[サクラ大戦BBS]

MAKING APPEND NOTE
如月紫水 への返事
こんばんは!はじめましての方ははじめまして!
奏組のアンケートで過去のサクラ大戦の公演を何回見た事ありますか?の項目でリアルに数えられず「紅蜥蜴から毎公演見てます」と書くしかなかった如月紫水です。

奏組の発表からこの日まで。正直、不安と期待が入り混じりすぎて落ちつかなったのですが、いざ初日を劇場で体感して「これは、サクラ大戦の舞台だ!!」と楽しめたので…これは、レポるしかない!!と相変わらずな謎思考でキーボードを叩いております(笑)

ちなみに、この日程だとどうしても全通が出来ず……私が観劇したのは初日、2日、5日、7日、8日、10日昼夜、千穐楽の計8公演です。

会場BGMが歴代の帝都BGMで「あ、お正月」「あ、見回り行かなきゃ」「あ、桜花絢爛のあれだ」「あ、第一話の戦闘シーン!」とかなり高まる期待。
そんな中、開演の鈴の音のような鐘が鳴り上手から風呂敷包みをつけた木の棒を担いだ書生さん(源三郎のような和装に長い黒の外套を着てハンチング帽をかぶっている)がスタスタと現れ、中央で立ち止まると、木の棒を立てかけて、風呂敷包みを置き、先端にあった袋を外すと……なんとマイクでした(笑)
「あ、あ」と音が入ることを確認してから、咳払いを一つして整えると笑顔で話しだします。

8日、10日夜
書生が登場した所から拍手がおこり書生が「ありがとうございます」と言ってからの前説となりました。

書生「本日はサクラ大戦奏組、雅なるハーモニーにお越し頂き
   誠にありがとうございます。
   開演に先立ちまして、お客さまにお願いがございます」

かなりスマートに前説が始まりました!
注意内容はいつもの「劇場内では飲食禁止」「蒸気携帯電話など音の出るものの電源を切る」に加え「蒸気カメラや蒸気動画キャメラなどの許可の無い撮影は禁止」と新しいものもはいってきました。

書生「それと、ここだけの話しなのですが…
   ここ帝都東京の街では今、これ(右手を高く上げて、人差し指をくいくいと動かすスリの動作)
   が横行しています。
   置き引きやスリには、くれぐれもご注意ください」

深々と頭を下げたところで、下手から走り込んでくる一人の洋装の男性が…あれ、本編入った!?

男性「ああ、そこの書生さん!ちょいとすまねぇが、道を教えてくれないかい?」
書生「あ、ええ僕でよければ」
男性「あのよ(近づいて、肩を強引につかんで上手へ)駅に行きてぇんだけどよ
   どっちが北か、どっちが南かわからなくなっちまってよぉ」

書生の注意を自分に向けさせた男性がチラッと隙を窺い舞台奥に手まねきをすると、それを合図に舞台の奥から赤い手ぬぐいでほっかむりをした眼鏡の男性がそろそろと書生の荷物に忍び寄るのですが

書生「最近の帝都の変貌っぷりはすさまじいですからね〜
   いいですか、駅に向うには(くるりと振り返り下手へ)
   ここを真直ぐ進み大通りにぶつかったところで左へ。そして…」

慌てて書生の荷物から離れるほっかむりの男。そして慌てる洋装の男性。
それに気づかず素直に道案内をする書生さん。
なんだかコントのような様相になってきましたが(笑)
そこへキセルを手にした妖艶な和装の女性が下手上段から現れ一同に声をかけます。

女性「ちょっとあんた。いつまで油売ってんだい。駅への道ならもうとっくにわかったよ」
男性「な、なんだそうなのかい!書生さん、すまなかったね」
書生「ああ、いえいえ。どうぞお気をつけて」

と、書生の注意が完全に女性と洋装の男性にうつった隙を窺い、ほっかむりの男が素早く風呂敷を抱えて舞台の奥へ去っていきました!やられた…!!
何も気づかず女性も洋装の男性も足早に去っていくのを見送った書生さん。挨拶の締めに低姿勢で中央に戻るのですが…

