[サクラ大戦BBS]

MAKING APPEND NOTE
夢織時代 への返事
夢織時代です。
本文はサクラ大戦の起こり得た可能性のある未来の一つと言われるサクラ革命のクリア後の物語です。
設定上、新サクラ大戦及びサクラ革命の全バレを含みます。


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巻頭特集「祖父が孫娘に語る太正史」
(1、2ページ No.343を全面使用。花屋敷研究所前、八重桜の前で祖父と可愛い孫娘の見開き写真)
[付箋:中央から右に35mmずらす。しのがページの間に掛からないよう]


 ねえおじいちゃん。桜って、常咲樹だよね。なんで葉が出てるんだろう。こんな桜見たことがない。

 うむ、そうだな。現代に生きる我々は年中咲き続けている桜を当たり前のように眺めておる。だが元々桜とは、そういうものではなかったのだ。春のひとときにのみ、刹那のように咲き、花びらを散らして葉を見せる植物だったのよ。

 じゃあこの桜は、普段見ている桜じゃなくて昔の桜ということ?

 そうだ。よくわかったなしの。かねてより大帝國華撃団花屋敷研究所で、昔の桜を再生するべく研究を続けてきた、その最新の成果がこの葉桜なのだよ。

 でもどうして昔の桜は消えてしまったの。それに私、今の桜以外にずっと花が咲いている植物って知らない。昔の桜の代わりに、今の桜にしないといけないわけがあったの?

 その通り。今日はそれを語るためにお前に来てもらったのだよ。この桜の交代は、二つの都を一つにする戦いの折に、昔の桜は日本中から……いや、世界中から死滅することになったのだ。

 死滅……全部枯れちゃったってこと?どうして!?

 壮絶な、あまりに壮絶な戦いがあったからだ。真宮寺さくら、という名前は知っているかね。

 うん、初代帝国歌劇団花組の一人。お母さんの憧れだった……ううん、たぶん今でも一番憧れの大スタア。

 そうだったな。なでしこは幼い頃より真宮寺さくらを目指しておったわ。それは正しい。だが、帝国歌劇団ではなく、攻撃の撃、帝国華撃団としての彼女については知っているかな。

 降魔迎撃部隊花組、ってばば様が言ってた。あとは……覇者の決闘?神崎すみれさんとの決闘が有名なんだっけ?

 うむ……惜しい。破邪の血統、が正式な名称だ。日本を古来より魔から守ってきた一族の末裔であった。それが故、幼い頃より幾度も魔物に狙われることがあったという。そのうちの一つで、一度、当時は蛇桜と呼ばれていた地元にある巨大な桜を通じて、日本を流れる地脈と繋がってしまったことがあったのだ。それに破邪の血統たる彼女が飲み込まれてしまったことで、日本中の地脈の末梢神経ともいうべき部分が、日本中にある桜の木と繋がってしまったのだ。厳密には、世界中の桜の木とな。

 末梢神経が繋がった、ってことは、日本中の桜が日本の霊脈と繋がってしまったってこと?

 その通りじゃ。当時はそのことに誰も気づいてはいなかったのだがな。その状態で、あの太正三十年代の降魔皇再臨が起きた。

 えーっと、えーと……。

 ……う、うむ、義務教育での近代史の充実化が急務であるな。降魔は元々日本の東京湾を発祥とする魔物だが、太正十年代の一連の騒動の結果として、南極を含めて世界中を脅かすようになっていた。降魔皇とはその発祥となった人物の、降魔たちを従える存在としての異名だ。太正十九年に世界中を危機に追いやった降魔皇は、伝説の大神一郎司令率いる世界華撃団……俗にいう大神華撃団による二都作戦により、発祥の地であるこの東京と鏡合わせに存在する風水都市に封印されていた。

 大神一郎!あの、伝説の大帝国劇場モギリ!

 間違ってはおらんが事実の全てではない。おそらくは歴代の全華撃団の中でも最強と言われた隊長というべきところだ。降魔皇と降魔は大神華撃団により一旦は封印された。ただし、大神華撃団もまた風水都市幻都に縛られ続けることになった。これにより世界には十年の平和がもたらされた。しかし、降魔皇の腹心を始めとして、世界中に降魔と人間とが合わさった降魔人間が太正二十年代にひそかに増加していくことになり、世界全体が魔に傾き、十年の封印が破られて世界は再び降魔皇の脅威にさらされることになった。

 大変じゃない!

