほんと、明日からどんな顔してグリシーヌと会えばいいんだろうかーーーーーー?

 3、・・・グリシーヌの箪笥の中身が気になるワン!
 ・・・ほう、箪笥の中身ですか。
 それはもちろん、箪笥に隠されたグリシーヌのヘソクリが目当てなんていう当たり障りのないオチでは無く、もっとこう、箪笥の本質に迫る中身が目当てなのですね。
「ーーーーーーフン、体が勝手に動いたか」
 箪笥を前にして、口が独りでに動いた。
 それは邪な気配を察知し、脳髄の隙間を縫って正常な人格を変貌させる毒に他ならない。
 古では啓示。理では衝動。所によっては電波とも呼ばれる疑似人格。
 ソレに汚染された人間は、わずかの間ながら別人として行動する。
「・・・・・・と、いう訳なので、失礼します」
 パンパン、と手を叩いてから引き出しを引いた。
「おおーーーー!?」
 ピカー、とか光らないのが不思議なぐらい、引き出しの中は素晴らしかった。
 ・・・さすがグリシーヌ、このコレクションはちょっと普通じゃないぞ。
 オーソドックスな白から始まり、微妙な色彩変化とモデルチェンジを加えて、実に一段百を超える幅広さ! 
 ちゃんと区切りで仕切られているのも高ポイントです。
 ぱっと見、一口チョコが詰まった高級セットを連想させます。
「ーーーーーーやば」
 くらり、と眩暈をおこしそうな意識を支える。 
 ヘヴンだ。引き出しの中には天国があるって本は本当だったんだ! ありがとう、ありがとう未来の科学!!
 ・・・さて、それでは。
「・・・大神中尉、突貫します!」

「うわ! こんな形のもあるんだ! ・・・そうか、舞台の時は普通のじゃなく、こんなのを選んでたのかー。あんなドレスなのに線が出ないから不思議に思ってたけど、なかなかどうして、グリシーヌも女の子だよなーーー」
 長年の疑問が解消された事にふむふむ、と頷きつつ、更に下の引き出しを開けてみる。
 下はブラやキャミソールとかがメインで、さっきの段ほど一目でくらっと来るものは少ない。
「・・・・・・意外、割とスポーツタイプ少ないな」
「ほう。なぜ意外なのだ、隊長?」
「いや、だってさ、グリシーヌいつも街中で忙しそうにしてるのよく見かけるから、てっきり動きやすさ重視かと思ってた」
「ふむ。なぜ、動きやすさ重視なのだ、隊長?」
「だーかーらー、グリシーヌ華奢だけどスタイル抜群じゃないか。今からちゃんと子供ができたり、年をとった時に備えてしっかり固定しとかないと、せっかくのラインが崩れちゃうぞ」
「ふふっ。それは巨大なお世話というものだ」
「そうかー、巨大なお世話かーー」
 あははー、と一緒になって笑う。
 ーーーさて。
 そろそろ、この絶体絶命のピンチを切り抜けるきっかけを作らないと命に関わる。
「・・・・・・・・・」
 ギチギチギチと、音を立てて首だけを後ろに向ける。
「ーーーそれで。そろそろよいか、隊長」
 グリシーヌ。それはそろそろ逝きますか、という意味ですか・・・?
「まあ、待った。何も、悪気があった訳では、ない」
 そろそろと引き出しの中に両手を差し入れる。
「・・・彼が悪ではなく、彼は悪魔ではなく、彼は悪人では無い。だが、赦される事はなかった。か。貴公の墓碑銘とするには勿体無い程だな」
「うわーー、グリシーヌったら本気だーー。グリシーヌ短気、グリシーヌおとなげなーーい!」
「っ! あ、あの馬鹿ロベリアか貴公は!!」
 ぐわっ、と火を吐くグリシーヌ。
 ちゃんす!!
「てやっ!!」
 それ迄、引き出しに突っ込んでいた両手を目一杯広げて万歳する。 ぶわさ、と花吹雪もかくやに撒き散らされるインナーの束。
「ーーーーーーーーー!」
「隙ありーーーー!!」
 しゃっ、と素早く手近の窓を開けてまずテラスへ。
 手摺を乗り越え、植木に飛び移ってそこから庭に降り立つや、転がるように走り一気に外へと脱出を図る。
「待たぬか隊長ーーーーーーっ!!」
 ものすごい剣幕で部屋から飛び出してくるグリシーヌ。
 だが、このアドバンテージを渡す訳にはいかないのだ。
「ふははっ、待たないよ。ほとぼりがさめた頃にまた会おうっ!!」
 しゅたっ! と、片手を上げて怒声に応える。
「こ、このぉ・・・・・・!! 明日五体満足でシャノワールより出られるなどと思うなよっっっっ!!」
 止む事なく背後にかけられる罵り雑言を振り切って、安全と思える所まで走り抜ける。
 ・・・やばいなあ。ちょっとしたイタズラ心だったのにどうしてこうなったのか。
 タイミングが良かったというか、魔がさしたというか、逢魔が時の魔力というか。
 ・・・まあ、何にせよだ。
 張り詰めていたものが消え、グリシーヌが追いかけてこない事を確認して立ち止まった。
 ・・・最後に。一つ、これだけは言っておかないと。
「グリシーヌーーーー!!」
 まことに残念ながら、彼女がどんな顔をしているか迄はわからない・・・・・・と、言いたいところだが見ててくれ。俺、勇気を出してさっきの悪行を告白するから!
「可愛いもの好きなのはいいけど、クマさんプリントは止めた方が・・うわらばっ!!」
「ーーー逝ってしまえぇぇっっっっ!!!!」

 ・・・生身の人間に向かっての、霊力全開の必殺攻撃はいけないとおもいます。
              ーーーDEADEND。
 ・・・芽瑠先生の授業(特別補習)を受けますか?
                  Yes
                  No

 ・・・危険ネタの第一波。コレ、削除対象にはならないよな・・・? ならないと思おう、うん(弱気)。
 
     SS書けぬ故に改変する。
      我(オレ)は一ネタに賭けるヒマ人・・・。

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