書生「それでは大変ながらくお待たせいたしました。
   まもなく公演です。どうぞ最後まで……あれ?(頭を下げようとして風呂敷が無い事に気づく)
   無い…(マイクを担いで、辺りを見渡す)…僕の荷物が無い!」

最後に様子を窺っていた女性がしてやったり、とニヤリと笑って去り、書生さんが叫ぶと同時に暗転。
そして、鳴り響くあの音!!

♪円舞曲、君に

前奏の演奏部分に合わせてジオが上手上段から、源二が下手上段から、ルイス、源三郎、ヒューゴは舞台奥からそれぞれ楽器を吹きながら現れ(指使いはもちろん、前奏に合わせています)戦闘服の奏組が舞台上段に勢ぞろい!!
ライトもそれぞれのカラーで合わせてカッコイイ!!(が、決めポーズが一部カッコイイとアレなののぎりぎりの線の上にいる…!いや、ぎりぎり愛嬌ってことで!!)
フルバージョンはPVとは全然違ってて、最初はビックリしましたがさすがの主題歌!!ぐっと引きこまれます。

全員
いま 幕が上がる 光の中に
<ヒューゴ、源二、源三郎>闇に生まれる恐怖
<ルイス、ジオ>闇に隠れる魔物
<全員>打ち払う 我ら 奏組


<ジオ>それぞれ違う音色を
<ヒューゴ>心動かす
<ルイス>若さあふれる
<三人>音色を

<ジオ>守るべきもの まさに守るために 戦おう

<源三郎>冬の寒さを耐え抜き
<源二>生きる力を抱きしめ
<ルイス>愛の奇跡を
<三人>信じて

<源三郎>胸にいっぱい 満開のサクラ 奏でよう

<源二>自由、、、逃げる事も とどまることも 自分しだい
<ルイス>浪漫、、、憎むことも 愛することも 自分しだい
<ヒューゴ>けれども あえて 戦い挑もう それが悔やまないことさ

<全員>いま 幕が上がる 光の中に
<ヒューゴ、源二、源三郎>未来のリズム刻もう
<ジオ、ルイス>希望を音に乗せて
<全員>フォルテシモ! 我ら 奏組

ソロパートでは歌い手にスポットが当たり、他のメンバーはおおよそ背中を向けて踊るのが何だか新鮮でした(今までのサクラですと、多少の違いはあっても歌い手以外が目立たないようになっている作りは無かった気がしたので)
間奏部分では、台詞と共に奏組が下段へ(合間にも、台詞の無いメンバーは演奏=戦闘して降魔を倒す)

源二「おお、すげぇいっぱいいるな!」

まず、源二がいち早く下手階段を降りて下段へ。
それに続く源三郎

源三郎「早く片付けて帰ろうよ」

兄弟が背中合わせてでそれぞれ敵を倒すと、ルイス、ジオ、ヒューゴも下段へ。

ルイス「源二くん、源三郎くん。油断は禁物ですよ」
ジオ「うむ、速やかに処理しよう」
ヒューゴ「帝都の平和を脅かす魔の芽は、我々奏組の手で摘み取る!
     あの方たちの手は煩わせない!
     事件は、プレリュードのうちに!!」
全員「シー・マエストロ!!」

最後にヒューゴが上手で号令を出し、全員が右の拳を胸の前に当てて応える。
(「それが、帝国華撃団なのです!」と同じ動きです!!)
この間に、総楽団長であるシベリウスさんが舞台奥から現れ、上段下手から奏組の戦いを見守る。
ここから二番へ。
五人の立ち位置が歌の間にどんどん変わっていくのが何だか新鮮。