 大変だったとも。だが神崎すみれと神山誠十郎らによる華撃団救出作戦が時を置かず成功し、二世代華撃団と降魔たちとの互角の戦いが繰り広げられた。

 おおお。でもおじいちゃん、桜の話はどこへいったの?

 もうすぐその話になるところだ。先ほど言ったように、世界中に広がったとはいえ、降魔は本来東京湾に出自がある。五百年前に起きた放神の儀の失敗の犠牲者が、この世と生者に対する計り知れない怨念を抱いたことで誕生したのだ。

 放神の儀っておじいちゃんがやろうとしたこと?

 呼び寄せようとしたものが微妙に違うが、別次元から強大な概念集合を呼び寄せるという点では同種のものだ。だからこそ私はあれを放神の儀と呼んだのだ。どちらも、呼び寄せられたものを受けた人間が、人間でいられなくなる、という点でも共通している。その恨みは滅ぼされてもなお残り、魔物を滅ぼそうとすればする戦いによって、なおさら火に油を注ぎ続けることになった。

 そんなの倒せないじゃない!

 そう。事実、倒しきれなかったのだ。二世代華撃団による突撃作戦によって降魔皇を三度目の敗北に追い込んだものの、そのままでは再び降魔皇は蘇ってしまう。降魔が世の中に一体でも残っている限り、この世に恨みが残っている限り、降魔皇はどうあっても滅ぼせなかったのだ。

 どう、やったの。

 その儀式の名は伝わっていない。ただ、何をなされたのかはわかっている。降魔発祥の地である風水都市大和を、五百年に亘る時の過程全てに亘って浄化するという大儀式が行われたのだ。世界中の降魔が抱いている恨みの根源を絶ち、浄化するという、壮絶なる大儀式だ。

 そんなとてつもないことを、大神一郎がやったの?

 彼はそのための道筋と場を整えた。だが、この日本そのものに長らく打ち込まれた恨みを解き放つには、どうしても、この日本の全てをもってするしかなく、さしもの大神一郎でも力が足りなかった。本来はそのために用意されていたと思われる魔神器は、その時代には諸事情により失われていた。魔神器の代わりとして、魔神器以上の神器を使われるお方でなければ、その儀式はできなかったのだ。おそらくは遷都より七十年、そのための準備を長らく調えてこられたのだろう。

 まさか、その儀式をやったのって……。

 いと尊きお方。我らが太正の御代に冠たるお方よ。日本だけでなく、世界を守るために。引き換えに、尊きお方はお隠れになった。崩御されたのではなく、文字通りお隠れになったのだ。まるで、岩戸の向こうにでも失われたかのようにな。東宮様は即位されたものの、尊きお方の帰りを待つまで、元号をそのままにしておくことを提案された。もちろん、助けられた国民は泣きながらそれに賛同したのだよ。

 だから、今は太正101年なの。

 そうだ。この年号を続けることで、我々はそのことを忘れない。そして、待ち続けることにしたのだよ。そして、ようやく桜の話だ。風水都市大和を根源から浄化するためのエネルギーは、放神の儀の後に魔界からやってくる全エネルギーに対抗しなければならない以上、莫大なものだった。そのために、シルクロードの終着点として世界の地脈の果てである日本列島の霊脈の力、ほぼ全てを注ぎ込む必要があった。フォッサマグナに代表される大地に眠る力を、地上へと引き出すことになった。このときの地殻変動で特に京都や近畿の地形も大きく変わってしまった。琵琶湖があんなにも深くなったのはこの時の影響なのだよ。

 わかった!そのときに世界中の桜の木が使われた!

 大正解だ。破邪の血統の末裔、真宮寺さくらが結んだ縁が、確かに功を奏したと言えよう。ただ、その力はあまりにも大きく、世界を降魔から解き放つ代わりに、桜の木もまた、世界中から失われたのだよ。

 みんな、すごく残念に思ったんじゃないかな……。

 そうだとも。世界が救われた代わりに失われてしまった桜を、皆が惜しんだ。太正桜に浪漫の嵐を。そのかけ声の下、人々は失われた桜の代わりに、太正桜という霊樹を日本中に植え続けた。葉緑体に光を受けて育つ植物ではなく、大地と人の霊力を受けて育つ。そのため、植物でありながら葉を持たず、一年中花を咲かせ続ける。これが、今我々が普段目にしている常咲樹としての桜だ。これをもたらしたのは、巴里華撃団が縁を結んだ古の巨樹の精霊だとも言われておる。

