[サクラ大戦BBS]

MAKING APPEND NOTE
まいどぉ への返事
 以下はTwitterで設定考察と言うか妄想ネタ弄ってたら久々にテンション上がってきたので文章にまとめたものです。
 一応原作内の設定は踏まえてるつもりですが、未公開の部分が多すぎるのと検証雑に済ませているのでほぼ大半が個人的な想像と言うか妄想ネタです。
 ご了承下さい。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 時に太正八十年代、世界は概ね平和であった。
 最初で最後の世界大戦、その後に各都市で発生した魔の者達による騒乱、全世界を巻き込んだ巨大な力との対決、それらを経て・・・世は長きに渡る平穏な日々を過ごしていた。
 無論、何の事件もなかった訳ではない。
 人の世が続く限り、人の想いが有る限り、人が嘆きを哀しみを持つ限り、それらを糧として闇に影に蠢くモノどもが尽きる事はなく、そこから湧き出すモノを絶やすのは容易ではなかった。

 しかし、それも今は昔・・・

 魔に抗う者達の長きに渡る戦いの末か、或いは世界に人知の及ばぬ何某かの変転があったが故か、少しずつ・・・少しずつ・・・魔の者達は数を減らし姿を消し、気が付けば身命を賭して人の世を魔の手から護った者達がいた事すら忘れられる程に、世界は平和な日々を謳歌していた。
 穏やかな春の午後のような平穏な日々。
 それを恥ずべき弛緩と、ぬるま湯に浸ったが如き軟弱と謗る者もいないではなかったが、大多数の人々はそんな(やや退屈ではあるが)平和な毎日を良しとし、昨日と変わらぬ今日が、今日と変わらぬ明日が、これからもずっと続いてゆく事を当たり前の事として日々を過ごしていた。

 その日、までは。



「日比谷周辺に妖力反応多数!!」
「新宿にも大型の反応を複数確認!!」
「映像、出ます!!」

 年に数度の訓練以外では見た事も聞いた事もない警報が劇場地下の指令室に鳴り響く。
 そこに詰める隊員の誰もが初の実戦の緊張と困惑を浮かべている。

 “これは本当に起きている事なのか?”
 “今時魔物なんているか?”
 “何かの質の悪い悪戯なんじゃ?”
 “どうせいつもの不意打ち訓練だろ”
 “今日予定があるのに、困るな”

 そんな疑念や楽観がメインスクリーンの転換と同時に霧散する。
 そこに確かに「それ」はいた。

 ざわり、と驚愕の渦が指令室を地下基地全体を包む。
 各部署に配置されたモニターによる情報共有で指令室の外にいる者達も見たのだ、古い記録映像でもVFXによる合成でもない。確かな実在感を纏って見馴れた街を闊歩する異形の姿を。

「こ、こんな馬鹿な」
「いやいや、あり得ないって」
「待って、人が!?」

 彼等は見た、見てしまった、異形の黒く節くれだった巨腕が血に染まるのを。
 驚愕、放心、恐怖、そして悔恨。
 ここにいる自分はアレと戦うのか、と認識し、なのに犠牲者が出る瞬間を座して見るしかなかった現実が、彼等の思考を縛ろうとしたその刹那。

「ぼっとしてるんじゃないよ!!
 さっさと動きな!!」

 裂帛の気合いと激しい怒りに満ちた檄が皆の心を呼び戻した。
 部屋の最奥、指令の席で仁王立ちしているのは青島きりん。怒気を漲らせ憤怒の形相を浮かべた様は正に仁王、いや明王の如き迫力であった。
 数年前に帝国歌劇団の舞台を退き、そのまま帝国華撃団の指令となった彼女が憤っているのは隊員達の不甲斐ない様、ではない。
 映像に我を忘れ指示を怠った自分自身への激しい怒りが、他より一歩早く、魔の呪縛とでも言うべき衝撃から己を解き放ったのだ。

 司令の檄により帝撃全体が再び活力を取り戻した。

「付近の警察に避難指示の要請を!」「出撃準備! ルート算出急げ!!」「軍の応答はどうなってる!」「対魔兵装まだか!!」「目標の妖力値計測完了!!」「出遅れたんだ、目一杯急ぎな! けど慌てるんじゃないよ!!」

 一時は我を忘れた彼等だったが、いつか来る(かも知れない)この日の為に訓練は重ねてきた。再び動き出せば対処は速い。瞬く間に帝撃の主戦力たる対魔迎撃部隊の出撃準備が整っていた。