<源二>きみの音楽聞かせて
<源三郎>ぼくらの明日を語ろう
<ジオ>ふたりの夢を
<三人>重ねて

<源二>こころ弾ませ 熱く響き渡れ この思い

<ルイス>春の陽差しを感じて
<ヒューゴ>こころの傷を忘れて
<ジオ>あなたがそこに
<三人>いるから

<ルイス>胸にいっぱい 満開のサクラ 奏でよう

<源三郎>出会い、、、触れることも 別れることも いまを生きる
<ジオ>ミューズ、、、 笑うことも 悲しむことも いまを生きる
<ヒューゴ>聞こえる はずだ 戦いの調べ
<全員>だから歩きだすことさ

<全員>いま 幕が上がる 光の中に
<ヒューゴ、源二、源三郎>未来のリズム刻もう
<ジオ、ルイス>希望を音に乗せて
<全員>ぼくの 愛

そのまま盛り上がるかと思ったのですがまさかの転調が!!円舞曲のリズムがちゃんと入ってくるのです…!!
この転調…歴代主題歌で一番難しいんじゃないかと思います。

<全員>
幕が上がる 光の中に 幕が上がる さあ立ち上がれ
<ヒューゴ>春の風を
<ルイス>春の風を
<ヒューゴ>こころで感じて 幸せな日々を踊る  いま

<全員>きみのために きみのために 円舞曲 奏でよう
フォルテシモ! 我ら 奏組

でも最後はもちろん「フォルティシモ! 我ら奏組」で締め!
再び奏組が舞台上段に並び、楽器を吹くポーズで決め!(下手からジオ、ヒューゴ、源二、源三郎、ルイス)
が、歌が終わりバックライトで奏組のシルエットが浮かぶ中、金きり声と共に小さな光が会場を走り何かが飛び去る音が。

ジオ「一匹残っていたか!」
ヒューゴ「しまった…!」
源二「待て!!」

慌てて逃げた降魔を追い、階段を降りる面々ですが

源三郎「ああ…見失っちゃった」
ヒューゴ「追うぞ。手分けして探すんだ!」
ジオ、源二、源三郎「おう!」

一人上段に残っていたルイスも声はないものの頷き、全員が駆けだす。
奏組が全員いなくなったところで場面は変わり、蒸気機関車の車輪と煙の音と共に「東京駅ー終点、東京駅ー」というアナウンスが。
帝都のBGM(「帝都のにぎわい」)と共に、茶色のトランクと小さな唐草模様の風呂敷を背負った音子ちゃんが舞台奥から登場!物珍しそうに辺りを見渡しながら、下手階段から下段へ。
この動きと共に、音子ちゃんのモノローグが流れます

音子『前略 おじいちゃん
   ちゃんとご挨拶せず家を出てきてしまい、本当にごめんなさい。
   いつもわたしの味方をしてくれたおじいちゃんが初めて反対したこの帝都行き。
   でも、どうしてもわたしはこの夢だけは諦めきれません。
   だからわたしも、初めておじいちゃんに逆らいました。
   それだけの覚悟はできています。わたし…夢を叶えるまで、二度と家の敷居は跨ぎません。
   帝国歌劇団、花組のトップスタァとなって、舞台に立つまでは』

モノローグ中、トランクにつけた出雲大社のお守りにぎゅっと願をかける音子ちゃんがとてもかわいい。
最後は上手側でぱっと華やいだ笑顔を見せて「よーーっし!!」と気合を入れて上手へと走り去る。
それと共にBGMも鳴り止み暗転。

場面は変わり、おそらく帝劇のオーケストラピット。
下手から一般楽団服を着た三人組がケースに入った楽器(バイオリン)を持ちつつそれぞれ椅子を抱えて登場

加集「今日から、新しい演目だっけか」
襟戸「ああ「愛ゆえに」!まぁ、新しいっつっても再演だけどな。
   なんでも、前回の公演が大好評だったみたいで
   お客さんからもう一度見たいって要望がたっくさんきたんだってよ」
暮「とても感動的な話なのであります。
  自分、演奏しながら涙が滝のように流れてしまうであります!」