 だから、ミライエネルギーを取り出そうとしたときに桜はあんな風になっちゃったんだね。

 人の霊力のみならず、桜からも霊力を奪ってしまったことは私の大誤算だった。だが、その失敗はお前たちが打ち砕き、本来の桜の姿を取り戻してくれた。本当によかった。あのままでは、私はいと尊きお方に顔向けできぬところだった。

 でも、私だけじゃ絶対無理だった。司令も、花組のみんなもいてくれたし、それに、この神器も。

 そうだったな。お前の手にそれが渡ったことは僥倖と呼んでよい。実のところ、太正桜だけでは激変した日本の霊脈を抑えることができず、神器の写し身を作り日本中に配することで、ようやく日本の霊脈を安定させることができたのだ。神器の写し身はそのまま、あのときの儀式の名残として、日本をめぐる霊脈と繋がっている。だからこそ、霊子ドレスや降鬼を祓うといった奇跡につなげることができたのだ。

 これってそんなすごいものだったの!?

 西日本を支える四つの鏡と、東日本を支える四つの玉。そして、これらを繋ぐ四つの刀。12の神器の一つだ。

 9つじゃなかったの!?

 神器の真の意味を知らせないための青島きりんによる攪乱情報だ。本来N12とはこの12の神器を使用する必要に迫られたときのための選抜メンバーだったのだから。

 えええええええ!?

 
フォッサマグナの延長線上となる佐渡と青ヶ島、そしてこれを挟む吉備岡山と奥州平泉の四か所に、神器の写し身たる刀が置かれた。いわば、霊脈を制御する杭のような役割としてな。青ヶ島に烈刀獣断が置かれていたのはそのためだ。お前の持つ烈刀王断はそれと対になり、元は佐渡に置かれていたものだ。

 それがなんでお母さんの手に?

 崩れたからだ。予期せぬタイミングで。崩れるはずの無い12の神器による構図が何者かによって崩された。私がそれをはっきりと悟ったのは、吉備岡山の地にあった、抜かれるはずのない烈刀が抜かれたことを知ったときだ。

 ……え?

 人里離れた深山幽谷の真っただ中、幾重の結界に守られ、人間の手によっては決して抜けるはずがない状態で霊脈に繋がっていたはずの刀が、お前もよくしる人物の手によって抜かれてしまった。

 まさか……、もえみちゃんのエクスカリバー……。

 そうだ。彼女にも多少の責任はあるが、むろん、彼女だけの責任ではない。本来、抜こうと思って抜けるはずがないものだからだ。これに時田松林が関与していないことは梅林に徹底的に調査させて確認済みだ。だが、この刀が抜かれたことを知ってしまったために、時田松林が革命を急いだ可能性は高い。

 抜いたらまずかったの!?

 不味いも不味い。特にその段階では既に、玉と鏡の神器は既にミライエネルギーのために活用していたからなおさらだった。下手をすれば再度霊脈による大変動を起こしてしまうため、私は佐渡にある烈刀王断を取り寄せて、新帝都タワーの制御に使わなければならない羽目になった。

 どうしよう……、一連の発端がもえみちゃんってことに……。

 安心しなさい。それはあり得ない。彼女一人のせいでそこまでのことになるはずがないからだ。だが、我々が懸念すべきはその裏事情にある。

 裏?

 そうだ。抜けるはずがない刀を、鷲羽もえみによって抜けるようにした何者かがいる。それがもたらす事態の大きさを、そいつはわかってやったはずなのだ。だから日本国民諸君。気を付けねばならない。私の野望は可愛い孫娘によって阻まれたが

 そんなかわいいなんて、やだなあおじいちゃん!

 私以外にも、世界に影響を及ぼす野望を抱くものがいるかもしれないのだ。治に居て乱を忘れずとは、帝国華撃団初代司令、偉大なる米田一基の座右の銘である。季刊モーを愛読する心ある諸君には、次なる戦乱を防ぐために是非とも調査に協力して頂きたい。







「というのが次号のメイン企画予定なのだがよろしいかね青島きりん顧問」
「あんた首相を辞めた途端に、与太話に混ぜて最高機密をばらまくのを趣味にしてないかねえ吉良編集長!」
「木を隠すなら森、というではないか」
「森の中に常咲桜植えたって目立つって言ってるんだよ!」

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