「司令。帝国華撃団花組、総員揃いました」

 殺気立った指令室にそぐわぬ華やかな、もしくは艶やかなと言って良い清んだ声が響く。
 同一のデザインを個別の色に染めた戦闘服を纏うのは皆、歳若い女性達だ。
 遠く太正十年代初頭から、霊子甲冑と呼ばれる霊力兵器を用いて帝都を魔の者から護り続けて来た乙女達。
 その使命を現代に受け継いだのが彼女達、帝国華撃団花組であった。
 今の隊長は青島きりんに代わり帝劇トップを勤める咲良なでしこ。
 時に可憐に、時に苛烈に、時に奔放に、舞台を縦横に舞い踊り観客を魅了する様は、帝劇創設期の伝説のスタァ達に勝るとも劣らぬと評される。
 そしてその実力はそのまま霊力の強さとなり、霊子甲冑を用いた戦闘でも他を圧する輝きを放っていた。
 ・・・シミュレーションの上では。

「見ての通り、敵は日比谷と新宿の二ヵ所。日比谷は軍に抑えてもらうとして、こちらはまず新宿の大物から叩く」
「全員で、ですか?」
「全員で、だ」

 霊子技術の発展によりかつては華撃団専用だった霊子兵器群は軍にも多数配備されている。しかも近年の魔物の出現数がほぼ皆無になった事による予算削減、いわゆる「帝撃不要論」により、兵装の質は軍に配備されている物の方が対魔物の専門組織である華撃団のそれよりも上回る事態となっている。
 時代遅れのお飾り集団。過去の栄光にしがみつく小娘ども。
 そんな嘲笑に晒された記憶を持つ者も少なくない。

 いかに敵の数が多いとは言え軍に対応を委ねるのは、彼女達花組が、そして華撃団全体が、密かに抱えるコンプレックスを強く刺激せざるを得なかった。

「司令! 私達だけでもやれます!!」
「そうです、軍に任せなくても戦えます!!」
「司令!!」「きりんさんっ!!」
「・・・うろたえるんじゃないよ」

 口々に異議を唱える少女達を真っ直ぐに見返し、青島きりんは有無を言わせぬ口調で語り始めた。

「帝撃の使命は何だい?
 自分の力を見せつける事かい?
 軍と手柄を競い合う事かい?
 違うだろ?
 私達の一番の使命はこの帝都を、そこに暮らす人々を守る事だ。また笑顔で劇場に来てくれるよう一人でも多くの命を護る事だ。
 その為に必要なら、手柄の一つや二つ惜しむ事はない。軍にくれてやりな」

 しん、と。指令室のその一角が静寂に包まれた。
 出撃準備は進んでいる。情報を得る手も止まっていない。寸刻を争う緊迫した状況に変わりはなく、それによって生じた喧騒も途絶えてはいない。
 ただ青島きりんと、咲良なでしこ率いる花組の乙女達だけが、静謐な空気に満たされていた。
 まるで何かの、神聖な儀式のように。

 彼女達の脳裏には同じ光景が浮かんでいた。
 ある者は舞台袖から、ある者は背景の隙間から、ある者は客席の最後尾から、そしてまたある者はスポットライトの光輪の向こうから。
 それを見た場所は違っても、観たものは皆同じ。
 記憶に、いや心に強く焼き付いたあの光景こそが・・・

「みんな、気持ちはまとまったわね」

 なでしこの声に全員が無言で頷く。
 惑いは晴れ、護るべき物は見出だされた。
 決意に満ちたその顔に、余計なもう言葉は必要ない。

「咲良隊長、号令を」

 青島総司令から指示が下る。
 これまで何度も繰り返し、しかし決して実戦には至らなかったその言葉を、花組隊長咲良なでしこは発した。

「帝国華撃団花組、出撃!!」


(完)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 で、この初出撃で現隊員の霊力がかつての花組に遠く及ばないのが露呈したりなでしこさんも一般人よりちょい上程度の力しかないのが発覚してしまったりする訳ですよ。<ヲイ
 死力を尽くして大型(四足)タイプの降鬼はなんとか倒せたものの隊は半壊。ほとんどが傷を追い今後も戦えるのはなでしこさん含め三〜四人。それも次第に欠けてって最後は一人に・・・と言うのが今の個人的な想像でしょうか。
 本当はもう少し引っ張りたい気もしたんですが、ものすごく久々の長文なのと初のスマホ書きに力尽きたのでとりあえずこの辺で。

 ではまた。

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