ちなみに、最初に入ってきた痩せ型で長髪をひとまとめにしているのが加集丈治。
二番目に入ってきた長身で短髪の人が襟戸勇
最後に入ってきた小柄でちょっと癖っ毛な子が暮鏡一。
二人の会話中、加集が上手に行き、さらに椅子を運んでくるのですが、暮の言葉を聞いて思わず駆け寄る。

加集「わかる!俺も!!」
襟戸「いや、演奏に集中しろよ!
   (前に出て)いいか?
   今や帝国歌劇団花組は、帝都中の女の子たちの憧れの的なんだ。
   なのに、その舞台の生伴奏を務める俺達奏組がへっぽこだったら
   乙女の夢がぶち壊しだろうが!」
加集「だな。そのためにも、日々練習!練習!」

二人を交互に指さし、再び上手へ椅子を取りに戻る加集。

暮「練習で流れるこの汗の一滴一滴が、明日への成功につながるのであります!」
襟戸「じゃあ、今日も張り切って、じゃんじゃん汗かいていくか!」

なんか、すごく男同士な会話だなぁと思っていたら、笑顔で汗かく宣言した襟戸に、加集が訝しげに眉を寄せながら一つ尋ねる。

加集「ときに襟戸くん…そのシャツ何日目?」
襟戸「四日目」
暮「不潔っ!!」
加集「ありえないから!!」

10日夜
襟戸「ああ、一週間!」
暮「不潔っ!!」
加集「ありえないから!!」

ざっと音を立てて引く二人に、襟戸は「いや、そんな臭わないだろ」と余裕の笑顔…うん、なんていうか男所帯なイメージまんまですね(笑)
でも、襟戸以外の二人はもうちょっと清潔感について思うところがあるようで、がっくり肩を落としながら準備再開。

加集「乙女の夢がぶち壊しだよ〜…
   もうちゃんと洗濯してよね。今は蒸気洗濯機っていう便利な道具があるんだから」
襟戸「ああ、あれ。ぽーんっと洗い物つっこんだら全部自動でやってくれる?」
暮「まさに科学の力。蒸気エネルギー研究のたまものであります。
  今やその洗濯機をはじめ、自動車、電話。なんでも蒸気の力で動くようになったであります」
襟戸「蒸気の力ねぇ…俺達はいつも、科学とは真逆の、非科学的なもんと、非科学的な力で戦ってるんだよなぁ」

加集が運んできた椅子の間に立ち、左手を顔の前に掲げ、戦うの言葉と共に右手をぶつける襟戸に、最下手の椅子に座り、ケースからバイオリンを取り出して準備をしていた暮の手が止まります。
(この間に、加集はもう一度上手に向い、さらに椅子を二脚並べる)

暮「降魔を倒す、我々の任務の事でありますか?」
襟戸「ああ」
加集「つっても、俺達は霊力低いから、サポートしかできないけどね…」

椅子を並べ終えた加集が二人の間を後ろから割り、暮の隣の椅子にあった楽譜をさっと取り、上手の階段へ座り譜面の確認に入る。
サポートしかできないけどね、があえてそっけない言い方なのに複雑な心境を見た気になります。
そんな言葉を受けて、襟戸も自分の考えを口にするのですが

襟戸「俺、すっげぇ田舎で育ったからさ、帝都みたいな都会は
   霊とかお祓いとか、そういうのとは無縁だと思ってたんだよ。
   たしかに、科学はビックリするほど発達するけど
   その裏は魔物だらけ。なんつーのかな…
   大都会の光と闇って言うのかな」

なぜ、その台詞を下手から椅子を五つ、渡りながら言った!?(笑)
ギャグなのか、単純に椅子のクッションを確認してるのか、迷う所なのですが…
暮の「大都会の、光と闇…でありますか?」の聞き返しに頷いた襟戸に黙って話を聞いていた加集が意外さを隠さず顔に出します。

