[サクラ大戦BBS]

MAKING APPEND NOTE
夢織時代@6日未明追記 への返事
SS「桜が咲いているから四月だと誰が言った?」



『それにしても今年の桜は早いですねえ』
 その桜と同じ名前を冠する女優の声がラジオから聞こえる。
『えーそうですね。元々、蒸気の導入とともに帝都の桜は年々早くなっていると言われているんですよ。
 これは、石炭の燃焼によって帝都全体で消費される熱量が増え、その熱量が帝都上空に蓄積される蒸気由来の水蒸気層で保持されることで、帝都全体が冬でも暖かくなっており、春の気温の上昇も早くなっているためである……というのが帝大の偉い先生が仰ることなんだそうで』
『そうなんですか。私も仙台から出てきたとき、三月なのに帝都はもう桜がこんなに咲いているのかって驚いちゃいました』
『おや、さくらさんはいつ仙台から上京されたんですか?』
『デビューした年ですよ。太正十二年です。出てきたのは三月の二十何日だったかなあ……』
『ああ……。忘れもしません、あの年のことは。あの年がこれまでで一番桜の開花が早かった年ですよ。三月の半ばにはもう満開近かったのに、四月の十日くらいまで桜が保ったんでした。私が有楽町帝撃通信局の開局記念番組で名前を呼ばれたときには……』
そう、早いと言っても限度がある。
 どう早くても桜の開花は三月というのが江戸っ子たちの常識だった。
『で、今年はその記録を一ヶ月以上更新してしまったわけですね。これはもう異常気象と呼ぶしかありません』
 そう、異常と呼ぶしかない。
 理由は、分かっている者には分かりすぎるくらいに分かる。
「……都市エネルギー」
 帝国華撃団奏組隊員ヒューゴ・ジュリアードは、その言葉を無力とともに噛み締める。
 八鬼門封魔陣の開放により膨大な都市エネルギーが開放されたことで、正負両面において生物の動きが活性化しているのだ。
 桜は、特に魔の気配を吸いやすい。
 それが魔精卵を生む現状の問題点に繋がっている。
「俺たちで、何とかする……」
 彼……いや彼ら奏組が圧倒的な無力感に苛まれてから一ヶ月ほど経過していた。
 蒸気機械の力を得て、都市エネルギーを呼吸して活動する降魔兵器が帝撃に迫ったとき、彼ら奏組は月組とともに帝撃防衛戦に参加したのだ。
 だが、夢組に次ぐことを米田司令に期待されていた自分たちは、結局その期待に応えることはできなかった。
 月組の甍翔太、夢組の星野道香の両名が、八鬼門封魔陣で得た力を振るわなければ、新ミカサの発進を待たずに帝撃は攻め落とされていただろう。
 もうあんな無力感は嫌だった。
 米田司令は奏組の戦力を向上させるために、新たな手を打たれたと聞く。
 それはおそらく、かの大神一郎が間もなく巴里に留学するという噂と無関係ではないだろう。
 花組最大の要を抜く一方で、夢組、月組、奏組といった面々を強化することで、花組一本槍での帝都防衛構想をより広範なものにしようとお考えなのだ。
 まだ、米田司令は自分たちにご期待下さっている。
 どんな秘密兵器が来るものか。
 まだ見ぬ秘密兵器に頼る前に、自分たちこそが力になりたかったのだ。


 そんな、太正十五年二月。

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仕事ほっぽりだしてショートSS書くなんて何年ぶりでしょう。
こんばんは、とりなべさん。夢織時代です。
ええ、こんなもの見せつけられてこっちが燃えないわけにはいかないでしょう!
とりあえずモギリ君の「かすみくん」言動から弥介隊長説はちょっと難しいと判断しなおして第2の変化球です。

また思いついたら追記しますね。

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6日未明追記

クロニクルやかつて作った資料をひっくり返してみると、
大神のパリ到着って太正15年の5月なんですよね。
大神は船ルートで巴里へ行ったはずなので所要期間は一月ちょっとと考えられますが、
そうすると、実はぎりぎり太正15年の4月までは帝都にいたことになります。
2の第13話を一度しか見ていないので13話の見送りシーンの季節感がどうだったか覚えていないのですが、おそらく大神の出立自体は4月でいいのではないでしょうか。
となると実は上の無茶SS設定に関わらず、今回の奏組の設定は不可能ではないということになります。

大神の見送りのために、大神が見た最初の公演である愛ゆえにを再演する……という花組メンバーの意識を推測してみたり。


まだ続きますが一旦寝ます<仕事はどーした

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