加集「襟戸くん、そんな見た目でそんな真面目な事考えてたの」
襟戸「(思わず立ちあがって)いや、そんな見た目ってなんだよ!」
暮「臭いくせに〜」
襟戸「いや、それ関係ないだろ!
   とにかく、俺が言いたいのはだな…」
二人「言いたいのは?」
襟戸「今度新しく入ってくる子は、俺達にとっての光になるんじゃねぇかってことだ!」
二人「は?」

イキナリ話が飛んだぞ?と意味が分からない二人に、襟戸は言葉にさらに力をこめます。

襟戸「いや、だってよ。奏組は、右を見ても、左を見ても、むっさくるしい男だらけ。
   演奏中も、任務中も男だらけ。
   もちろん(一歩前に出て)寮に帰っても男だらけ。
   つまり…年頃の俺達にとっては、今の生活は闇も同然!」

熱が入った物言いに、何が言いたいかを察した加集がはっと笑顔になって襟戸との距離を詰めます。

加集「そうか…奏組に入るってことは、その子も同じかなで寮に入るってことだよね!たぶん!!」
襟戸「そう!!」
暮「そんな嬉し恥ずかし破廉恥な!」
加集「いや、そうなんだけどさって…」
二人「鼻血ーー!!」

日に日に暮の鼻血の吹き方が大きくなっていくのが面白かったです(笑)
おい、大丈夫か?と慌てて首筋を叩いて暮の鼻血を止めようとする襟戸と加集。
大騒ぎする三人ですが、下手から静かにサックスとケースを持った楽団服のヒューゴが登場すると、はっとなってすぐに静まる。

加集「あ…ヒューゴ、おはよう」
ヒューゴ「…おはよう」

それを一瞥し、短く挨拶だけかわすとヒューゴは自分の席にケースを置く。
暮が「ヒューゴさん、おはようであります」と声をかける後ろで加集と襟戸はびっくりしたぁと互いにヒューゴが入ってきたことで変わった空気に息を整えるのですが、逆にそれをさらに破るように上手上段からバリトンサックスを持ち、上着のポケットからチェーンがつながった懐中時計の針が示す時間を確認しながら楽団服姿のジオが現れ、階段を降りてきます。

ジオ「うむ。練習開始ぴったり三十分前…(パチン、と懐中時計の蓋を閉じ)完璧だ」
襟戸「おはよう、ジオ」
ジオ「おはよう」

おお、こちらは爽やかですね。
この間に、ヒューゴは暮や自分の席からも離れ、上手の階段傍で背を向けて黙々と練習準備をしているようでした。
続いて、上段上手からやや気だるそうにフリューゲルホルンとケースを持って階段を降りてくる楽団服姿の源三郎に暮が声をかけます。

暮「源三郎くん、おはようであります」
源三郎「おはよ」

下段に揃ったメンバーそれぞれに朝の挨拶を交わす面々ですが、一人だけ上手上段から猛ダッシュで駆け込んでくる人物が。

源二「よっしゃあ間に合ったーー!」
襟戸「あれ?源二珍しいな。お前がこんな早く来るなんて」
源二「え?」

襟戸の驚きを隠さない声に暮や加集も「ホント、珍しいな」と話す。
肩で息をしていた源二ですが、ヒューゴが席についていなかったり、ジオが自分の椅子(下手から数えて4つ目)の脚貫に左足をかけてバリトンサックスの確認をしていたりする様子を見て目を瞬かせます。

源二「あれ?全然集まってねーじゃねーか」
源三郎「(上手から二番目の自分の席に座って楽器を青いクロスで拭きながら)まぁ、まだ三十分前だし」
源二「はぁ!?お前さっき遅刻寸前って言っただろ!」
源三郎「ああ、あれ嘘。
    だってそうでもしないと兄さんいつまでたっても朝ご飯おかわりしてるからさ」
源二「んにゃろ…(階段を駆け下りて源三郎の隣へ)騙したな!」
源三郎「(立ちあがって見下ろしながら)うるさいなぁ早く来る分にはいいじゃない」
源二「そういう問題じゃねぇ!いつも言ってるだろ!
   嘘はつくな!男は正直に真っ直ぐ生きろって!!」
源三郎「(うっとおしそうに左耳をふさぎながら下手へ遠ざかる)あーヤダヤダ暑苦しい」
源二「なんだとぉ!?」

源三郎が足早に下手に逃げて行くのを、勢いづいて追いかける源二。
二人の喧嘩はいつもの事、ということで周りは止める気配無く、目の前を源三郎が通過してるにも関わらず席に着いたジオに加集が話しかけます。

加集「なぁ、ジオ見た?寮の掲示板に貼ってあった辞令」
ジオ「掲示板?いや、見ていないが…」
襟戸「(近くに来た兄弟に向って)お前たちは知ってっか?」
源三郎「え、なに?」
襟戸「今度来る奴のこと」
源三郎「知らないし、興味無い」
源二「なになに、何の話だ?」
加集「今度奏組に、新しいヤツが来るんだって!おとこっていう、女でさ!」

素っ気なく言い捨てて自分の席に戻る源三郎ですが、源二は思いっきり話題に食いついてきたので、加集が興奮した様子で話題の人物の情報を叫ぶのですが、その情報にジオや源二だけでなく自席に座りフリューゲルホルンをせわしなくクロスで拭いていた源三郎や背を向けたままだったヒューゴも目線をやります。

源二「おとこで、おんな?全然意味わかんねぇんだけど」
ルイス「おとこ、ではなく、ねこですよ」

全員の気持ちをストレートに代弁した源二に
三人組がそれぞれ「いや…」と説明しようとするより早く、上手上段から楽団服姿のルイスがトロンボーンを手に現れ簡潔に間違いを指摘します。

加集「よお、ルイス!」
源二「ねこ?ねこって、にゃー(前に出て招き猫のマネ)のねこか?」
ルイス「お名前です。音に子と書いて音子(ねこ)さん。十六歳の女の子らしいですよ」

上手の階段を降りながらのルイスのより詳しい情報にざっと集まって盛り上がるストリングス隊。

暮「十六歳でありますかぁ」
加集「かわうぃーーかな?!」

盛りあがる加集たちに源二も加わろうとするものの、立ちあがった源三郎の不機嫌声にそっちへ顔を向けます。
ちなみに、ジオはずっと座って話を見守り、ヒューゴは聞きつつも、静かに自席へ移動。

源三郎「意味わかんない。なんで男だけのチームに女入れるわけ?
    まったく、何考えてるんだか。絶対なんの役にも立たないよそいつ」
ルイス「源三郎くん。気に入らないからっていじめちゃダメですよ」
源三郎「はぁ?僕そんなに子供じゃないし」(ちょっと唇をとがらせながら座る)
ルイス「なら良いのですが。ね、ヒューゴ?」

突然名前を呼ばれたヒューゴが目線だけ向けると、穏やかに頬笑みを浮かべているルイスと目が合う。
穏やかだけれども、きちんとそれぞれに釘を刺してる感がさすがだなと。
源三郎が座ると、隣の席である源二も自席に座り弟の肩をつついて冷やかしていました。

5日
着席した源三郎と源二の肩のつつき合いがドンドン高速になっていくの面白かった

7日、8日
こども!と源三郎の肩をつつく源二。もちろんつつき返す源三郎

10日夜
いじめんなよ!いじめないよ!とつつき合いというより、今日はお互いの肩をずっと指で押していた


兄弟の小競り合いが続く中、全員がそれぞれの席の前に揃ったところで下手上段から楽団服に身を包んだシベリウス総楽団長が静かにやってきて全員にその場から声をかけると、一斉に立ち上がる奏組。

シベリウス「おはよう諸君。
      練習を始める前に、奏組に新しいメンバーが加わることとなった事について説明する。
      加入者の名前は、雅音子。
      いずれは彼女がこの奏組の指揮を務める事となる。心しておくように」

シベリウスの話が一段落したところで、ストリングス隊の三人はすぐに集まってひそひそ話
加集が「指揮者だって!」と言うと襟戸がさらに「それじゃあ、俺達の隊長ってことか!?」と驚き暮も頷く。
そんな浮足立つストリングス隊の横で、ヒューゴは今の説明に戸惑いを滲ませつつもそれを声には出さずゆっくりと座る。
でも、誰もそのヒューゴには触れず、下手から上手へと歩くシベリウスに向い源二が挙手をして質問を投げかけます。

源二「なぁ、総楽団長。なんで奏組に女が入ってくるんだ?」
源三郎「そうだよ。絶対おかしなことになるよ」
シベリウス「お前たちは、プレリュードの意味を理解しているか?」
源二「え?」

唐突とも思えるシベリウスの発言に、ジオが一歩前に出て説明を。

ジオ「プレリュードとは、前奏曲。序曲。
   転じて物事の始まりという意味でもつかわれる」
シベリウス「花組を出撃させず、降魔たちを退治するのが、我ら奏組のプレリュード。
      それを奏でるには、指揮者が必要なのだ」

上手階段を降りてそうさらに説明するシベリウスですが、それでもピンとこない面々が多い様子

源三郎「指揮者?そんなの必要?」
源二「指揮者なんかいなくても、俺達バッチリやれてるぜ」
シベリウス「今朝の出動で、降魔を一匹逃がしたと報告を受けたが」

周りを見渡し、源三郎の肩に手を置いて笑う源二に珍しく同意の視線でシベリウスを見返す源三郎ですが
ぴしゃりと痛いところをつかれ、同じ動きで俯いて着席する兄弟。
ヒューゴは左手を膝の上で白くなるほど強く握りしめて、悔しそうに目を伏せる。
他の面々も、弁明できない事実に言葉を無くす。

シベリウス「帝都のような大都市には人が集まる。
      人が集まる所には、夢や希望が生まれる。
      だが、同時に悪徳も栄える。
      魔物である降魔は人の悪徳を餌として肥大化するのだ。
      帝國華撃団花組は、霊的能力を持って鋼鉄の人型蒸気を操り降魔を倒す。
      だが、小さき降魔に花組を出撃させるまでもない。
      それは、奏組の役割だ。
      我々奏組は、花組と同じように帝都の市民を守る義務があるのだ。
      事が大きくなる前に、プレリュードのうちに陰滅せよ!」

総楽団長の号令に、座っていた面々(ジオとルイス以外)もザッと立ちあがり、右拳を胸の前に当てる。

全員「シー・マエストロ!!」
シベリウス「話は以上だ。
      では、集まったようなので稽古を始める。
      「愛ゆえに」一幕第一場から」

シベリウスがゆっくりと舞台中央にある指揮台の上に立ち、懐から指揮棒を取り出す。
全員を見渡し、指揮棒を振り、ストリングス隊が動き出すとともに暗転。
流れてくる曲は、もちろん「愛ゆえに」
そのまま愛ゆえにのメロディーが流れる中、舞台に照明が入ると下手の階段に腰掛け、じっと一点を見つめ険しい顔をしているヒューゴと反対側、下手の階段前にはトロンボーンを手にしたルイスが。

ルイス「今日は珍しく演奏が不安定でしたね。
    …そんなに気に入らないのですか?雅音子さんの加入が」
ヒューゴ「(ルイスに視線を向け、そらす)……納得がいかないだけだ」
ルイス「それは、女性だからですか?
    大帝國劇場で舞台伴奏を務めるオーケストラ
    帝國歌劇団・奏組。
    そこに一人楽団員が増えるだけなら、何も心配はないでしょう。
    気になるとすれば、指揮の実力くらいでしょうか。
    …(すっと表情を引き締めて)しかし、我々にはもう一つの顔がある。
    魔障隠滅部隊・奏組。
    楽団の指揮を務めるという事はつまり、戦闘部隊の隊長になるということでもありますからね」
ヒューゴ「(立ちあがり、階段を降りる)…俺は……」
ルイス「あなたの心の内がどうであれ、いずれ受け入れなければならないことです。
    ですが、まずはともかく目の前の敵、逃げられた一匹の降魔を見つけ出しましょう」

最後にまた一つ微笑みを残して、上手へと去るルイス。
残されたヒューゴは、苦しげに眉根を寄せ、右手を肌身離さずつけているペンダントに服の上から触れるよう胸の前にもっていくと同時に、舞台の照明が藍色から赤い戦火に変わり、銃声や人型蒸気の機械音が響く。
それにかぶさるように「逃げなさいヒューゴ」と母の声「生きて、ヒューゴ」と願う姉の声
最後に母の「あなたは私が守るから!」の叫びと共に銃声が…

幼いヒューゴの「母さん!姉さん!!」の悲痛な声に合わせて、舞台のヒューゴの目が見開かられ、叫び出しそうになる、あふれだそうとする感情を押えるように目を伏せ、切ないメロディーが流れだす。

ヒューゴ「♪悲しみがほんの少しだけ 瞳に映ってる
      悲しみがほんの少しだけ」

♪悲しみのロンド

おお、やはり最初のソロはヒューゴからきましたか…!!すごく正統派な綺麗な曲です。
以下、歌詞の書き出しになります。

「大切なことは全て悲しみが 教えてくれた
 自分を強く持って深く人と 関わらないように

 理解できない けれどただ君を見つけることは できるだろう

 俺は守れるか いつもこの腕に寄り添う君を
 俺は守れるか」

「いつもこの腕に寄り添う君を」で大きく横に伸ばした右手を「俺は守れるか」で前に持って行くのですが伸ばした手の指先が震えて、けれどそれをぐっとこらえるように拳を握って切なげに前を見つめたところで間奏に入り、同時に舞台上段上手から白いふわっとしたノースリーブのロングドレスに身を包んだ女性が現れバレエの動きで優雅に踊る。

踊っているのは秋奈役の方なのですが、さすが元宝塚花組さん。指先、足先、表情…全てがやわらかく女性的で綺麗。
ヒューゴ自身は間奏の間に下手から上手へ。

「君の魅力も 君の愛情も 君の夢も
 だけど俺は 君を簡単には 信じたりできない

 裏切られること 俺はまだ受けいれられなくて 探してる」

笑顔で踊っていた女性ですが「裏切られること」のパートでのみ、外からの攻撃を受けたのか戸惑うように表情を崩し、身を守るように肩を抱くのですが、一瞬目を閉じた後は再び笑顔で踊りだす。

「俺は守れるか 希望にあふれる君の瞳を
 俺は守れるか

 花は 無言で そっと強く咲いてる
 悲しみに揺れながら 強く咲いている

 君の魅力も 君の愛情も 君の夢も
 それを信じるために そして君を守るために
 俺はただ強くありたい」

「花は無言で」の部分から女性、ヒューゴ共にそれぞれの段で舞台中央に立ち一気に歌いあげる。
けれど、この二人一度も目が合わない。見つめ合わない。
「俺はただ強くありたい」で両手をいっぱいに広げて歌い上げるヒューゴの熱い声が響く。
が、歌いあげたと同時に曲と合わせて上段の女性がバックライトのフラッシュで一瞬強く照らされすぎて完全シルエット状態になった後に照明がダークトーンへと戻る(同時に、女性は舞台奥へとはける)
そこで、ようやくヒューゴが上段を見るのですが、もちろんそこには誰もいない…

「悲しみがほんの少しだけ 瞳に映ってる
 悲しみがほんの少しだけ」

最後はまた切なく歌い上げ、そのまま上手へと顔を伏せて去っていくヒューゴ。
拍手と共に暗転。

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